ニッポンブランド・マイスター講座ー器ー | 色想-色想い色語る-

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カラーリストの仕事を通じて感じた事、生活の中で活躍する色、
自然が魅せる色、カラーで何かが変わる、そんな色にかかわる
色々なお話を綴っていきたいと思います。

先週末、以前からお邪魔させて頂いているMIJP(made in japan project)

主催の「ニッポンブランド・マイスター講座」の第一回目-「器」-

創造のシステムから見た日本の「うつわ」-日本の物つくりと表現ーに

参加してきました。


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会場の東京ミッドタウンの桜も満開~



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お部屋は東京ミッドタウンタワーの4F

カンファレンスルーム。広々ととってもきれい

な会場です




MIJP(株) の活動については何度かこのブログでもご紹介したことが

ありますが、日本の地場産業の活性化、日本の技術、商品の応援

を主体とした活動を行うNPO法人として、また実際にその商品をご紹介・

販売するショップ「THE COVER NIPPON」を運営され、日本のモノ作り

を「伝える」・「販売する」という両面から応援する活動をされています。

今回参加した「ニッポンブランド・マイスター講座」 は現代のように色々な

モノが溢れ均質化される中、失われつつある日本の伝統文化、日本の

美意識を支えてきた伝承の技術や価値観を残すべく、それらが培われて

きた背景や大切さを学ぶことで、モノの価値ひいては日本の価値に気づ

き、豊かな日本の心を次の世代へ繋げていこう

という趣旨で企画された講座ですが、上記のように作り手の応援と

同時に使い手である消費者自身にも、モノを観る目を養ってもらいたい

という事で、良いモノづくりと同時に良いモノ選びと言った一貫した企画

に私自身大変興味を持ちました。

プロダクツカラーデザインという仕事柄、色々なモノを観る事は欠かせ

ませんが、案外モノの歴史や生産工程については知っているようで

知らない事が沢山あります。

そういった意味でも、今回の講座は「器」・「漆」・「紙」・「色」・「茶」・

「匠」・「染」・「心」と8つの素材や技法、歴史が学べるとあって、個人

的にもモノ・素材が大好きな私にとっては嬉しい機会となりました。


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今回はカラーファームメンバーの小島朱結さんと

私の主人も参加!



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お部屋は本当に広くてゆったりとしていて快適!



今回はその第一回目の「器」、講師は美術評論家・国際陶芸アカデミー

会員として、大学や海外でも多方面でご活躍の外舘和子先生です。




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外舘先生と手前が先生愛用の3つのぐい飲み

手前から備前焼きの作家モノ十万円台、次が同じく

作家モノの磁器で万円台、一番奥がマスプロの磁器

で千円台のぐい飲みです



お話は事前に提示された、先生が使われている3つのぐい飲みのア

ケート結果から始まりました。

色も形も異なる3種類のぐい飲みの中から好きなものを選ぶ、そして

その理由について、更にその3つのぐい飲みを二つのグループに分類

するとしたら、どういう基準で分類したのか?まさにモノの観方から始ま

りました。

それは陶器と磁器という素材・工法の違い、或いは手作りとマスプロダ

クションの違い、装飾性のあるなし、自然の模様と意図した装飾の違い、

洋風と和風と言うイメージの違い、或いは触感や使い勝手の違い等々、

アンケートの結果を通じて、陶磁器というモノの世界や目の付け所が
少し
見えてきました。


更にお話は焼きモノの歴史に入り-
土器が登場した縄文、弥生時代から古墳時代にはろくろや朝鮮半

から伝わってきた窯による焼きモノの須恵器が登場し、植物の灰を原材

料とした緑色の緑釉や灰釉、鉄釉を使ったガラス質な焼き物が登場した

飛鳥・奈良・平安時代。鎌倉時代から室町時代の中世には瀬戸・常滑・

丹波・信楽・越前・備前、いわゆる六古窯と呼ばれる地方窯が発達し、

桃山時代から江戸時代にかけての近世は、茶陶の開花で、お茶席で

使われる茶碗やお道具、花入れ等、瀬戸黒、黄瀬戸、志野、織部等と

いった焼き物が登場し、やぶれや歪みと言ったいびつな形や風合いを

美しいという日本特有の新たな美意識が誕生。

更に青い絵柄の有田から柿右衛門、九谷、伊万里、鍋島といった磁器が

登場し、仁清・乾山と土に白い化粧した上に絵付けをする京焼の展開で

江戸時代にはほとんどの焼き物が出そろったのでそうです。



明治以降は陶器が海外に出ていく最先端の産業として黄金期をむかえ

ますが、集団制作や色々な作り方が混在した時代で、個人作家が生

まれるのは大正時代に入ってからの事。それと同時に展覧会も開催され

るようになり戦後は非実用的オブジェのような陶芸が誕生し、現在に

至る・・・とここ陶磁器12000年の歴史を1時間で辿りました。


陶磁器の歴史なんてなんとなく複雑で分かり難いと思っていたのですが、

エポックな出来事を中心に説明頂いたので、大変分かり易く、現在知って

いるやきものルーツや大きな流れがザックリですが理解できたような気が

します。



陶芸は10数年前から母校が開講したワークショップで趣味として
制作を始めていた
事もあり、土の種類、釉薬、焼成については若干の

知識はあったものの、只々土いじりが楽しくて、陶磁器の歴史について

直関心が希薄でした。



そんなこともあり、今回今更ながら改めてその歴史を学び、更に陶磁器へ

の関心が高まったと同時に、作り手として、また使い手としての両面から

モノの観方ができるのではないかと楽しくなってきました。


そういった思いを更に整理して下さるようなお話として、今日の講座の

テーマある「創造性のシステムからみた実用陶磁器」という事で、

プロクトデザイン、クラフトデザイン、クラフトという3つのシステムの

紹介がありプロダクトデザインに関わる者として、この辺りのお話には

大変興味を持ちました。


特に、2000年前後から、インハウスプロダクトデザイナーが一作家の

ごとく、もてはやされる様になり、プロダクトデザイン・クラフトデザイン・

クラフトとの区分が不明瞭だったのですが、大きくは生産システム・生

産量という線引区分されると説明が簡単にできそうでなるほど!

でも、私の中ではシステムというより、プロダクトはお客様である使い手

好みに応えることが優先され、クラフトデザイン、クラフトへと徐々に作

り手意思が優先される度合いが高まっていくと言う観方の方が、モノ

を見極めるという意味では正直分かり易いのではないかと思っています。


最後は、前述の事前アンケートと同時に、参加者が日頃使っているお湯

飲みやカップとその特徴、またなぜそれが良いのかと言うアンケートも

って、その結果をグループごとに発表するというもの。



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参加者が日常使っているというカップやお湯呑


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私たちのグループです。

参加者のお仕事は本当に様々で、仕事に関連した

方から、単に趣味で参加した方と色々ですが、

だからこそ、色々な見方がって楽しい!


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ここでは、「日常使ううつわこそが持ち主の美意識の基準」という先生の

言葉が大変印象に残りました。


日常使いと言われると、実は私の場合コレ!という決まったモノがあり

ません。その日その日でお茶碗も湯呑もグラスもカップも違っています。

敢えて変えている訳ではないのですが、要は適当なだけ。それでも、

当日はその中でも好きな器の写真を持参したのですが、あらためて思

えば、好きな器は壊れては嫌だと言う思いから、余り使っていないのが

現状で、私の中で「良いモノ、高価なモノ」と思っている器の多くはお客

様用として、もしく記念日や特別な時にしか使わない、お飾りに近いモノ

となっています。


そんな意味で先生の言葉を考えると、私は美意識はどうでも良いと思って

いる事になるのかな、これはまずい!とちょっとドキッとしてしまいました。

良いと思うモノは使ってこそ、そのモノの良さや価値が初めてわかる

で、お飾りでは器という道具としてのそのモノの良さが理解できない、

ましてや、良いモノを見極める目は養われないですよね・・・



今回、これが一番大きな気づきだったかも知れません。器に限らず、

洋服だって家の中で着ている普段着もいい加減かも・・・


そう考えると最近なんとなく、「こだわり」という感覚が鈍くなってきて

いるような気がします。これは本当にまずい・・・



良いモノを見極める目を養うと言う事は、モノの良さを知るところ始まる。

そこから納得がいくものを探し求めていく「こだわり」が大切で、今回

ちょっと眠っていた感性が目を覚ました様な気がします。



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講座を終えて外舘先生とツーショット 授業で聞け

なかった質問をさせて頂きました



次回は「漆」、漆も以前仕事で制作に携わった事がり、今から来月の

講座が楽しみです。



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