優柔不断の男

テーマ:

男は家から出て、駐車場に向かい、仕事用に使う軽トラックに乗り込み、運転席に座ってから首をかしげた。


「うーん…やっぱ違うよな…」


男は思い直して軽トラックから降りて、普段使う自家用車に乗り込み、運転席でまたうなって首をかしげた。


「やっぱ、もっと軽めでいいか…」


男は思い直して自家用車から降りて、今度は家に置いてあったママチャリを引っ張り出してきて乗った。


「まあ、近いし別にたくさんはないからいいか…」


男は思い直してママチャリから降りた。


ふと横を見ると三輪車がある。


「あれじゃあ乗れないよな…」


しかしとりあえずまたがってこいでみた。


うまくこげない。


男は三輪車から降り、ため息をつき空を見上げた。


「買うの豚肉だけだからな」


男の目と鼻の先にはスーパーの看板がある。





どうしよう 人気ブログランキングへ

AD

ペット

テーマ:

「今日はユカちゃんをおいしいおすし屋さんに連れて行ってあげるよ」
ケンゴの言葉に喜ぶユカ。
「ねえ、今日はケンゴに大事にしているペットも見せてあげたいの。一緒に連れて行っていい?」
「え?ユカちゃんペットなんて飼ってたっけ?」
「うん。いいよね?」
屈託のないユカの笑顔に嬉しくなるケンゴは二つ返事で承諾した。


銀座のとあるすし店で犬らしききぐるみを着た男がすしを食っている。
「おやじのところのマグロはうまいね。これ朝一だね。最高だよ」
「ありがとうございます」
ユカの隣に座るきぐるみ男。マグロ、中トロ、トロを立て続けに五貫ずつも食べている。
「あ、ペットってそれ?」
ケンゴが思わず聞く。ケンゴの額からは脂汗が止まらない。
「何よ。それってひどいわよ。ちゃんとマーシーって名前があるの!」
ユカの反論にすし屋の大将が言う。
「あの、うちペットの入店お断りなんですけど」
ユカは目頭を立てて怒る。
「あんたねえ!見りゃわかるでしょ!黙ってなさい!」
「すいません」
気が強そうなのにすぐに黙り込む大将。高倉健に憧れている。
犬はトロをぺろりとたいらげると、今度は
「大将!エンガワとウニとイクラとクロダイとタチウオ。タチウオあぶったのと生とで全部それぞれふたつずつね」
ケンゴは焦った。食いすぎだ。この大食いの馬鹿め。人の金だと思って。ユカちゃんとのアバンチュールがめちゃくちゃになる。
「あ、そこの犬!食いすぎだろ!」
思わず突っ込むとユカが割ってはいる。
「マーシーくんになんてこと言うの!マーシーくんは私の癒しなのに…」
ユカが泣きそうになる。男は女の涙に弱い。
「ごめんよユカちゃん。そんなつもりじゃなかったんだ」
「じゃあどういうつもりなの!ペットをいじめるケンゴくんなんて嫌い!」
ユカは立ち上がり大将に言った。
「今頼んだやつ寿司折にして。あと中トロとトラフグ、アワビ、アカガイ、シャコとアナゴ二貫ずつね」
ケンゴはあわてて抗議する。
「ちょっと!そんなに食べるのかよ!」
ユカは無言で涙をぬぐった。
もうケンゴはそれ以上何も言えない。
「お待ちどうさまでした」
大将が寿司折を渡すとユカと犬は出て行った。
「ちょ、ユカ…ちゃん…」
ケンゴは「帰る」と力なく言った。
「十二万円になります」
大将に言われて噴出しそうになった。
そりゃあ、あれだけ食べればかかるわ。
「ありがとう、ございますっ!」
大将はケンゴが出る際に深々と頭を下げた。
大将は高倉健に憧れている。
ケンゴが外に出ると、出入り口のすぐ横の壁に先ほどの犬が寄りかかり、きぐるみのままタバコを吸っていた。
犬はケンゴの出てきたのを見るとタバコを足で踏み消し、ケンゴの肩をポンポンと叩いた。
そして犬は言った。
「まあ、そんなしょっぱい人生の一コマもあるって」
がっくりと肩を落とすケンゴに犬は哀愁漂う背中を見せながら去っていった。
「待て」
ケンゴは気がついた。
「元はと言えばお前のせいじゃー!」
ケンゴの声は銀座界隈にむなしく響いた。
とりあえず、明日ユカちゃんに謝って機嫌を直してもらおう。
惚れた男は、辛い。





謎のペット 人気ブログランキングへ

AD

ありえない再開

テーマ:

公衆便所にて男がトイレのドアを必死に叩く


男「おい開けろ!もれる!頼む!開けてくれ!」


中からは無言


男「くそっ!誰も入ってねぇのかよ!壊しちまうぞ!いいのか!」


無反応のトイレ個室


男「ちくしょう!このやろう!背に腹は変えられねぇんだ!いくぞこら!」


やけになりドアを壊して開けると中には新聞を読んでいるハゲ親父が座っている


ハゲ親父「なっ!なんだキミは!し、し、し、し失礼じゃないか!・・・え?タケシか?」


男「え?生き別れの親父?」




いやっ!それどころじゃねぇんだよ! 人気ブログランキングへ

AD

とある作家の生活

テーマ:


そこで珠美は像に向かって憐憫の情いっぱいに叫んだ。

「お父さん。どうしてお父さんは体毛の多い作品ばかり作るの!」

魂の叫を込めた言葉を吐き出し、珠美は嗚咽し、その場に崩れ落ちた。

体毛ばかりの女性の裸婦像は、珠美に向かって優しく微笑んでいた。



「で、ラストはこんなもんでいかがでしょうか?」

編集者に最後の原稿を渡し終えた三流作家、五反田清は満面の笑みを浮かべていた。

これ以上にない、強烈な最後の余韻に満悦していた五反田は、もう仕事を終えた気分でいた。

女性編集者、鎌田愛美は、静かにその原稿で鶴を織り出した。

「ああ、四角じゃないとやっぱりうまくいかないですね。書き直してください」

心血を注いだ原稿で鶴を折られ、しかも絶対鶴なんてうまくいくはずもないのに失敗宣言をされてひどく五反田は傷ついた。

「もう、書く気力なくなりそうだよ」

すると鎌田は優しく微笑んで鶴を差し出した。

「はい、これ、先生がうまく原稿書けるように願って、今一生懸命折った鶴です。はい、どうぞ」

「あ、どうも・・・(って、こいつ舐めとんかぁ~!!)」

「先生。先生の作品を待っている読者がたくさんいるです。ほら見てください。こんなに千羽鶴が部屋中に」

(それはお前が折ったやつだろ!)

「そんなことよりも、こんなに原稿長引いて締め切り平気なんですか?」

「あ、その点は大丈夫です。私、鶴折るのが好きですから」




見捨てられた?三流 人気ブログランキングへ

オリックスと阪神

テーマ:

オリックス=兵庫県


阪神=大阪府


「今回近畿に隣接するこの二大球団のファンを追い、取材してみました。はたして兵庫と大阪の境あたりに住んでいらっしゃる方はどちらのファンが多いのか!・・・あ、おじいちゃん。あの、すみません」


「あぁ!?なんじゃ!わしゃ~忙しいんじゃ!」


「まあ、そう言わずに。ところでおじいちゃんは野球をご覧になりますか?」


「おお~野球な。大好きじゃぞ~。最近阪神がんばっておるからのぉ」


「ああ、それではおじいちゃんは阪神ファンですか?」


「なにっ!?わしゃ~昔からのカープファンじゃ!!」


物事ははっきりと二分できない 人気ブログランキングへ

全日本宇宙の集い

テーマ:

つどい


「さあ、みなさんで宇宙を感じましょう」


全日本宇宙の集い、北日本支部局長は会員へと呼びかけた。


全員いっせいに天を仰ぎ、宇宙からの力を感じる。


全日本宇宙の集いは、宇宙の力を感じ、呼びかけ、内なる力に目覚めることを目的とする。


代表の神田氏は言う。


「私たちは鎌倉時代末期から続いた由緒ある団体でして、天皇家の血も引いている落ち武者を祖先とする豪族が宇宙からの交信に気付き、イジメカッコワルイとの声を聞いたことから始まりました。私たちは、宇宙の声を聞き、巨乳アイドルを妄想するような邪悪な心を排除し、真に人間として生まれ変わることを目的としています。先日うちの内海が連邦軍のモビルスーツがどうのこうのとかつぶやきまして、ついに私たちの意思も宇宙へと近づきつつあります」


そんな神田氏の大好物はベビースターラーメン。


「スター」のネーミングがたいそうお気に入りだ。


きてますきてます 人気ブログランキングへ

「さあ、ついに九回裏、三対二で1アウト満塁のピンチ。ヒットが出れば逆転サヨナラという大きなピンチを迎えた東海林東高校。ピッチャーは長男の東海林一松くん。キャッチャーの三男東海林三松くんのサインに何度も首を振っております。しかし、甲子園史上初の監督を含める先発メンバー全員が家族というのには驚きましたねぇ」

「そうですね。ピッチャーの一松くんを含め、皆そっくりすぎて彼らの顔が誰だか判別できなくなるのは、本当に大変でしたね。かろうじて背番号でわかる程度です」

「おっと、ピッチャー投げた!バッター振りました!高く高く上がった。これは相当高くあがったぞ!んん!どこまで上がったのでしょうか、なかなか落ちてこない。おっと!外野と内野が集まって二塁の後ろで円陣をくみ出しましたよ。ああ!風車のようにぐるぐると円陣が回りだしました!一体何の意味があるんだ!あ、ようやくボールが落ちてきました。そのボールが円陣の中に入り・・・ん?ええと、取ったのはピッチャーの一松くんですか?ボールの入ったグラブを高々と上げています。これでツーアウトです。ようやく円陣が解散して全員守備位置に散らばります。今のはなんだったんでしょうねぇ」

「すばらしい球児たちのファインプレーですね。あれぞ、秘儀、千手観音球捕殺法です。まるで後光が光りだすかのようでしたね。ありがたやありがたや」

「さあ、ピッチャーの一松くん、ゆるゆるとマウンドに向かっています。その歩調は大変重そうに見えます」

「やはり、疲労も積み重なっているでしょうからね。対するバッターは今大会で一番のホームラン打者ですからね。慎重になるのも・・・」

「あ!ちょっと待ってください!二塁審がアウトのサインを出してますよ?ああ!!隠し球だ!!ボールはピッチャーではなく二塁手が持っていました!これでゲームセットです!東海林東高校優勝!なんという幕切れでしょうか!東海林兄弟が観客席に深々と頭をさげています」

「いやぁ~、やはりきましたね。あれこそ奥の手です。凄いものを見てしまいました」

「見事この大会を投げとおした一松くんにインタビューがはじまります」

「優勝おめでとうございます。見事なピッチング。よく一人で投げきりましたね」

「ええ、みんなでローテーションしてたんで」

「え?」

じゃあアンタは誰? 人気ブログランキングへ

キメ場

テーマ:

中年男1「ひかえい!ひかえい!」


中年男2「ひかえい!ひかえい!」


中年男1「この紋所が目に入らぬか!!」


一同、静まり返り、目を細める。


代官「おい、見えるか?」


商人「すいません。わたくしめもお代官様と同じ近眼でございまして、遠くのものは、ぼやけてよく見えません」


代官「お前ら、見えるか」


手下「すいやせん。うちら全員近眼です」


代官「おい!じじい!!なんだかよくわからねぇが騒がせやがって!野郎ども!いいからやっちまえ!」


時がたち、四月。


代官の仲間「知ってるか、お前、最近水戸光圀が行方不明らしいぞ」


代官「水戸光圀?わしのストッキングをやるから許してくれって言って股引みたいなの脱ぎだしたあいつかな?」


代官の仲間「なんだお前、知ってるのか?」


代官「いいや。知らないな。なんせ近眼だからな」


代官の仲間「それにしてもお前の庭の桜は見事に咲くのぉ・・・」


代官「そりゃあ、たっぷりと栄養はやっているからな・・・(ニヤリ)」


今年の桜は栄養があったぶん綺麗よのぉ 人気ブログランキングへ

リポーター「昨夜、午後10時ごろ、ほえほえ町けろけろ区域にて、若い男女が喧嘩をしているとの近所の通報を受け、近くに住んでいた町長が現場に駆けつけたところ、会社員の小村髭海苔(こむらひげのり)さんが繁田魚子(しげたさかなこ)さんの自宅の庭にある池で、半ケツで浮いているのを発見。半ケツのままうつ伏せで病院へ運ばれるという事件が発生しました。病院に運ばれた小村さんは幸いにも軽症で、僕はエラ呼吸だから死にましぇん!との発言を残し、町内を震撼させているとのことです。加害者の繁田魚子さんは、彼氏である小村さんと、人面魚の三谷さんとの愛の争奪戦となり、池へ小村さんを落としたようです。繁田さんの取調べの話によると、ついかっとなってやってしまいました。まさかお尻だけで浮けるなんて考えてもいなかった。見つからないと思って、安心して晩の塩焼きそばを食べた、と供述している模様です」


リポーター「現場の様子や最近の二人の様子はどうでしたか?」


町長「いやぁ~、そりゃ~よ~、さんまにはマヨネーズだべ。意外とな、唐辛子かけてマヨネーズで食うとうめぇんだこれが。そういやぁ、でっけぇ桃だったなぁ」


リポーター「二人はどういう人でしたか」


近所のおばちゃん「いえね、大人しそうな人でしたよ。よく二人とも見かけるんですけどね、極上の本マグロを片手に振り回しながらバイクで走っているようなそれはもう仲のよい二人ですよ。それで、これなに?晩御飯のリポート?」



キャスター「痛ましい事件が起こってしまいました。どうしてこんな事件が起こってしまうんでしょうね。コメンテーターの鷲尾さん」


鷲尾「まさにこの事件こそ現在の社会心理を反映してるんじゃないかと僕は思うんです。この加害者は有名資産家の令嬢だということで、贅の限りをつくしている生活だったそうですよ。つまり計画的殺人に見せかけた衝動的犯行だったということなんでしょうね」


キャスター「なるほど。はたしてそうでしょうかね。疑問が残る事件です」


次のニュース 人気ブログランキングへ