春時雨だの春霖(しゅんりん)と言うには少々早いのかもしれないが、朝から袖笠雨が降っていた。袖笠雨とはそでで笠の代りに避けられる程度の雨の事であるが、それも上がり今では道も乾き始めている。こんな雨が春を呼ぶ雨なのだろう。
それにつけても江戸っ子と言うものは気が早く出来ているようで、正月になると「三社様が近づきましたね」と言い出し、明けましておめでとうなどという挨拶をすっかり忘れているおじさん達がいたものである。
そんな浅草であるから2年ぶりのお祭に燃えないわけはなく、町では祭りの話題があちこちの立ち話で聞かれるようになってきた。
祭りの話と言うのはいろいろあって、一昔前なら1年前の祭りの時の喧嘩の遺恨だの、隣町より少しでも華やかになどと言う話が後を絶たなかったが、今では仲間内で作った半纏だの、着物だのの話が多いようであり、平和になったものである。
平和と言えば子供達の町会半纏は、成長が早いのですぐ着られなくなり、お母さん達が「うちの子が小さくて着られなくなった半纏があるけど、○○ちゃんなら着られるんじゃない」というお母さん同士の会話も始まり、これなどは聞いていてほほえましくなる良い光景である。
それに引き換えると我々の方は、3月17・18日の示現会の総予算に対し、「どこの経費が予算を上回っていて」とか、「警察との打ち合わせで企画を練り直さなきゃ」とか、「警備陣の人数がこのくらいで大丈夫か?」など現実的過ぎて面白くも何ともない話が多く、当日を前にくたびれてしまいそうである。
しかし日にちは刻一刻と迫り、話の内容がつまろうとつまらなかろうと進めざるを得ないのである。
こんな事があってこそのお祭りであり、そんな会合も含めてのお祭り騒ぎなのだから、会合で意見が合わなかった相手とも、祭りの当日には「おう、いっぺいやろうじゃねえか、どうだい、めでてぇな」といきたいもんである。


