昔々あるところに、それはそれはお金持ちのおじいさんと真面目で平凡なおじいさんががおりました。

お金持ちのおじいさんは何でもお金で解決します。

身の回りの世話をお金を払ってしてもらったり、気に入ったものがあるとお金を積んで、

「それをわしに譲れ」

と言い、相手がうんと言わないうちに、お金を渡して人の物をぶんどることをしていました。

一方真面目なおじいさんはとても貧乏でしたが人に親切にしていました。

困った人がいれば自分の仕事を放り出してでも困った人のことを手伝いました。

それはそれは周囲に感謝されてありがとうと言われていました。

真面目なおじいさんは人からありがとうといわれるのが大好きでした。

真面目なおじいさんが山道を歩いていたら、どこかのおばあさんがうずくまっていました。

どうしたのかと思いおじいさんが声をかけるとおばあさんはいいました。

「どうやら足をくじいてしまって一歩も歩けないのです。どうしたものか途方にくれていました」

おじいさんはこのおばあさんを背負って山道を降りようとしましたが、おばあさんはいいました。

「おじいさん。おじいさんの足じゃわたしを背負って山道を降りるのは無理じゃ。どうかわたしを放っておいておくれ。おじいさんに迷惑じゃ」

おじいさんはおばあさんのために一生懸命になって、ついに背負って山を降りることができました。

おじいさんは最後の力を振り絞っておばあさんの家へと送り届けました。

家は大変大きな家です。

家の中からはおばあさんの帰りを心配していたとても美人の娘と娘の父のおじいさんが出てきました。

二人はおばあさんがここまで来れたいきさつを聞いておじいさんに大変感謝をしました。

娘の父はいいました。

「どうか何かお礼をさせてください。そうだ。あなたには小判をいっぱいあげましょう。どうかお持ち帰りください」

といいましたが、真面目なおじいさんはいいました。

「いやいや、あなたたちの笑顔が一番の財宝です。ありがとうという感謝の気持ちとその笑顔が、わしにとっての世界で一番大事な宝なんです。ですからそれ以上のものをいただいてしまってはばちがあたります」

そういって、小判を受け取りませんでした。

娘たちはその言葉に大変感動しました。

なんて気持ちのいい老人なのだろう、と。

ある日、お金持ちのおじいさんは美人の娘のことを聞きつけて、大勢の従者を引き連れてやってきました。

そしてお金持ちのおじいさんは娘の父に向かっていいました。

「おいジジイ。お前の娘に山ほどの財宝を積むから今日からこの娘はわしのものだ。女は金で買えるのだ。がははは」

娘の父は驚きましたが、とっさに機転を利かせていいました。

「残念でございます。娘はもうすでに結婚しておりますのでそのお話はご勘弁ください」

お金持ちのおじいさんは驚きました。

「なんだと?そんな話は聞いていない。想定外だ。ちゃんと結婚していないことは調べてあるのだ。結婚しているという証拠を見せろ」

「しばしお待ちください。婿殿に来客を知らせ、来客を迎える準備をしないと」

「そんなことは無用だ。小判百枚やるから早くその証拠を出せ」

「それではこちらへ婿殿を呼び寄せるのでしばしお待ちください」

そういって、表門から使者を出し、美人の娘を裏口から出して、真面目なおじいさんの元へと行かせました。

美人の娘は真面目なおじいさんに事情を話しいいました。

「どうか助けてください。このままでは私は望まない結婚をしてしまいます。どうか私の婿様になってください」

「しかし、年がつりあわぬ」

「いいえ。わたしは自分の意志でここへ来たのです。たとえ短い時間であろうと、あなた様のようなすがすがしい方と一緒にいれることはわたしの幸せでございます」

そこまで言われては真面目なおじいさんも断れません。

美人の娘と結婚することになりました。

お金持ちのおじいさんは信じられない二人の夫婦を目の前にして大変怒って、娘の父の家を買い占めてしまい、娘の家族を力づくで追い出してしまいました。

娘の家族は大変困りました。

「どうか返してください。あなたが払った小判に少し足したくらいで私が買い取ります。私たちには先祖代々伝わったこの家と土地が大変大事なものなんです。どうか」

そう言われ、お金持ちのおじいさんはいいました。

「二倍のお金で買い取るなら返してやろう」

娘の父はしぶしぶお金持ちのおじいさんに小判を払いました。

お金持ちのおじいさんは嬉しそうな顔で引き上げていきました。

それからというもの真面目なおじいさんは悩んでいました。

「わしはこの先すぐに寿命で死んでしまう。そうしたらこの娘を一人ぼっちにしてしまうではないか。どうしたらよいのか。すぐに別れて新しい婿殿を探した方がよいのではないか」

そう考えていたある日、真面目なおじいさんは娘の父から若返りの伝説の話を聞きました。

それは次の満月の夜の日、山奥の小さな泉に月の雫が落ちて短い時間の間黄金色に輝くという。

その黄金色に輝いている間に泉の水を飲むと、たちまち若返るというのです。

しかしどこにその泉があるのかまでは誰も知りませんでした。

その話をお金持ちのおじいさんの密偵に聞かれていました。

密偵はお金持ちのおじいさんに若返りの伝説を伝えました。

「月から雫が落ちるのならば、月には若返りの泉の源泉があるに違いない。それをうすめて高値で売れば、売れるし、わしも若返る。これからは宇宙事業だ」

といって、自分が持っていた土地をたくさん売りました。

お金持ちのおじいさんはそのお金をもとにたくさんの花火師を雇い、宇宙船を作りました。

満月の日がやってきて、お金持ちのおじいさんは宇宙船に乗り、ついに宇宙船は打ち上げられました。

同じ時間、真面目なおじいさんと美人の娘は山の中を一生懸命になって泉を探していました。

打ち上げられた宇宙船はというと、どんどん月へと近づいていきます。

その様子を見ていた月の神様はついに怒ってしまい、星の神様にお願いしてお金持ちのおじいさんの宇宙船に星をぶつけてしまいました。

宇宙船は、燃え上がりながら、真面目なおじいさんたちが泉を探していた山に落ちました。

おじいさんは宇宙船の落ちた場所へ行くと、なんとそこには泉があったのです。

そして、満月になった瞬間、どこからともなく光の雫が落ちてきて、泉を黄金色に輝かせました。

真面目なおじいさんがそれを飲むとみるみる若返りました。

美人の娘と若返った真面目な元おじいさんは、それから大勢の人に感謝され、笑顔に囲まれながら幸せに暮らしていました。

ある日、真面目な元おじいさんが親切にした人がお殿様で、お殿様はぜひこのような人物に国を治めてもらいたいと言って、隠居時期だったこともあり、子宝にも恵まれなかったことから元おじいさんに家督を譲り、ついには元おじいさんはお殿様になってしまいました。

優しいお殿様の治める国は国民も大変幸せになり、長く長く発展していきましたとさ。

おしまい。




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