2013-08-15 15:00:43

レポート 第2回金沢・世界工芸トリエンナーレ 工芸におけるリージョナルなもの 2

テーマ:レポート
その1はこちら

金沢アートグミ特集ページ
(撮影:上田陽子)

そして台湾について。
台湾と日本はギャラリーBが展示室です。

■先史時代、大陸から台湾に移住した先住民族がいた。17世紀にオランダ植民地→鄭成功(チェン・チェンコン)による統治→50年間に及ぶ日本による統治→2次大戦後は中華民国軍が進駐し、以後は中華民国政府が実効支配している。
■南北に細長い島で北が亜熱帯気候、南は熱帯気候に分けられ、 年間を通して温暖。
■台湾でも使われる「工芸」と「美術」という言葉は、前者がクラフト・後者がアートと訳され、どちらかというと工芸の方が美術より下に扱われることが多い。

まずキュレーターの李玉玲(リ・ユーリン)氏から、出品作品は政府主導のグループと、個人作家グループに分類できるという全体説明がありました。その上で伝統工芸、現代美術、製品デザイン、ファッションから「編む・織る」をキーワードに8名の作家を選出したそうです。
表現がダイナミックで現代的な感覚、産業デザイン性の強い作品が多いように感じました。


台湾の先住民族アタヤル族出身の母をもつ尤瑪(ヨゥマ)氏はアタヤル族特有の織りの技術を復活させ、再びその文化を定着させることを目指して活動を行う個人作家です。故郷の村で文化研究を行った後、糸や染料となる植物を育てる所から作品制作をしており、更にアタヤル染織文化産業地区の設立まで行っています。

金沢アートグミ特集ページ
尤瑪 達陸(ヨゥマ・ダルゥ)《生命的廻旋》2013年  (撮影:上田陽子)


政府主導グループからはnendoデザインによる椅子「バンブー・スチール 禅チェア」が紹介されていました。これは国立台湾工芸研究センターが行っている、工芸の職人と気鋭のデザイナーが共同制作を行い各地の手工芸産業を活性化させる「Yii」プロジェクトの成果の1つ。
nendoの佐藤氏が邸(チョウ)氏の協力を得て、伝統文化・歴史を踏まえた上で竹細工の技法・完成をスチールに落とし込んだプロダクトであり、その進め方と仕上げ方はとても興味深いです。

金沢アートグミ特集ページ
左 邸錦緞(チョウ・チントァン)氏の師、黃塗山(ファン・トゥシャン)氏の作品 Double-layer, hexagonal, plaited wicker flower container.
Courtesy National Center for Traditional Arts  http://taiwanpedia.culture.tw/en/content?ID=2745

右 職人:邸錦緞(チョウ・チントァン) デザイナー:nendo 《バンブー・スチール 禅チェア》2011年 
(撮影:上田陽子)




金沢アートグミ特集ページ
(撮影:上田陽子)


最後、日本について。

キュレーターの秋元雄史氏から説明がありました。昨年に行った「工芸未来派」展の流れを汲みながら、日本の地域主義的な美意識や精神性を持ち、かつ強さのある「もの」づくりをする作家7名を選出したそう。制作方法や哲学、年齢、経験、活動場所も異なるメンバーです。

同じアジアでも台湾と違うと感じたところは、作品という「もの(または素材)と己」が1対1で、それを真摯に掘り下げていっている感じです。紹介されている台湾の作家は、勿論作品の完成度や伝統との向き合い方など真剣で深いのですが、彼らはアクティビストの一面もあるし「何がしたいか」というそれぞれ目的に向かって総合的な動きをしているように見えます。
一方で日本の出品作家たちはもっと純粋に、素材と向き合って「何ができるか、どこまで高められるか」という部分を大事にしているように感じました。


CHICARA NAGATA氏のモーターバイクはまさにそのような作品です。タイヤと部品の一部を除いてすべて設計図なしの手作りのため1台あたり制作時間は7500時間にも及びます。すさまじいほどのこだわり。バイクという機能美を超えた、美意識の塊です。

金沢アートグミ特集ページ
CHICARA NAGATA《Chicara Art-1》2006年、《Chicara Art-2》2007年、《Chicara Art-3》2008年
(撮影:上田陽子)

そして、十代大樋長左衛門(年朗)氏と橋本雅也氏の展示室。
初代から受け継いできた伝統的な大樋焼から、先代にならったお茶碗や、個人としてライフワークとしている、干支が描かれた大きな壺が展示されています。
その奥にある橋本雅也氏は鹿の骨から美しい草花を作っています。鹿猟に行くところからスタートし、骨を洗ってから少しずつ削りだして形作る、静謐な作品です。伝統的な技法ではないですが、その素材への取組み方が神話的、原始的です。

金沢アートグミ特集ページ
左:十代大樋長左衛門(年朗) 右奥:橋本雅也
(撮影:上田陽子)



展覧会を振り返って

各地域の「工芸」は、歴史や他文化流入度、気候によって作品表現や方向性、テーマへの取り組み方がかなり異なると改めて思いました。
また、台湾の染織作家 尤瑪 達陸(ヨゥマ・ダルゥ)さんがキュレータートークの際に言っていた、「作品だけ展示されても意味がない」という言葉が印象的でした。工芸は素材や技巧、モノとしての強さのみで計られることが多いですが、彼女は伝統的な技法・素材でもって新しい作品を自覚的に制作しています。
今後、世界各地域の工芸作家たちが「なぜ、どうやって、何を作るか」を問いながら、時代に応えていく先にある表現が楽しみです。

(2013年8月15日 執筆:上田陽子)



展覧会情報
「第2回 金沢・世界工芸トリエンナーレ —工芸におけるリージョナルなもの」
会期:2013年8月3日(土)~29日(木) 10:00-18:00 会期中無休
会場:金沢21世紀美術館 市民ギャラリーA、B
入場無料
展覧会ウェブサイト
http://www.kanazawa-kogeitriennale.com/

「金沢アートスペースリンク —第2回金沢・世界工芸トリエンナーレ サテライト」
開催期間: 2013年6月29日(土)~2013年9月9日(月)
※開催時間や展覧会内容は各会場によって異なります。下記ウェブサイトをご参照下さい。
http://kanazawartspacelink.tumblr.com/
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コメント

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1 ■実はブログの内容見てドキっ!です

え…ってビックリしちゃったんです(*^_^*)金沢アートグミさんのブログ見て「あぁ…そういうことなんだぁ!」って…ちょっと偉そうな感じかもしれませんけど感心しちゃったというか((@^ェ^@))やっぱりこういうものの考え方している人ってどんな感じなんだろう?って思って思わずコメントしちゃいました(迷惑だったらご免なさいです)でも…実際のところはもっともっと金沢アートグミさんの事を知りたくなっちゃいました(○゚ε^○)なんだか、こんなに素敵なブログの管理してるんだから、金沢アートグミさん自身にも魅力があるんじゃないかって・・・勝手に思っちゃって、私の連絡のせておいたのはそれが理由なんです(^▽^●)面倒だったり、話したくないとかだったら、コメントそのもの削除しちゃってくれて構いませんので気にしないでくださいね(o゚▽゚)o

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