asaborake
2005-11-15 15:25:51

彼我の隔たり

テーマ:いにしえに迷う

コロッセウム ヨーロッパ の古い街には所々に広場があり、それが散歩のための格好の目標になる。


だが、その時に限り、行けども行けども目当ての広場に行き当たらない。
ワイン の酔いもさめ、弾んでいた気持ちもしだいに焦りに変わってきた。

真冬の異国の闇路、心細さが募ってきた。
道を間違えたのだろう。


きっと、とんでもない方向に歩いているんだ。
あたりは真っ暗闇。


心もとなさと焦燥にかられ、しぜん急ぎ足になっている。
古い石畳やアスファルトに響く自分の靴音が、不安をいやます。

いつの間にか、冷たい雨さえ降り出してきた。
方向感覚をなくしたローマの夜道を、駆けるようにさ迷った。

と、そんな時である。
小さな私を押し潰すように突然、眼前に黒い巨大な物体が出現した。


瞬時のうちに黒々とした大きな塊が前方に立ちはだかり、異郷人 を威嚇したのである。

驚愕し、戸惑いながらも暗黒に目を凝らした。


コロセウムである。
巨大なコロセウム の廃墟である。‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥

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新薬師寺 そのとき私は、2千年前の古代ローマ の闇に、茫然自失として立ち尽くしていた。


暗澹たる歴史の深遠のただ中に放り込まれた、あわれな遠来の東洋人であった。
ひとしきり激しくなった雨の中で私は、彼我の文明の底知れぬ隔たりを感じていた。


その奇怪で、おどろおどろしい瓦礫の山ほど私に、西洋文明 との違和感、取り付く島のない断絶感を覚えさせたものは、いまだかつてない。


私は、奈良に遊ぶときは光明皇后 ゆかりの新薬師寺の宿坊に泊まることがことが多い。

皇后が夫、聖武天皇 の眼病平癒を祈願して建立された古寺である。


 あまり広くない境内の菩提樹の下に、会津八一 の歌碑が立っている。

      

      ちかづきて  あふぎみれども  みほとけの

 

                みそなはすとも  あらぬさびしさ

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