注:今回の記事は、“とおくてよくみえない” 展にちなんで、
文字をいつもより小さくして、よくよめないようにしております。
久しぶりの横浜美術館。
1月21日より始まった “高嶺格:とおくてよくみえない” のオープニングに遊びに行ってきました。
こちらは、現在アーティストでもあり演出家でもある高嶺格さんの首都圏初の大規模な個展。
ついつい、格さん (かくさん) と読んでしまいがちですが、 “格” と書いて、 “ただす” と読みます。
行かれる方は、会場で、
「いいよね~、たかみねかくさん」
と知ったかぶりをしないようご注意下さいませ。
さてさて、美術館に足を踏み入れた時点から、
今回の美術展は、すでに始まっています。
館内に響き渡る “オロロ~ン” という謎の咆哮。
そして、怪しくうごめく白い布。
明らかに、布の向こうに何者かがいる気配です。
(注:撮影は特別に許可をもらっております)
このインスタレーション作品のタイトルは、 《野生の法則》
“もしかしたらもしかして、巷で話題の噛みつき猿が?!”
と、不安を抱きつつ、
エレベーターに乗り、いざ布の裏側へ。
“・・・・・・・・へっ?”
自分史上最大に拍子抜けしました (笑)
ネタバレするのは野暮なので、伏せますが、
野生でも何でもないものが、布の裏側にありました。
まんまと高嶺さんに、してやられた感です。
モヤモヤすることこの上なし。
続いて、最初の展示室へ。
そこには、前回のドガ展 の時の重厚な壁紙を、あえてそのままに、高嶺さんの新作が展示されていました。
“へぇ~、高嶺さんって、こういうテキスタイル作品も作るんだ♪
色合いとか配置とか、結構好きかも♪”
と、普通に観賞する僕。
《戦争》
《兵士の休日》
・・・・・・・が。
しばらく見続けていて、妙なことに気が付きました。
“何か、キャプションがうさんくさい!”
例えば、こちらの 《切株に座る少女》 のキャプション。
よく読むと、東アジアの弥勒菩薩の表現に多用される半跏思惟像うんぬんの記述が。
“そんなに大層な作品か?” と疑念が。
『これは、所謂、 “カラー・フィールド・ペインティング” に相当するのか』
という、もはや疑問系の書き出しから始まる。
「 “相当するのか” って、こっちに聞くなよ」 という感じです。
この辺りから、ピンと来ました。
あやうく、また高嶺さんに騙されるところでした (笑)
そう言えば、先日、横浜美術館がtwitterにて、派手な柄の毛布を募集していましたっけ。
あれは、こういうことだったのだなと納得。
単なる毛布にはみえない、この一連の作品。
一番難易度が高かったであろう毛布は、こちら↓
無地 (笑)
見事に、毛布にみえなくするキャプションを作り上げていました。
この技術に、純粋にスゴイと思う反面、
次回以降の普通の美術展でも、キャプションが信用できなくなりそうです (笑)
さてさて、これらの新作以外にも、
今回は、高嶺さんのこれまでの代表作が集結しています。
森美術館での “六本木クロッシング2010” に出展された 《ベイビー・ インサドン》 や、
(在日韓国人である奥さんとの結婚についてのインスタレーション作品)
第50回ヴェネチア・ビエンナーレに出展された 《God Bless America》 など。
(男女が2トンもある巨大な粘土でクレイアニメを作り上げる映像作品)
個人的に今回の展示で一番感銘を受けたのは、
横浜トリエンナーレ2005出展作 《鹿児島エスペラント》 の流れを汲む 《A Big Blow-job》 というインスタレーション。
“とおくてよくみえない” のではなく、
“くらくてよくみえない” 部屋で体験するアートです。
これも是非、体験して頂きたいので、ネタバレを防ぎますが。
暗闇を懐中電灯を持って歩く楽しさみたいなものが、この作品にはある気がします。
全体的には、高嶺さんが何をしたいのかよくみえない美術展ですが。
そのよくみえなさを楽しむことこそが、この美術展のキモです。