仲見世の店番をしていると、倅が下の女の子の孫を連れて昼頃立ち寄った。
「こんな時間にどうしたの?」と聞くと
「風邪っぽいので早退きするって言うのでお迎えに行ってきたんだ」
「それじゃあ早く帰っておとなしく寝ていなくちゃね」
と言ってすぐに帰らせた。
閉店後家に戻ると、布団の上に座って絵を描いていたので、たいした事なさそうだな
と思い、安心して彼女の布団のそばに座ってテレビを見始めた。
するとお兄ちゃんの方が私の膝の上に腰を下ろした。
彼は私の胡坐の上に座るのが大好きのようで、よく座ってくるのだが、いつもは正面向きに座るのに今日はお姫様抱っこのように横向きに座った。
こんな座り方をされると片手は頭の下に置き、片手は膝の裏に置くようにしないと私の膝から落ちてしまうので自然に抱っこのかたちになるのだがその形だと私の手がくたびれるので、その手を少し楽にするためぎゅっと絞ると彼の体は腰を中心にV字型になり「ジイジ苦しいよ」という。
それではと頭の方をはなすと仰向けに倒れる。「ジイジそっちははなしちゃダメ、足の方にして」そこで足の方を離すと、ただ座っているだけなのでつまらないようである。
そして始まったのが変速7段切り替えである。
これが実に疲れるのである。
「ジイジもう少し頭の方を下げて」
「それは下げ過ぎ、もう少し足の方を上げて」
「ジイジそれは苦しいっ」
こうなると7段どころか、その切り替えの種類は無限なのである。
そこからはもう私の膝は角度の変わる椅子ではなく、遊園地の魔法の椅子になっていった。
しかし私の両手と両足は攣るほど重くなってしまった。
しかしそこまでくたびれるのにかかった時間は僅か7~8分であった。
ジイジが孫を相手に思い切り遊べる時間はこんなものだった。
その後夕食になってくれたのを幸い彼を私の胡坐から下ろし、私はゴングに救われたボクサーのようであった。
これからは私と孫との遊び時間を「ジイジの8分間」と言う事にする。


