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「3000本」を超えて

ネクストバッター・サークルに立つイチローをみればわかる。

いつも動いている。

数回ウォームアップのスイングをしたかと思うと、膝を曲げて体を低く折り曲げ、
左右に揺れ動いている。

また、立ち上がって3度スイングした後、足を大きく広げ、
再び低く構える。そして両肩を大きく回転させる奇妙な動きをする

このルーティン全てが1つのダンス動作であるかのように。

イチローは常時ストレッチをしている。
試合前、試合後、オフの日

ネクストバッターズ・サークルでも、そして塁にいる時も、いつもである。

試合当日、早めに球場に着くと、すでにクラブハウスにはイチローの姿がある。

何らかの姿勢をとって、ストレッチをしている。


私は、実際に会う前からイチローの事を知っていた。

2001年、まだ彼がルーキだった年。

ポジション選手が日本からやってきたと聞いていた。

当時はかなり珍しい事だった。

私の現役中にも、日本から偉大なプレーヤーが来ていたが、みなピッチャーだった。

ある日の試合で、イチローは平凡なショートゴロを打ってきた。

右に一歩動くだけで楽に取れるボールだった。

ところが視線を上げると、イチローはすでにファースト近くまで走っていて、
もう少しでセーフになるところだった。






「Wow! Who is this guy? He can fly.うわっ、何じゃこいつ。飛べるのか。」

と感じたのを覚えている。

あの時は、本当に驚いた。

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初めてイチローと個人的にあったのは、セカンドベース上だった。

最初のうちは丁寧な感じで、あまり話もしなかったが、英語が苦手せいだろうと思っていた。
しかし、1年ほどたった頃、イチローがセカンドにスライディングしてきた

私が、挨拶すると、ユニフォームの土を払いながら、彼がはなしかけてきたのだが、その言葉に
意表をつかれた

>「What’s going on, my main man?」(和訳するのが難しい英語だが、親しい友人同士の挨拶で、
ニュアンスからすると、「おーっす、どうだ、調子は。」という感じ。

Main man?」驚いた私はただ笑顔で返した。


こいつ、どこでこんな言い回しを習ったんだ?

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その後何年間もの間、私はイチローとセカンドであう機会が増えた。

イチローはいつもフレンドリーだったが、彼の英語が上達するにつれて、我々の交わす会話も長くなっていった。

しばらくすると、カタコトではなく、完全な文として話すようになった。


チームメイト達から教わったであろう、英語の言い回しを披露してイチローはいつも私を笑わせてくれた

イチローの話だと、マイク・キャメロン選手に多くの事を教えて貰ったらしい


例えば、

「What’s up, my brother from another mother?(どうしてる、母親違いの我が兄弟よ。)」

とかいうフレーズも 、マイクが教えてくれたといっていた。

イチローが新しい国人、そして新しいチームに慣れていくのが、私にはよくわかった。

シアトルという町は、本当にイチローを優しく受け入れた町であり、マリナーズの選手達の間にもいい雰囲気があったからこそ、いいチームで入れたのだろう。

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イチローの英語力が猛烈な速さで上達したことには驚かなかった。

言語に対するイチローの姿勢は、野球に対する彼の姿勢と同じで、

「努力、さらに努力、そして努力」というものだったから。

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<イッチ、有能>

今、イチローが3000本ヒットを打つのを多くの人々が期待してみている

達成すればイチローは野球史において極めて限られたクラブの一員になる

非常に驚くべき偉業である。

26歳までプレーした日本でも1278本のヒットを打っているので、
イチローのキャリアを合わせてみると、現在・過去の時代を通じて最も優秀な選手の一人になる

しかし、今3000本安打というマイルストーンを超えて少し考えてみたい。


イチローが全ての面いおいてどれだけ偉大なるプレーヤーであるか、

多くの人は注目していない、ツールを全て整えているのである。


まず、走塁、あの速度、野球で類をみない速さである。

プロとして25年間、スピードを第一の武器として使ってきた選手である。

そして、肩、信じられないアームを持っている。
打撃が明らかに偉大で守備はあまり評価されない事があるが、ライトからランナーを刺すイチローをみた事がある人なら誰でもわかるはずである。

やはりあのストレッチが効いているのだろうか。

打席に立つイチローの目とての整合作用(運動神経)そしてバットのスイングは最も純粋である。
イチローの事をよく、コンタクト打者(ボールにうまくバットをあてる打者)という人がいる。

ある意味、これも間違っていない。打者としての使命は出塁する事。

そしてイチローは他のだれよりも多く出塁した。

しかし、イチローの事をコンタクト打者と捉えるだけでは、その真の偉大さ、特別さをとらえていないと私は思う。

我々の多くは、イチローが単打、二塁打を打つのをみてきたが、

実はかなりのパワーの持ち主である事はあまり知られていない。


>>2001年、シアトルでオールスター戦が行われた際に、私はマリナーズの選手たちと立ち話をしていた。

すると、「イチローがホームラン・ダービーに出るべきだ」と彼らが言い出した。

私は冗談だと思っていた。

すると、誰かが「いや、出ればイチローは勝つ」

その後少しして、私にもその意味がわかった。

イチローが自分だけのホームラン練習を始めて、それをみんなで眺めていたのだ。

そして、イチローを尊敬する最大の要因は、何と言っても、その模範的な一貫性であろう。

周りが最も見落としやすい人格は一貫性である。と私は考えている。

イチローにとって野球というのは、ただのスポーツではない、と私には思える。

This was what he was born to do.

いや、イチローという人間はそのために生まれて来たのである。

さらに驚くべき事は、もう42際になるというのに、イチローが故障者リストに入った事を私は思い出せない。

常に自己を丁寧に管理している。

野球というものが

「いつまでも完璧に至る事のない技巧」

であるかのように見ているのだろう。

イチローは野球からの「オフ・タイム」という言葉の意味を知らないのだと思う。


彼にとっては、野球は人生そのものなのだ。

そして、それは、たとえ誰も見ていない時であっても努力する事から始まるのである。

2013年のオールスターの休みの際に、イチローがヤンキーススタジアムに練習にいった際の話がある。

しかし、その日はコンサートが予定されていて、準備の為、球場が使えなかった。

それを知ったイチローはセントラルパークにキャッチボールをしに行ったというのである。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

2014年10月、とうとう私は現役を引退した。

その数日後、ロッカーを整頓する為に、ヤンキーススタジアムに戻った。

スタッフはまだ数人残っていたが、スタジアムは静かだった。

チームはプレーオフに進めなかった。

選手の多くはシーズンが終わるや否や休暇を取り、12月か1月までリラックスする。

私がロッカーを整頓していると、イチローの姿が見えた。

バッティングケージに向かっている所だった。

「あいつ、2、3日は休んだんだろうか、、」と思った事を今でも覚えている。

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イチローは流暢な英語が話せた。

それに伴い、二人で話す機会もかなり多くなっていた。


<マイ・ハッツ・オフ>


その中でも忘れられないのが、2012年のアリーグ決勝シリーズの第1戦である。

そう、私が足首を骨折したあの試合である。

12回、ゴロを取り行った時、足首に「ポキッ」という音がした。

試合は、降板する事になり、レントゲンとアイスのあるクラブハウスに退いた
タイガースが12回に2点を入れ、ヤンキースは6ー4で敗北

試合後、私は着替えをして自分の考えを整理するため、クラブハウスの隣のある小部屋に入った。

すると、イチローがつうやくを 連れて入ってきて、私の横に座った。

イチローは私の足首の様子を聞いてきた。


私は「骨折してる、もう終わりだ」と答えた。


イチローは頷いたが無言だった。

足首を冷やし終えた私は、ボーッとしていた。


どうせ急ぐ必要はない。試合には負け、次のシーズンまでプレーする事も出来ない。

しばらくすると、クラブハウスは空っぽになった。

イチロー、通訳、そして私だけがその小さな部屋に座っていた。

イチローはまだユニフォームのままだった。

私は持ち物をまとめて、帰るために、松葉杖をついて立ちあがった。

その時、私はやっと気づいた。

「イチローは私を待ってくれていたのだと」

私が立ち上がると、イチローも立ち上がって、私が帰るのを見守ってくれた。

あれが私に対する、イチローなりの敬意の表現なのかどうか、私にはわからない。

あの夜、イチローもただゆっくりしていただだけなのかもしれない。

しかし、あの日、イチローが、私に言わんとしていた事を私はちゃんと知っている。

長い間、何度も交わしたセカンドベースのでの会話、

その後チームメイトとして、過ごした年月

その様な事を考えると、

あの夜の、

二人の間の沈黙、

あの時間こそ、

私にとって何よりも心に残っている。


アスリートとして、また人間として、私がイチローを思い返す時、

何よりもあの夜の事を私は思い浮かべるのである。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

私はイチローに敬意を表する。

人生で一度会えるかどうかという人間である。

イチローのような人間は見た事がない。

「近々、オフタイムをぞん部に楽しんでくれ」

とイチローに言いたい自分がいる事は確かだが、

彼はそんな言葉を聞きたがらないだろう。

オフタイムがどのようなものであるか、イチローには想像出来ないのかもしれない。


デレク・ジーター















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