美術ACADEMY&SCHOOLブログ出動!!!

美術Academy&Schoolスタッフがお届けする、ARTを巡る冒険の日々♪

美術ACADEMY&SCHOOL のブログ出動!!! ⇔2011年3月よりアメブロに引っ越しました♪



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文字と画と。高めあう魅力の再確認

 

 

 

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 わたしたちが情報を得たり、学んだり、楽しんだりする書物。

 なかでも書かれていることの解説や情景が絵として入っているものは、より分かりやすく、よりイメージを喚起させ、広い層に支持されてきました。

 

 特に日本ではマンガとしても発達し、今や世界へ発信するカルチャーとして定着しています。

 そんな文字と絵の幸せな融合が形となった“挿絵本”を振り返り、その時代、その息吹から、改めて豊かな表現世界の魅力をたどる展覧会が、東京・静嘉堂文庫美術館で開かれています。

 当館が所蔵する膨大な書物から、中国の明・清時代と日本の江戸時代に作られた貴重な挿絵本で、文字と絵が奏でる豊かで多様な世界を確認します。

 

 

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展示風景から
お出迎えは《新版錦絵当世美人合》の錦絵

 入り口では江戸後期の人気浮世絵師、歌川国貞の美人画が迎えてくれます。

 ぱっと見はその時代の美人の肖像ですが、「コマ絵」といわれる上端の記述と合わせたとき、そこにさらに絵に含ませたもうひとつの意味が見えてくる・・・洒脱を楽しんで。

 

 

 

 

Ⅰ.神仏をめぐる挿絵

 

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展示風景から
貴重な絵巻『妙法蓮華経変相』からスタート

 

 洋の東西を問わず、画の入った書物は、宗教から始まります。

 ここでは仏教や道教など、古く中国で作られた経典に関わる挿絵本を観ていきます。

 説経の内容や描かれているシーンの視覚化で、より広い理解と浸透を意図して作られました。

 聖なる存在や、釈迦の生涯など、人々の願いやドラマティックなストーリーに対する想像力が、こうした目には見えないものを造形化し、活き活きとした臨場感を文字の世界にもたらしたのです。

 本といっていますが、形態もいわゆる「冊子」ではなくて「折本」や「巻物」から。
 やがて印刷技術や製本技術が発達して、現在でもなじみある「冊子」の形が一般的になっていくのも確認できます。

 

 

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『妙法蓮華経変相図』 中国・[南宋時代前期(12世紀)]写 静嘉堂文庫蔵

 仏教経典中もっとも重要とされる法華経、この「変相図」はそこに説かれた仏の世界を絵画化したものです。
 南宋前期頃の作と考えられる、類例の少ない貴重な作品、本邦初公開です。


 法華経の中のさまざまなエピソードがみっちりと描かれていますが、ぜひ近くでじっくりと。
 シンプルな線描の表情がキュートな仏さまや、のちの風神・雷神像につながるちょっとユーモラスな鬼神さまなど、楽しくなってきます。


Ⅱ.辞書・参考書をめぐる挿絵

 

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展示風景
明時代の『三才図絵』から
展示風景
清時代の『欽定古今図書集成』から


 続いて、紹介されるのが、辞書の世界。

 中国では、早くも紀元前から言葉や文字を解説する辞書のようなものは編纂されていましたが、図入りとなる大きな契機が、隋の頃から始まりおよそ1300年続いた官吏登用試験「科挙」の存在でした。

 膨大な知識と幅広い見地が求められ、浪人し続けて歳を取ってしまう人もいたというこの試験のために、民間でも多くの辞書や参考書が刊行されたそうです。

 こうした辞典や受験参考書から、科挙の過酷さとともに、勉強をいかに分かりやすく解説するか、という、今も変わらないニーズへの工夫が読み取れて興味深いです。
 

 

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『纂図互註礼記』 中国・漢鄭玄注 唐陸徳明釈文 南宋時代(12世紀前半~13世紀後半)刊 静嘉堂文庫蔵

 科挙の受験参考書として作成された図解入りの「礼記」。身分による帯の違いや、冠衣の見分けなどが、注記とともに記載されます。
 厳格な礼儀作法が重要な規則として定められていた時代、受験生には必携の書であったことだろうと…。

 


 日本からは、江戸期に流行した百科事典や生活事典(いまでいう「家庭の医学」や「お薬事典」みたいな…)などが紹介されています。

 

 

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『訓蒙図彙』 中村惕斎撰 江戸時代・寛文6年(1666)序刊 静嘉堂文庫蔵

 江戸前期の子供向け(初心者向け)図解国語事典。
 タイトルは現代風にすると「絵で見てわかる。はじめての事典」とでも…?(笑)。

 天文・地理から人物や衣服、鳥獣、草花まで、17の部門からなる事典には、和漢の名前が併記され、短い註で解説が付されています。
 特に自然界の事物に多くが当てられているのは、今も変わらぬ事典のルーツをうかがわせます。

 わかりやすく、画も美しいことから高い人気を得て、以後この本の影響下で編纂された辞書類は30種を超えるのだそうです。
 

Ⅲ.解説する挿絵

 

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展示風景から
美しい彩色や精緻な画の挿絵本が並びます


 辞書とは異なり、ある出来事や物事の内容や意味、あるいはその仕組みや効果などを説明するものに、「解説書」があります。

 いまならカタログとか図説などと言われるこうした解説書として遺されている挿絵本を観ていきます。

 明代中期から清代初期の中国では、現在にも名を残す挿絵師や刻工が多く登場し、こうした解説書の刊行も隆盛を誇ったそうです。

 日本では、その器用さでブームを作った「機巧(からくり)」の仕掛けを解説した書物や美しい彩色の植物図鑑などを。

 また、画に文字が添えられることで、より描かれた世界が魅力的になる水墨画の世界も、併せて紹介されるのはなかなかに粋な趣向です。

 

 

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『程氏墨苑』 中国・程大約撰 明時代・万暦34年(1606)刊 静嘉堂文庫蔵

 製墨師(書道で使用する墨を作成する人)である程大約による、墨のデザインカタログ。
 摺って使用してしまうのがもったいないくらい美しい墨のデザインは515図にものぼるのだそうです。

 

 当時の名高い文人たちの詩や文がデザインを解説しているものもあり、質の高い作品集としても楽しめます。

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展示風景から
ライバル方于魯の『方氏墨譜』

 また、イタリアのイエズス会士から提供された、キリスト教関係の図案もあり、当時の中国の文化交流がうかがえるのも興味深いです。


 となりに師弟関係で後にライバルとなった方于魯の墨譜もならび、デザインを競っています!

 

 

 

 

 

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『機巧図彙』 細川頼直撰 江戸時代・寛政8年(1796)刊 静嘉堂文庫蔵

 日本のからくりの仕組みを解説した本書には、和時計4種(掛時計・櫓時計・枕時計・尺時計)と9種の座敷からくり(茶運人形・五段反(かえり)・連理反・龍門滝・鼓笛児童・遥盃・闘鶏・魚釣人形・品玉人形)の仕組みが、詳細な部品図とともに丁寧に解説されています。

 部品を揃えれば、そのまま自作できてしまうほどに精緻な図解本は、ちょっとお持ち帰りしたいかも…(笑)。
 実際に作られたからくりたちと一緒に見てみたくもなります。
 

 

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『本草図譜』[射干(ひおうぎ)] 岩崎灌園撰
江戸時代・天保15年(弘化元年・1844)頃写 静嘉堂文庫蔵
『本草図譜』[桃] 岩崎灌園撰
江戸時代・天保15年(弘化元年・1844)頃写 静嘉堂文庫蔵

 日本で最初に作られた本格的な彩色植物図譜。
 掲載数なんと約2000種!20余年の歳月をかけて完成されました。

 シーボルトとも植物談義をした、時代を代表する博物学者の作です。 
 精緻な写実はもちろんですが、彩色の美しさにうっとりします。

 江戸後期は、西洋近代化の中で興隆した博物学の影響を受け、日本でも自然科学への関心が高まり、こうした図譜が多く作られるようになっていきます。


 そして、これらの間に並べられた掛軸も注目です。(ぜひ会場で~!)

 賢江祥啓による《巣雪斎図》と作者不詳の《梅渓図》。2点とも重要美術品。
 峻厳な雪山の中に巣籠もりするような庵一屋。
 梅の名所である羅浮山を遠く眺める図にしたやわらかい空気と梅の香が漂ってきそうな風景。

 特別公開の渡辺崋山《芸妓図》(重要文化財)。
 崋山直筆の賛により、惚れた芸妓を描いたものと分かります。
 なよやかな芸妓の色香と、濃淡の着物の紋様、帯や髪の陰影の美しさが印象的です。
 
 いずれも画だけでもよいですが、今回はぜひ賛に書かれた言葉の意味とともに楽しんでください。
 (入館者にはもれなく館長による解説文がもらえます)
 

Ⅳ.記録する挿絵

 

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展示風景から
北方の異文化や生物の記録が並ぶ


 さまざまな体験も記録として書物に残されます。
 まだ写真も動画もなかった時代、挿絵は重要な役割を担います。

 交通網が整い、庶民の生活も安定、向上して、江戸中期以降には国内でも旅ブームが興ります。

 印刷技術も発達していたため、こうした道中の記録やエピソードは浮世絵をはじめとして、紀行文としても多く遺されました。

 また、江戸後期にはさまざまな国が日本の沿岸に姿を見せ、開国を迫るようにもなります。
 四方を海に囲まれた日本では、国防の観点からも、各国の情報や北端や南端の情勢を把握するために、記録は重要になっていくのです。

 旅や非日常的な体験を後に伝え、記録とするために書かれ、描かれた書物を紹介するコーナー。

 


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『環海異聞』 大槻玄沢編 江戸時代後期(19世紀)写 静嘉堂文庫蔵

 1793(寛政5)年、石巻から江戸に向かった船が難破し、アリューシャン列島の島に漂着します。
 乗組員16名のうち、希望者4名が帰国したのは1804(文化元)年。ロシア艦により、長崎に帰着しました。
 この時、ロシアは通商を求めますが、幕府は拒否。この態度に怒ったロシア側は択捉島、利尻島、礼文島などを攻撃、事件は幕府に北方警備の必要性を痛感させる契機となります。

 この帰国者からの聞書きにより、記録されたのがこちら(↑)。江戸時代の漂流記の代表作です。
 ロシア人の衣装や、ロシアの風俗が活き活きと描かれています。

 

 

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『亜墨新話』(初太郎漂流記) "前川文蔵・酒井貞輝編 守住貫魚画" 江戸時代末期(19世紀)写 静嘉堂文庫蔵

 1841(天保12)年に兵庫から奥州へ向かった船が同じく難破し、スペイン船に救助されてカリフォルニアを経て、メキシコから帰国した乗組員からの聞書きを記録したもの。
 こちらも繊細で美しい彩色の挿絵が載せられています。


Ⅴ.物語る挿絵

 

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展示風景から
伊勢物語のコーナー♪


 やはり「挿絵本」といわれて、まず挙げられるのは、物語本でしょう。
 最終章は、日本と中国、ふたつの国の物語の挿絵本を確認します。

 絵巻という形態で8世紀から絵と詞の物語を楽しみ、親しんできた日本ですが、絵巻はまだまだ限られた階層のものでした。
 挿絵本が日本の庶民にも普及するのは、江戸時代中期以降です。

 中国では元代に挿絵のある物語が誕生し、明代には庶民の消費文化が拡大するに伴って急速に発達したそうです。

 

 

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『琵琶記』 中国・高明撰 明時代・万暦(1573-1619)刊 静嘉堂文庫蔵

 中国元代末に著された戯曲、南曲の最高傑作の一つといわれる作品とのこと。
 その極細の彫りが生み出す精緻な世界は、いかに当時の中国の版画技術が勝れていたかを実感させ、ため息が出ます。

 

 

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『羅生門』(奈良絵本) 江戸時代前期(17世紀)写 静嘉堂文庫蔵

 こちらは江戸前期に作られた「奈良絵本」といわれる豪華な挿絵本。
 金彩も極彩色もあでやかに、室町中期に成立したとされる御伽草子を描きます。
 内容は、大江山の鬼退治の後日譚です。

 その鮮やかさときらびやかさからか、海外でも最も人気のある日本古書のひとつになっているのだとか。

 

 

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展示風景から
宿屋飯盛・編、北尾政演(京伝)画の狂歌本

 このほか、伊勢物語の左右の色違いの料紙が素敵な冊子と、平安の雅を残す絵巻、山東京伝や葛飾北斎らによる狂歌本など、わたしたちにも親しい作品が紹介されます。

 

 

 

 

 

 

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展示風景から
《冊子散蒔絵印籠》と《宇津山蒔絵笈形香棚》

 

 

 また、物語のシーンや、挿絵本そのものをモティーフにした工芸品、蒔絵で表した印籠なども展示され、日本の洒落た美しい意匠に嬉しくなります。

 

 

 

 

 

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展示風景から
出口付近から臨む


 文字が綴るものを、想像で、写実で表した挿絵たち。
 絵にされたものを、その「ことば」と「かたち」で膨らませる文字たち。

 それらは、互いに単なる補完ではなく、交ざりあい、響き合って、ひとつの豊かな世界を創っていきます。

 なんとなく当たり前のように見ている挿絵本。
 改めてその力と魅力にハッとさせられる空間です。

 

 

 

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ミニブック『挿絵本の楽しみ』
350円(税込)

【おまけ】


 本展覧会の解説が、かわいいミニブックに!。

 サイズも、お値段も、嬉しい一冊。
 展覧記念におススメです!

 

 

 

 

 

 

 

(penguin)

 

※サイト内の文章・画像等の内容の無断転載及び複製等の行為はご遠慮ください




『挿絵本の楽しみ ~響き合う文字と絵の世界~』

 

開催期間:5月28日(日)まで
会場 :静嘉堂文庫美術館 (世田谷)
    〒157-0076 東京都世田谷区岡本 2-23-1
アクセス :東急大井町線・田園都市線(地下鉄半蔵門線直通) 「二子玉川」駅下車、
        駅前④番バス乗場より東急コーチバス「玉31・32系統」で「静嘉堂文庫」下車。徒歩5分
        または二子玉川駅からタクシーで約10分
       小田急線 「成城学園前」駅下車、南口バス乗り場から「二子玉川」行きバスで「吉沢」下車
       徒歩10分
       *駐車場が美術館前に20台分あります。美術館入館のお客様は無料でご利用いただけます
開館時間 :10:00~16:30 (入館は16:00まで)
休館日 :毎週月曜日
入館料 : 一般 1,000円/大高生 700円(20名以上団体割引)/中学生以下無料
お問い合わせ :Tel.03-5777-8600(ハローダイヤル)

公式ホームページはこちら

 

 

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掌の中に450年の宇宙を観る
 

 


 安土桃山時代、侘び茶を完成させた千利休の創意に応えて、「日本の茶碗」を完成させた初代長次郎

 室町時代より唐物が最高級品として珍重されてきた中で、自身の茶の世界に合う茶碗を求めた利休は、唐三彩の技術を伝えた渡来人・阿米也の子とされる長次郎に茶碗の制作を依頼します。

 ここで完成したのが、「赤樂」といわれる土色の茶碗と「黒樂」といわれる漆黒の茶碗。
 あらゆる装飾をそぎ落としたシンプルな器は、華やかな桃山文化の中で異彩を放ちます。

 利休の「侘び」を体現した、究極の美は、現在でもその前衛性を失わず、わたしたちを魅了します。

 この制作の技は、秘伝・奥義として、樂家により代々一子相伝され、平成の現代、その継承は15代まで、そして16代が控え、なんと450年続いているのです。

 東京国立近代美術館では、歴代15名と次期当主の作品などを一堂に、樂家16代にわたろうとする歴史を作品で概観する展覧会が開かれています。

 

 中には、普段は一般公開されないお茶碗もあり。これまでにない、そしてこれからなかなかもありえないだろう、貴重な内容です。

 それぞれの後継者が、初代の意思を受け止めつつ、自身と自身の生きる時代の風を盛り込みながら、伝統に新しさを求めて「形」にしていったことを、作品でたどれる、嬉しい機会です。

 まもなく終了(汗)の本展、現在観られるものを中心にご紹介します~。

 会場の章立ては、分かりやすく歴代当主ごとにたどっていきます。
 それぞれの茶碗のたたずまいやけしきと合わせ、ぜひその銘にもご注目。
 秀逸な銘がより作品の魅力を引き立てています。


初代 長次郎

 

 まずは利休とともに樂焼を完成させた初代長次郎の作品から。
 入り口では禅の空を表すような円環とともに、長次郎作の獅子がお出迎えです。

 

展示風景から
ユーモラスな姿の獅子がお出迎え~♪


 

初代長次郎の空間。


 暗い空間に浮かび上がる茶碗たちは、いずれも両手におさまる小ぶりなたたずまいに、素朴ともいえるシンプルさながら、圧倒的な存在感を持っています。

 

 《大黒》は、長次郎の黒樂を代表する作品。
 釉のムラが黒色をより魅力的にしています。

 

 赤樂《太郎坊》は、「聚楽土」といわれる聚楽第付近の土を用いて制作されたそうです。
 茶碗自体がいまだ熱を発しているような赤が印象的です。

 

 《禿》は、利休が常にそばに置いて愛でていたといわれる黒樂の茶碗です。
 表千家に伝来する重宝で、利休の年忌にのみ使用される、めったにお目にかかれない一品です。

 

 長次郎の黒樂作品の中では殊にどっしりとした重量感を持つ《シコロヒキ》は、利休の孫宗旦により銘が与えられたのだそうです。
 「シコロヒキ」とは、平家の武者・景清が兜の後ろ部分錣(しころ)を引きちぎったという逸話から。
 底部に残る傷をその跡に見立てたのだとか。

 


 このほかにも、《太郎坊》と同時期に制作された《二郎坊》、きゅっと両手でしぼったようなやや縦長なシルエットを持つ《杵ヲレ》、口縁がややうねりを持つ平たい《太夫黒》など、こんなにまとめて長次郎の作品を観られることにも感動です。


田中宗慶

展示風景
田中宗慶の作品。


 歴代には数えられておらず、系図からも抹消されており、作品数も少ないそうですが、樂家直系の家祖、長次郎の妻の祖父にあたり、孫とともに樂焼の窯を構えた人です。

 長次郎の死、利休自刃後の作品と、樂家で残る最古の水指が観られます。
 

 


二代 常慶

 

 田中宗慶の子で、長次郎亡き後、現在の樂家までの基盤を確立した人物です。

 時代は徳川政権に移る頃。茶の湯では織部が活躍し、大胆な変形や多彩な文様の茶器がもてはやされる中、彼は、同じ時代の空気を吸収しながらも、織部とは異なる独自の作風を打ち出します。

 長次郎の黒樂を踏襲しながらも変形を大きくし、動きを見せているのが感じられます。

 横に低い《黒木》、縦に長い《長袴》、胴の真ん中がへこんだ《不是》など。
 彼が発案した白樂様式の《香炉井戸形茶碗》は、赤・黒の世界から新しい色彩としてハッとさせます。


三代 道入

展示風景
三代 道入の作品。ポイントのあしらいがかっこいい


 常慶の長男で、別名「ノンコウ」の愛称で呼ばれているそうです。

 本阿弥光悦との親交が深く、光悦の作陶に協力し、自身も彼の芸術精神に大きな影響を受けたようで、光悦が好みそうな作品が並びます。

 初代よりサイズもやや大ぶりで、その肌には光沢が生まれ、処々に抽象的な装飾がアクセントになっていたり、釉薬のたまりがよいリズムを生んでいる作品は、モダンな感じです。

 

 艶のある黒釉に「黄抜け」の意匠が施された《青山》は、釉薬が生む偶然の形が、軽やかな印象を与え、黒の深みをより強調します。

 

 《僧正》は、赤樂に正方形を3つ白く抜いたデザイン。とても17世紀の作品とは思えないモダンさを持っています。
 口が一か所すぼまって三角形を作っているのも斬新。華やかな一品です。

 

 《鵺》は、赤い胴部に黒い刷毛跡が印象的です。どのような釉薬が使用されているのか不明なのだそうです。
 銘が、妖しく赤む夜空に現れた漆黒の妖怪を思わせます。
 
 
 ここでは本阿弥光悦作の茶碗も観られます。

 

展示風景
光悦の作品。奥が《冠雪》です


 琳派の元祖といわれる光悦ですが、マルチ・クリエイターであった彼は、茶道にも深い造詣があり、自身でも多くの茶碗を制作しています。

 光悦村で自由な作陶を試みた彼の作品の多くは樂家の窯で焼かれたといいます。

 

 形も釉の施し方も、自由に羽ばたいている感じのする茶碗たちは、それでいて、気持ちのよい緊張感を持っていて、さすがです。

 

 「ふっくり」という言葉がぴったりした形と色を持つ《乙御前》は、赤がほんのり染まったような柔らかさを持ち、薄い口縁の可憐さがこの銘を持つのも、なるほど、と…。

 また、現在3点のみが確認されている光悦の白樂茶碗《不二山》《白狐》《冠雪》のうち、《冠雪》も観られます。


四代 一入/五代 宗入

 

展示風景
四代 一入と五代 宗入の作品たち


 一入は、道入の長男。早くに父を亡くし、供に制作した期間は少なく、若くして代を継いだ彼は、父の作品から多くを学び、そこから独自の表現を模索していきます。

 

 特徴としては、抽象文様を入れた父に対し、線によるプリミティブな具象的な図を描いているところです。

 

 
 

 宗入は、尾形光琳・乾山の生家、雁金屋・三右衛門の子で、2歳の時に樂家に養子に入りました。光琳らとは従兄弟にあたるそうです。

 彼が生きた元禄時代は、装飾的で豪華な様式美が好まれ、流行していましたが、利休没後100年ということで、初代長次郎回帰のブームの中、宗入は、誇張や装飾をできる限り排した静かな作品を遺しています。

展示風景
二代の獅子が並ぶのはカワイイ

 とはいえ、見た目こそシンプルに、初代のテイストを持っていますが、どっしりとした重量感や厚みは、時代を反映した彼の独自性を獲得しています。


 ここには四代と五代が制作した獅子型の香炉が赤樂、黒樂で並んでいるのがほほえましいです。

 

 

 

 



六代 左入/七代 長入/八代 得入/九代 了入

展示風景
六代 左入と七代 長入の作品


 宗入の入婿として継いだ左入は、血族ではないその出自を活かした新しい作風を樂家にもたらしたとされています。

 

 「左入二百」といわれる赤黒樂茶碗の連作200椀を遺し、現在でも茶人の間で重宝されているそうです。

 長入左入の長男で、15歳で家督を継いでから、約40年に渡り、茶の湯の家元制度の確立の時代に作陶を続けました。

 

 その安定を示すかのような、大ぶりでどっしりとした作風は、彼のおおらかさをも感じさせるものです。

 長入の長男であった得入は30歳の早世であったため、数も少なく、作風も確立しきれないままながら、遺された作品は、完成度が高く、惜しまれる才能であったことがうかがえます。

 

展示風景
九代 了入の作品は箆の跡が斬新
 


 了入は、早世の兄を継いだ、長入の次男です。
 天明の大火で大きな被害を蒙った樂家の「中興の祖」といわれる存在。
 
 65年に及ぶ長い作陶活動の中で、箆(へら)による削りや造形を主軸として、彫刻的な表情が特徴ある作品を遺しています。
 その推移を感じさせる3点の作品で確認できます。

 

 


十代 旦入/十一代 慶入/十二代 弘入

展示風景
十代 旦入の
《不二之絵黒樂茶碗》と《赤樂茶碗 銘 秋海棠》


 了入の次男旦入が、早逝した長男に代わり家督を継ぎます。

 

 時代は、文化文政から幕末期、京都では華やかな京焼の仁阿弥道八らが活躍する中で、父譲りの箆使いをより多彩にし、美濃焼や唐津焼の作風も採りいれながら新しい造詣に挑戦しています。

 慶入酒造家の三男から旦入の養子になり、その後彼の娘婿になります。

 

 幕末から明治維新の変革期、江戸文化が否定されていく中で、パトロンも減る苦難の時代に家督を継いだのが慶入です。

 

 京都御所から出火した大火により、樂家も土蔵ひとつを残して焼失するという不幸に見舞われながらも、茶碗にとどまらず、皿や鉢、煎茶道具など幅広い作品を手がけて、道入、了入に次ぐ名工と追われているそうです。

 その作品は、厳しい時代背景を感じさせない、静かな落ち着きと軽やかな風味をたたえ、自己主張が強くないのに、個性を光らせていて魅力的です。

 慶入の長男弘入も、明治期の茶道衰退期の苦労を共にした相伝者でした。
 小ぶりな茶碗に、了入以来の箆の効果を使いながら、作風はより華やかで装飾的になっています。

 父とともに、初代長次郎三百回忌の記念として、赤茶碗300椀を作成した、そのうちの1点も出品されています。


十三代 惺入/十四代 覚入

 

展示風景
十三代 惺入の作品


 ふたつの大戦の激動期を過ごした昭和初期の二代は、弘入の長男惺入その長男覚入です。

 制作に必要な資材の調達もままならない中でも、各種の鉱石を使った釉薬の研究で新しい表現を創りだした惺入。

 

 

 

展示風景
十四代 覚入の作品

 

 


 第二次大戦に従軍していたため、その父の死に目にも会えず、戦後ひとりで樂家を立て直した覚入。

 

 彼は帰国後東京美術学校で彫刻を学び、伝統の上に、新たな造形力を持った表現を目指し、現代にふさわしい樂茶碗の世界を創造します。

 伝統と現代芸術との融合をもたらし、茶碗でありながら、ひとつの芸術表現として立ち上がってくるもの。それを作品で確認します。

 

 

 黄土と白土の化粧により、デザイン化された意匠を持つ茶碗《杉木立》は、銘と併せて、茶碗に描かれた現代絵画のようです。

 
 この精神と作品へのスタンスは、当代の十五代・吉左衞門へと受け継がれていくのです。 
  

十五代 吉左衞門(当代)/篤人(次期十六代)

 

展示風景
宇宙空間のような当代の作品展示!


 覚入の長男で、現当主が吉左衞門です。

 父と同じく東京藝術大学彫刻家を卒業後、イタリアに留学し、1981年に十五代を襲名しました。

 初代長次郎からの伝統を継承しながらも、その長次郎が“彼の生きた現代”に突き付けた革新性の精神を重視して、“自身の現代”の表現と創造性を問い続けて制作しています。

 その前衛性は陶芸美術界にも大きな衝撃を与え、国内にとどまらず海外での評価も獲得、さらには、陶芸だけではなく、佐川美術館に「樂吉左衞門館」として茶室を自ら設計するなど、幅広い創作活動も注目されています。

 彼の茶碗が並ぶ一室は、初代の部屋同様に、暗い中にケースが浮かび上がり、まるでどこか異星の地かガラスと陶芸の森の中に迷い込んだかのような宇宙的な世界になっています。

 あまりの数に圧倒されますが、ぜひひとつひとつをゆっくり確認してください。
 銅釉やコバルト釉が使用されたもの、複数の釉を組み合わせたもの、これまで樂焼きでは使用されたことのない金彩や銀彩が施されたもの、カクカクとしたもの、丸みを帯びたもの――大ぶりでさまざまな輝きと形の茶碗たちがささやき、ざわめき、喝を飛ばしていて、見ごたえたっぷり!


 ギラギラした迫力と、強いメッセージのタイトルは、「お茶碗」を超えた「アート作品」になっています。

 

 個人的にはもう少し枯れた方がよいな、と感じましたが(笑)、その新しいものを生み出そうとするエネルギーに満ちた空間は刺激的です。  

 そして、未来への継承、吉左衞門の長男篤人の作品も並びます。
 父と同じ道をたどり、大学卒業後はイギリスへ留学、帰国後、後継者として作陶を始めたそうです。
 
 どちらかというと峻厳な感じがするお父さんの作風に対して、やわらかさを持っているように感じました。
 まだまだ成長過程、とはいえ、静かな美しさを持った作品は、今後の可能性が秘められていて、楽しみです。


 たったひとりだけがつないで、450年を重ねてきた15人の茶碗。
 代ごとに、継承を志しながら、ある者は初代に近づき、ある者は初代から離れ、それぞれに樂家を体現する、その揺り戻しのような波を感じるもの面白いです。

 ひとつひとつに、時代の空気と制作者の想いが込められ、その小さな器の中には、計り知れない時空が拡がります。
 それは、実際に手には取れないけれど、手の中で無限を感じる、まさに「茶碗の中の宇宙」。

 ひたすらお茶碗ばっかり、と思わないで。
 それらが並ぶ空間、それ自体もまたひとつの宇宙を形成しています。

 茶碗の中の宇宙を覗く、美術館という宇宙空間、今週いっぱいまで。お急ぎを! 

 

 

(penguin)




『茶碗の中の宇宙 樂家一子相伝の芸術』

 

 

開催期間:~5月21日(日)
会場 :東京国立近代美術館 (竹橋)
    〒102-8322 東京都千代田区北の丸公園 3-1
アクセス :東京メトロ東西線「竹橋駅」1b出口、徒歩3分
     * 駐車場はありませんので公共の交通機関をご利用ください
開館時間 :10:00~17:00
       (金曜日は20:00まで、入館は閉館の30分前まで)
休館日 : 月曜日
観覧料 : 一般 1,400円(1,200円)/大学生 1,000円(800円)/高校生 500円(300円)
     *( )内は20名以上の団体料金。中学生以下は無料(学生証をご提示ください)
     * 心身に障害のある方とその付添者1名は無料
      (入館の際に障害者手帳をご提示ください)
     * 本展の観覧料で当日に限り同時開催の
      「マルセル・ブロイヤーの家具:Improvement for good」および
      所蔵作品展「MOMATコレクション」も観覧可能
お問い合わせ :Tel.03-5777-8600(ハローダイヤル)

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春を映す和の意匠を楽しむ

 

 


 桜の季節は過ぎましたが、六本木の泉屋博古館 分館では、春らしい装いの展覧会が開催中です!

 

 春を彩る屏風の名品を中心に、新収蔵のうつわ、季節に合った茶道具で“おもてなし”の心を感じるその内容は、すでに展示替え後期に入っていますが(汗)、お花見のあとは、ぜひアートで春を感じてみては?ということで、一部ご紹介です~。

 

 


展示室Ⅰ

 

 まずは屏風や調度品の数々で「春」を感じます。

 

 今回の最大の見どころは、「天皇と将軍 華麗なるパレード」として、5年ぶりの公開、《二条城行幸図屏風》

 

《二条城行幸図屏風》 江戸時代・17世紀 泉屋博古館蔵

 1626年、三代将軍・徳川家光と大御所秀忠の招きに応じ、後水尾天皇が京都・二条城に行幸する様子が描かれた、きらびやかで華やかな作品です。

 

 壮麗な天皇の行列を、京都の人々が思い思いの装いと準備をして見物している姿が、屏風全面に緻密な描写で展開。

 戦国の時代が終わり、江戸の体制が整っていく歴史とともに、当時の京風俗を満喫できます。

 

 上段には内裏から二条城へ向かう天皇の行列が、下段には二条城から内裏へ天皇を迎えに参内する家光の行列が描かれます。

 参列者はおよそ9000人、行幸の先頭が二条城に入っても、後水尾天皇はまだ内裏を出ておらず、行列は朝から夕方まで続いたそうです…。

 

《二条城行幸図屏風》
部分・1
《二条城行幸図屏風》
部分・2
《二条城行幸図屏風》
部分・3

 

 行列に従い、往来の端に土下座する武士たち、格子の向こうから覗き見る晴れ着を着た女たち、行列そっちのけで宴会に興ずる人たち、中には子供におしっこをさせる母親まで!

 見物人たちの装いを観ているだけでも、時を忘れます。

 

 粛々と進む、豪華な行列と、びっしりとひしめいている京市民たちの対比が面白く、当時の喧噪が聴こえてきそうな臨場感に満ちています。

 

 一方、立ち並ぶ家屋の2階はすべて開け放たれ、そこに人の影はありません…。
 これは、治安上の幕府の命が徹底したことを物語ります。

 

 政治と風俗、両者が等価に描かれた貴重な記録、その華やかさとともに楽しんでください!
 

 

展示風景
《二条城行幸図屏風》ゆかりの茶器たち。

 この行幸図ゆかりの茶道具も紹介されます。

 

 後水尾天皇の父、後陽成天皇ゆかりの唐物茶入、後水尾天皇ゆかりの香炉、徳川家光愛用の茶釜など、寛永の文化を偲びます。

 

 もうひとつの行幸図《大原御幸図屏風》も第Ⅱ展示室で公開されています。こちらと比較して違いを味わうもよし。

 

 

 

展示風景
さまざまな遊女の姿があでやか♪

 

 また、宮川長春の《遊女図巻》は、やがて浮世絵へつながっていく風俗画の始まりを観るとともに、屏風に描かれる衣装との比べっこができるかも。

 

 

 

 

 

 

 

 


「春の彩り―花を愛でる心―」として後期に紹介される注目が、琳派の祖といわれる俵屋宗達の工房で作成されたことを示す「伊年印」のある《四季草花図屏風》

 

伊年印 《四季草花図屏風》 江戸時代・17-18世紀 泉屋博古館蔵

 金地を背景に、写実的で同時に装飾性を持つ、さまざまな草花を堪能できます。
 まさに満開、贅沢なお花見です(笑)。

 

 

(ちなみに前期は江戸前期に流行した主題の《誰ヶ袖図屏風》とこの時代から生まれてくる風俗画から《扇面散・農村風俗図屏風》が迎えてくれていました!↓)

 
前期展示風景から
《扇面散・農村風俗図屏風》から臨む
前期展示風景から
《誰ヶ袖図屏風》から臨む

 


 飛び交う蝶や青貝の花鳥などが施された蒔絵の箱は、そのゴージャスなたたずまいに思わずため息…。

 織部の梅文の向付と、沓形の祥瑞絵が描かれた向付の揃いも、かわいらしく春を主張します。

展示風景
美しい蒔絵の箱たち・・・。
展示風景
小ぶりな器の揃いもかわいい♪

 

《丹波茶入 銘 山桜》 江戸時代・17世紀 泉屋博古館分館蔵

 銘に「山桜」を負う茶入。確かに桜の木が浮かび上がるよう・・・。

 箱とともに展示されています。

 

 

展示風景
仁清の茶入勢ぞろい~♪

 「みやびな京の名工―仁清―」では、仁清の《唐物写十九種茶入》の一堂展示がおススメ。

 

 すべてを手に包みとって見たくなるほどに愛らしくも清廉な茶入の行進がたまりません。

 

 

 

 

 また、唐物のお茶碗2点も美しいたたずまいです。(↓)
 その銘の妙とともに味わってください。

 

《黄天目茶碗 銘 鷰》 元時代・14世紀 泉屋博古館分館蔵

 

《紅葉呉器茶碗》 朝鮮時代・16世紀 泉屋博古館分館蔵

 


ホール

ホール展示風景

 

 

 「邸宅を飾るしつらえ―和館編―」として、住友春翆の邸宅を飾った、和様の作品が並びます。

 

 

 収穫した稲束に飛んでいくる雀が可愛い《耕作蒔絵茶箱》

 修復されてのお披露目で、回転台で観られる《半磁器桜花模様花瓶》(伝 佐々木庄次郎)

 が魅力的です。

 
展示風景
日本蒔絵合資会社《耕作蒔絵茶箱》
明治時代 泉屋博古館蔵
(前期展示)
展示風景
伝 佐々木庄次郎《半磁器桜花模様花瓶》
明治36年(1903) 泉屋博古館蔵


 

展示室Ⅱ

 

展示風景
春の茶会の調度が並ぶ

 

 「茶会を彩るおもてなしの調度」では、泉屋博古館に新たに収蔵された近代作品を中心に、「春のおもてなし」にふさわしい茶道具や絵画作品が紹介されています。

 

 

 

 

 

 

 

 後期必見は、江戸琳派の創始者酒井抱一の下絵による、原羊遊斎による蒔絵の棗。

酒井抱一下絵・原羊遊斎作 《椿蒔絵棗》
江戸時代・19世紀 泉屋博古館分館蔵
酒井抱一《椿蒔絵棗付属書状》 江戸時代・19世紀 泉屋博古館分館蔵

 

 当代一流のアーティストによるコラボレーション。
 抱一のこの作品に関する書状とともに観られるのも嬉しい展示です。

 


 こちらは五代・清水六兵衛による茶碗2品。

 

展示風景
五代清水六兵衛《扇流模様茶碗》
大正時代 泉屋博古館蔵
展示風景
五代清水六兵衛《鳳凰模様茶碗》
大正時代 泉屋博古館蔵

 

 扇と水流の組み合わせと鳳凰の紋様は、繊細ながら五色の輝きで魅了してくれます。

 

 

 絵画では望月玉渓《白秏孔雀図》がその羽根の美しさが神々しくさえ見える、品格の一作です。

 ぜひ、会場で!

 

 (ちなみに前期には上野寛永寺の桜を描いたといわれながら、これまで幻の作品といわれていた菊地容斎の《桜図》、日本画風に描かれた油彩画であるのがちょっと面白い香田勝太の《春秋草花図》から 「春」が出ていました。すみません、次回展示をご期待ください…)

菊池容斎 《桜図》 江戸時代・弘化4年(1847) 泉屋博古館分館蔵
(前期展示・2/25~3/26)
前期展示風景
香田勝太《春秋草花図》のうち「春」 紙本銀地油彩
大正6-7年(1917-18) 泉屋博古館分館蔵

 

 このほか、大正期の蒔絵調度の数々、明治期、三代・清風与平の《白磁桜花文花瓶》などが、シンプルな洗練さで春のおもてなしを演出します。

 


 最後には「邸宅を飾るしつらえ―洋館編―」として、やはり春翆の邸宅を飾った、西洋の作品が観られます。

 

展示風景
洋館を飾った作品たち。

 

 日本に最も早く入ったモネ作品のひとつといわれる《モンソー公園》

 フランスの油彩画を元に、二代・川島甚兵衛が綴れ織の技術を改良して作成、パリ万博に出品されたものと同定されるという《猟犬図額》が、

住友コレクションの充実ぶりを伝えます。

 

 

 

 


 華やかで、さわやかな、春爛漫の“おもてなし”、ゴールデン・ウィークいっぱいまでです。

 屏風の世界にあそび、茶道具やうつわに春を見つける時間はいかがですか?

 

 

(penguin)

 

 


『屏風にあそぶ 春のしつらえ 』

 
開催期間 :~5月7日(日)
会場 :泉屋博古館 分館 (六本木)
    〒106-0032 東京都港区六本木 1-5-1
アクセス :東京メトロ 南北線 「六本木一丁目」駅下車
        北改札1-2番出口より屋外エスカレーターで3分
      東京メトロ 日比谷線 「神谷町」駅下車、4b番出口より徒歩10分
      東京メトロ 銀座線 「溜池山王」駅下車、13番出口より徒歩10分
開館時間 :10:00~17:00 (入館はは16:30まで)
休館日 :毎週月曜日 
入館料 :一般 800円(640円)/高大生600円(480円)/
     *( )内は20名以上の団体料金
     *中学生以下は無料
お問い合わせ :Tel.03-5777-8600(ハローダイヤル)

ホームページは こちら
 

 

『屏風にあそぶ 春のしつらえ』 招待券を10名様へ!!(お一人様一枚)

応募多数の場合は抽選の上、
当選は発送をもって代えさせていただきます。


《申込締め切り 4月30日(日)》

お申し込みは、ticket@art-a-school.info まで 手紙

!!希望展覧会チケット名、お名前、送付先のご住所を忘れずに !!

美術ACADEMY&SCHOOL チケットプレゼント係
〒102-0083 千代田区麹町6-2-6 ユニ麹町ビル4F
電話03-4226- 3009
050-3488-8835

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これぞヨーロッパ絵画の王道!

 

 かつての帝政ロシア歴代皇帝が国の威信をかけて収集した、珠玉の美術品コレクションを所蔵するエルミタージュ美術館。その1万7千点の絵画コレクションの中から、16世紀ルネサンス、17・18世紀のバロック・ロココの巨匠たちの名画85点が六本木ヒルズにやってきました!今回来日した作品は、全てエルミタージュ美術館の常設展示作品という、まさに美術館の「顔」ともいえる名品揃い。エルミタージュ美術館展の決定版と銘打つこの展覧会の見どころをご紹介いたします!

 

 本展は全体を地域別に分けた6章構成となっています。画題の傾向などの違いで、それぞれの国の特徴が見えてきます。

 

プロローグ

ウィギリウス・エリクセン《戴冠式のローブを着たエカテリーナ2世の肖像》1760年代

©The State Hermitage Museum, St Petersburg, 2017-18

 

 展覧会の冒頭を飾るのは、エルミタージュ美術館の礎を築いた女帝エカテリーナ2世(在位1762−1796)の肖像画です。歴代ロシア皇帝のうち、畏敬を込めて「大帝」と呼ばれるのはピョートル1世とエカテリーナ2世の二人だけ。外国人でありながら、亡き夫に代わってロシア皇帝になったエカテリーナは、勤勉で教養豊かな知性溢れる女帝として、堂々とした姿で描かれています。ロマノフ王家のシンボルである双頭の鷲があしらわれた豪華な衣装も目を引きます。

 1764年、エカテリーナはベルリンの実業家から317点の絵画コレクションを取得。親しい人たちにコレクションを見せる場を作り、エカテリーナはそこを「エルミタージュ(フランス語で「隠れ家」の意)」と呼びました。ルーヴル美術館、メトロポリタン美術館と並び称される世界三大美術館の一つ、エルミタージュ美術館の始まりです。

 本展では、エカテリーナ在位中に収集したコレクションも数多く展示されています。作品横のパネルに王冠マークが付いていますので、チェックしてみてくださいね。

 

第1章 イタリア:ルネサンスからバロックへ

 神が中心の中世文化から、人間中心の近代文化への転換の端緒をなしたルネサンス。その発祥の地であるイタリアは、長い時代に渡って美術の一大中心地となりました。キリスト教一色の美術を払拭したルネサンスの時代は、やがて動感を強調した劇的な表現や、強い明暗のコントラストを用いた現実感の強いバロック絵画の時代へと移っていきます。

 

ティツィアーノ・ヴェチェッリオ《羽飾りのある帽子をかぶった若い女性の肖像》1538年

©The State Hermitage Museum, St Petersburg, 2017-18

 

 第1章展示室の入口正面で私たちを出迎えてくれるのは、盛期ルネサンスの大巨匠ティツィアーノが描いた肖像画。ティツィアーノらしい豊満な美女がまとうのは、男性ものの衣装でしょうか。この女性が何者なのかははっきりしていませんが、色々と想像を掻き立てられます。

 

 

ポンペオ・ジローラモ・バトーニ《聖家族》1777 年 

©The State Hermitage Museum, St Petersburg, 2017-18 

 

 親しみやすい柔らかな表情の聖母と、幼いキリストを中心とした《聖家族》を描いたバトーニ。バトー ニは「イタリア最後のオールドマスター」と呼ばれた 18 世紀の画家です。 

展覧会場内風景

 

第2章 オランダ:市民絵画の黄金時代

 17世紀のオランダでは、レンブラントやフランス・ハルスといった巨匠たちが活躍していました。富裕階級だけでなく、一般のオランダ国民にも愛好された絵画の中核を担っていたのは、世俗的な室内画や風俗画、風景画、静物画といった絵画でした。

 

レンブラント・ハルメンスゾーン・ファン・レイン 

《運命を悟るハマン》    1660年代前半

©The State Hermitage Museum, St Petersburg, 2017-18

 

 レンブラントが描いた《運命を悟るハマン》。ハマンは旧約聖書の『エステル記』に登場する人物です。 ペルシャ王クセルクセスの后に選ばれたエステル。大臣のハマンは、エステルの養父でユダヤ人のモル デカイに対する個人的な恨みからユダヤ人を皆殺しにしようとしますが、エステルの機転によって阻止 され、ハマンは王から極刑を言い渡されます。

 自分の運命を悟り胸に手を当て、観念した様子のハマン。右奥に佇むのがクセルクセス王、左にいるの が別の家臣とされていますが、実はこの絵が正確に『エステル記』のどの場面を描いているのか、未だに 議論されているところだとか。

 この作品に関して、音声ガイドでは又吉直樹さんが芸人らしい目線でツッコミを入れてくれています。 巨匠の作品も見ている側の自由な角度で楽しむことができる、ということを思い出させてくれます。 

 

第 3 章 フランドル:バロック的豊穣の時代

 この章のキーパーソンは、北方バロック最大の巨匠ルーベンス。17 世紀フランドル(位置的にはほぼ 現在のベルギー)では、ルーベンスとその工房が圧倒的な影響力を持っていました。ルーベンス作はもち ろん、フランス・スネイデルやヤーコプ・ヨールダンス、ヴァン・ダイクといったルーベンス工房出身者 の作品も並びます。 

 

ピーテル・ブリューゲル(2 世)(?) 《スケートをする人たちと鳥罠のある冬景色》

1615-1620 年頃 ©The State Hermitage Museum, St Petersburg, 2017-18 

 

 ルーベンス全盛の少し前、リアルで詩情豊かに季節感を描写して人気を博したブリューゲル一族。「農 民画家」と呼ばれたピーテル・ブリューゲル(1世)、その息子で夜の火事を好んで描いたため「地獄の ブリューゲル」と呼ばれたピーテル・ブリューゲル(2世)、もう一人の息子(ブリューゲル(2世)の 弟)ヤンは花の絵を得意とし「ビロードのブリューゲル」と渾名されました。

 《スケートをする人たちと鳥罠のある冬景色》は「地獄のブリューゲル」と呼ばれた息子が描いたとされています。時代も国も違う私たちにはわかりづらいですが、当時の人々には一目瞭然であったろう諺 や伝承の引用が絵の中に盛り込まれています。画面右には今にも作動しそうな鳥罠。画面左、スケート靴 を履きカーリングの原型になったゲームに興じる人々の足元の氷が、思いの外薄い。一見ほのぼのとし た田舎の風景に、薄暗い「危険」を描きこんでいます 。

 

 

フランス・スネイデルス《鳥のコンサート》1630 年代-1640 年代
©The State Hermitage Museum, St Petersburg, 2017-18 

 

 スネイデルスが描いた《鳥のコンサート》。イソップ物語の「フクロウと鳥たち」からヒントを得たもの と推測されています。楽譜を持って指揮するフクロウ。歌い手たちを見る限り、耳を覆いたくなるような 不協和音が発せられることしか想像できませんが、たくさんの種類の鳥たちの描写は丁寧で賑やかで、 絵としてはとても楽しい。 

 

第 4 章スペイン:神と聖人の世紀

 16 世紀に「太陽の沈まぬ国」として隆盛を極めたスペインでしたが、絵画の黄金時代はそれから約 1 世紀後に訪れました。カトリックによる国家統合を理想とし、異端に対して不寛容であったフェリペ2 世に続く時代であり、禁欲的で敬虔なカトリック信仰に基づく宗教美術が「国民絵画」として確立されていきました。 

 

バルトロメ・エステバン・ムリーリョ 《幼子イエスと洗礼者聖ヨハネ》1660 年頃
©The State Hermitage Museum, St Petersburg, 2017-18 

 

 ムリーリョが描いた幼いイエスと洗礼者聖ヨハネ。二人が幼き日に出会うという記述は聖書にはあり ませんが、好まれた画題であったようです。港の孤児や庶民を多く取材したムリーリョの描く宗教画は、 柔らかいのに説得力があり、不思議な魅力を感じさせます。 

 

フランシスコ・デ・スルバラン 《聖母マリアの少女時代》1660 年頃
©The State Hermitage Museum, St Petersburg, 2017-18

 

 私の個人的なオススメはと問われたら、真っ先にこの絵を挙げます。フランシスコ・デ・スルバラン 《聖母マリアの少女時代》。たとえキリスト教画であるということを横に置いたとしても、「無垢」な彼女 の表情に心打たれ、感動せずにはいられません。

 スルバランは本来男性が主体の硬質な宗教画を得意とした画家ですが、スルバランの娘をモデルにし たのではといわれるこの幼気なマリアは数ヴァージョンが確認されており、彼にとって大事なテーマの 一つだったことが窺えます。 

 

第 5 章 フランス:古典主義的バロックからロココへ

 絶対王政を確立し、豊かで強力な国となった 17 世紀のフランス。ルイ 14 世時代に再編された王立絵 画彫刻アカデミーの教義は、プッサンの古典主義様式を由来としていました。続くルイ 15 世の治世では 軽快で優美、遊び心や郷愁を特徴とするロココ文化が花開きます。

 

 

ジャン=オノレ・フラゴナールとマルグリット・ジェラール 《盗まれた接吻》1780 年代末
©The State Hermitage Museum, St Petersburg, 2017-18

 

 ロココの重鎮フラゴナールとその義理の妹マルグリットの共作《盗まれた接吻》に描かれたのは、ロココ的「戯れの恋」。シックでエレガンスでコケティッシュな人物たち。内容についてはもはや説明は不要でしょうか。 

展覧会場内風景

 

第 6 章ドイツ・イギリス:美術大国の狭間で 

 ドイツとイギリスの美術界は、国内情勢が不安定だったため他国から少々遅れをとっていました。混乱した世相の中、16 世紀北方ドイツではドイツ・ルネサンスを代表するデューラーやクラーナハと いった画家が登場。社会的状況の影響を受けながらも、北方独自の偉大な伝統を生み出していきました。 イギリス絵画のクオリティ向上は、政情が安定した 18 世紀初頭を待たねばなりませんでした。イギリス絵画の重要なジャンルは、肖像画。冷静な優美さでモデルの個人的背景や内面まで表現したトマス・ゲインズバラなどの巨匠が現れました。

ルカス・クラーナハ《林檎の木の下の聖母子》1530 年頃 

©The State Hermitage Museum, St Petersburg, 2017-18

 

 日本国内でも大回顧展が開かれたばかりのクラーナハ。色白、広い額、切れ長の目、おちょぼ口、尖り 気味の顎、ブロンドの髪。描かれた聖母はクラーナハの理想の女性像で、ドイツに多いゲルマン系の雰囲 気を醸しています。うねり輝く髪や、聖母の首元から頭部を覆う薄いベールの描写がとても繊細です。

 

 

 他にも特筆すべき作品が多すぎて困ってしまいますが、ぜひ本物を美術館でじっくり味わっていただ きたいと思います。流行に左右されないオールドマスターの手腕をたっぷり堪能できる、絶好の機会です。 

また、本展はロシアの国民的キャラクター、チェブラーシカとのコラボレーションも展開。チェブファンなら可愛い限定グッズも見逃せませんよ!

(伊藤)

 

『大エルミタージュ美術館展  オールドマスター 西洋絵画の巨匠たち』開催概要

会期:2017 年 3 月 18 日(土)−6 月 18 日(日)※休館日 5 月 15 日(月)

開館時間:午前 10 時−午後 8 時(火曜日は午後 5 時まで、但し 5/2 は午後 8 時まで) 

※入館は閉館の 30 分前まで
会場:森アーツセンターギャラリー(六本木ヒルズ 森タワー52 階)
〒106-6150 東京都港区六本木 6-10-1
六本木ヒルズへのアクセス:
東京メトロ 日比谷線「六本木駅」1C 出口 徒歩 0 分(コンコースにて直結)

 都営地下鉄 大江戸線「六本木駅」3 出口 徒歩 4 分
都営地下鉄 大江戸線「麻布十番駅」7 出口 徒歩 5 分
東京メトロ 南北線「麻布十番駅」4 出口 徒歩 8 分
観覧料(税込):

     当日    団体 

一般   ¥1,600  ¥1,400 

大学生  ¥1,300  ¥1,100

中高生  ¥800   ¥600
*小学生以下は入館無料
*団体料金は 15 名以上で適用されます。添乗員は 1 名まで無料 *障がい者手帳をお持ちの方と介助者(1 名まで)は、当日料金の半額 

お問い合わせ:03-5777-8600(ハローダイヤル) 

展覧会公式ホームページ http://www.hermitage2017.jp

     Twitter @Dai_hermitage
     Facebook http://www.facebook.com/hermitage2017/

巡回展情報
名古屋展
会期:2017 年 7 月 1 日(土)−9 月 18 日(月・祝) 会場:愛知県美術館
神戸展
会期:2017 年 10 月 3 日(火)−2018 年 1 月 14 日(日) 会場:兵庫県立美術館 

 

 

 『大エルミタージュ美術館展  オールドマスター 西洋絵画の巨匠たち』 
招待券を10名様へ!!(お一人様一枚) 

応募多数の場合は抽選の上、
当選は発送をもって代えさせていただきます。


《申込締め切り 4月21日(金)》

お申し込みは、ticket@art-a-school.info まで 手紙

!!希望展覧会チケット名、お名前、送付先のご住所を忘れずに!!

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〒102-0083 千代田区麹町6-2-6 ユニ麹町ビル4F
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驚嘆の個人コレクションで天才を知る

 

 

 幕末から明治、狩野派の画法を継ぎながらそこにとどまらず、あらゆる表現を採り入れて、本格的な日本画から浮世絵版画まで多様な作品を遺した、ある意味で”異端”の天才絵師がいました。

 

 その名は河鍋暁斎(きょうさい)。

 

 わずか6歳で歌川国芳に入門し、その後9歳で狩野派へ、そこから室町期に隆盛を極めた土佐派や、京都の円山四条派から西洋絵画に至るまで、目に触れ、手に取れるものを研究し、自身の作品に活かしていきました。

 

 子どもの時に、氾濫した神田川を流れてきた生首を家に持ち帰り、写生していたという逸話が残るほどの画に対する情熱は、師匠に「画鬼」と言われ、自らもそう名乗ったほど。

 

 諧謔、ユーモア、奇抜、大胆、その表現から“奇想”といわれる暁斎ですが、しっかりとした技術に裏打ちされたからこその独自性でした。

 

 彼に魅せられ、ロンドンのオークションで達磨図の一作を購入したのをきっかけに、ひたすら収集を充実させていったのが、ハーバード大学で美術史を専攻したイスラエル・ゴールドマン

 

展示風景
作品が動画になってお出迎え。
これを見たら暁斎が喜びそう♪

 そのコレクションから、収集家本人がセレクトした選りすぐりで紹介する暁斎の展覧会が、渋谷・Bunkamuraザ・ミュージアムで開催中です。

 

 その内容たるや、なんとおよそ80%以上が肉筆画という、質・量ともに驚くべきもの。

 

 その天才ぶりを堪能できる、またとない豪華な会場は序章と6章のテーマにインターミッションを加え、多彩で多様な暁斎を満喫できる構成です。

 

 


序章 出会い ゴールドマンコレクションの始まり

 

 まずは、ゴールドマンお気に入りの一作から、暁斎がまだ狂斎と名乗っていた頃の秀逸な淡彩水墨画の数々が迎えてくれます。

 







河鍋暁斎 《象とたぬき》 明治3(1870)年以前 紙本淡彩
イスラエル・ゴールドマン コレクション Israel Goldman Collection, London
Photo:立命館大学アート・リサーチセンター
展示風景
かつては画帳だった墨画淡彩の作品たち。
一気に暁斎世界へいざなわれます。

 ゴールドマンが一度手放したものの忘れることができず、無理を言って買い戻し寝室で愛でていたという、特別にお気に入りの作品。

 

 軽やかな筆が、象の姿を描き出します。手前で丸くなって怯える狸との間合いがなんとも微笑ましい一枚です。

 

 かつては画帳だったものを、ニューヨークの画商がバラ売りしたとのことで、この画帳からの数葉も彼のコレクションとして紹介されます。

 

 大鯰を船に仕立て、花街風の雌猫が岸から他の猫にその鯰船を牽かせる図、蓮の葉の黒板を指し、蓮根に座る生徒を教える蛙の学校など、どれもが力みのない筆で、活き活きとした動きをしっかりととらえ、すでにユーモアあふれる魅力に取り込まれて(笑)、本章へ。

 


第1章 万国飛 世界を飛び回った鴉たち

 

展示風景
圧巻の“鴉の暁斎”の間

 酒席で戯れに描いた画が官吏の目に止まり、新政府の役人を風刺しているとして逮捕された「狂斎」は、自戒も込めて名を「暁斎」へと改め、初回は許されなかった内国勧業博覧会の2回めに出品を果たします。

 

 そこで高い評価を受けたのが、鴉の図でした。
 彼に注目していた外国人からの依頼が殺到し、暁斎は“鴉の暁斎”として世界的な知名度を獲得します。

 

 ここには、堂々たる鴉図の作品群が並びます。

 鋭い鳴き声とともに画面から飛び出してきそうな、生命感あふれる漆黒の姿でさまざなま姿態の鴉たち。

 

河鍋暁斎 《烏瓜に二羽の鴉》
明治4-22(1871-89)年 絹本着彩
イスラエル・ゴールドマン コレクション
Israel Goldman Collection, London
Photo:立命館大学アート・リサーチセンター


 ひときわ目つきの悪い(!)2羽が、烏瓜の赤い実をアクセントにその黒さを引き立たせています。

 

 しっかりとした鴉に対し、軽やかな淡彩での烏瓜、黒と朱の対比も構図もすばらしい一枚。

 

 

 そのほか、藍紙に金砂子で薄闇を示した中に浮かび上がる孤高の姿、2羽ずつが絶妙な変化をもって配置される4対の掛け軸など、なかなか体験できない贅沢空間です。

 

 会場の一角を占めるそのクオリティと数に圧倒されますが、なんとそれでも所蔵品の半分ほどなのだとか。

 

 改めてゴールドマンコレクションの深さに驚嘆です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


第2章 躍動するいのち 動物たちの世界

 

展示風景
さまざまな動物を描いた掛け軸が並ぶ。

 鴉をはじめ、暁斎が得意としたモティーフのひとつに動物画があります。

 

 写実的なものはもちろん、動きや形態をしっかりと踏まえた上で生み出される擬人化された彼らは、中世の『鳥獣人物戯画』を彷彿とさせながら、時代と独自の視点による、皮肉や滑稽が込められて、コミカルに、軽妙に動き回ります。

 

 精緻さを実感できる作品とユーモアあふれる作品から、活き活きとして巧みな動物表現を楽しみます。

 

 

河鍋暁斎 《枇杷猿、瀧白猿》 明治21(1888)年 絹本着彩
イスラエル・ゴールドマン コレクション Israel Goldman Collection, London
Photo:立命館大学アート・リサーチセンター

 狩野派の絵師であることを改めて認識させる、本格的な動物画。

 

 背景の山水の描き方、毛並みも感じされる猿の写実、しぐさに可愛らしさがあるものの、品格ある二幅一対の花鳥画です。

 

 

河鍋暁斎 《動物の曲芸》 明治4-22(1871-89)年 紙本着彩
イスラエル・ゴールドマン コレクション Israel Goldman Collection, London
Photo:立命館大学アート・リサーチセンター

 かと思えば、こちらは猫、鼠、蝙蝠が曲芸を繰り広げます。

 

 その動き、あり得ない動物たちの様子なのに、実に自然に見えてくるから不思議です。

 実際の動物を観察し、その骨格や動きを徹底的に頭に入れて組み上げる、暁斎だからこその芸当です。

 


 また、蛙が曲芸をする《蛙の放下師》や、手長足長の人間と手長猿と手長海老が持てる長さを精一杯に伸ばして月を取ろうとする作品など、掛け軸の縦の空間を活かした工夫がにくい作品たちが秀逸。

 

 近代の創作版画を先取りしたような《雨中さぎ》から動物集といえる漫画版本まで、伝統から革新を一気に感じられるコーナーです。

展示風景
縦の空間を活かした発想がにくい。
展示風景
状態のよい版本でもそのテクニックを実感。
展示風景
浮世絵版画も斬新で近代を予告しています。

 


第3章 幕末明治 転換期のざわめきとにぎわい

 

展示風景
独特の視点と筆致で近代化する日本が描かれます。

 暁斎の目は、当然大きく変転する社会にも注がれていました。

 

 ここでは、激動の時代の冷静な観察者としての作品たちを確認します。

 

 いかに時代や人種が変わろうとも、人間の本性やその根本的な営みは変わらない――暁斎の醒めた視線の中には、そうした皮肉と愛情、そして新しい変化への尽きせぬ興味とそこはかとない哀愁とが混在し、それらが魅力的な作品に昇華しています。

 

 西洋化される社会を動物の戯画で描いたもの、外国人が日本の文化に触れている様子、そうした中でもたくましく生きる町人の姿などが、等価に、楽しげに描かれています。

 

河鍋暁斎 《家保千家の戯 天王祭/ろくろ首》 元治元(1864)年 大判錦絵
イスラエル・ゴールドマン コレクション Israel Goldman Collection, London
Photo:立命館大学アート・リサーチセンター

 浮世絵版画。ほおづきが擬人化され、祭りで騒ぎ、お化けに驚きます。国芳の影響を感じさせながらも、動きはもっと大胆になっています。

 観ているだけでウキウキと嬉しくなってくる面白さ♪

 

 

 やはり師をさらに過激にしたような、激しいタッチと毒々しい色彩で、時代の激変ぶりを表す作品も多く創りました。

 

河鍋暁斎 《名鏡倭魂 新板》 明治7(1874)年 大判錦絵三枚続
イスラエル・ゴールドマン コレクション Israel Goldman Collection, London
Photo:立命館大学アート・リサーチセンター

 精魂込めて作られた鏡の輝きは、神性を持ち、悪鬼や妖怪を退ける、という鏡の力を絵にしたものですが、そこには親交の深かった外国人ワーグマンの姿も。

 

 江戸時代からのなじみのテーマにも、当世の風物を巧みに入れ込みます。

 

 肉筆と版画、それぞれの効果と役割を考えて、描き方やテーマを選定し、使い分ける、技巧を持っていないければできない描き分けを実感できます。

 

展示風景
まるで現代のギャグ漫画のような日記絵巻。

 

 まるでマンガのような《暁斎日記》も必見。

 

 飄々とした彼のありのままが描かれているようで、手に取ってじっくり読みたくなるステキな“絵日記”です。

 

 

 

 

 

 

 

第4章 戯れる 福と笑いをもたらす守り神

 

展示風景
鍾馗図と七福神図がならぶ福々しい空間。

 七福神や鍾馗といったテーマは、家に福をもたらすものとして、昔から身分の貴賤を問わず求められてきたモティーフです。

 

 正統な画に加えて、暁斎はこうした「守り神」さえも、自身の世界で自由な役割を与え、動かします。

 

 

 

 

 

河鍋暁斎 《鍾馗と鬼》
明治15(1882)年 紙本着彩、金泥
イスラエル・ゴールドマン コレクション
Israel Goldman Collection, London
Photo:東北芸術工科大学 杉山恵助
河鍋暁斎 《鬼を蹴り上げる鍾馗》
明治4-22(1871-89)年 紙本淡彩
イスラエル・ゴールドマン コレクション
Israel Goldman Collection, London
Photo:立命館大学アート・リサーチセンター

 病を追い払う勇壮な鍾馗の隣には、通常は踏みつけているはずの鬼を鞠のように“ポーン”と蹴り上げる姿が。

 

 これまた縦の画面を最大限に活用し、蹴り上げる勢いと、飛ばされる鬼のスピード感まで描き出していて、構図、アイデア、描写ともみごと。個人的にはいちおしの作品です♪

 

 

 七福神は宴会で酔っ払い、弁財天の画を観て鼻の下を伸ばし、鍾馗は危険な崖に生える薬草を採るのに鬼を使役し、学校で教えたり共に遊んだり。風神は鷹に追われてほうほうの体で逃げ去り、神は神でも貧乏神の姿だったり…。

 

 厄災を払い福を呼ぶ効果も、こうした笑いでなお強くなるかも。
 その人間性(?)あふれる姿は、却って神々を身近に感じる愛着にもつながります。

 


インターミッション 笑う 人間と性

 

 春画は、その性質からなかなか展覧会で紹介されるのが難しいジャンルですが、当時「笑い絵」ともいわれたそれらは、ポルノグラフィックとしての隠微なイメージだけではなく、多分にユーモアのあるものであり、ひとつの重要な表現として、近年少しずつ公開されるようになりました。

 

 暁斎の春画作品はそれほど多くはないそうですが、中でも格別にこの“笑い”の機知に富んだものが遺されています。

 

 年齢制限はあるものの(汗)、行為の最中に猫がちょっかいを出したり、仕掛を施して動く絵にしたり、これらの明るいおおらかさのある“笑いの艶”を楽しむコーナーで、ちょっと気分転換。

 


第5章 百鬼繚乱 異界への誘い

 

展示風景
幽霊図の並ぶ一角。
迫力あるものからユーモアのあるものまで。

 すばらしい観察眼と写実の腕は、その縦横な想像力の具現化にも発揮されます。

 

 そこには、過去のさまざまな作品に対するあくなき研究と習得が活かされており、暁斎独自の創意が加わって、絢爛な「異界」が展開されています。

 

 鬼や妖怪、幽霊や骸骨など、異界のモノたちが跋扈する章は、まさに暁斎の本領発揮といえる作品たちに彩られています。

 

 

 

河鍋暁斎 《幽霊図》
慶応4/明治元-3(1868-70)年頃
絹本淡彩、金泥
イスラエル・ゴールドマン コレクション
Israel Goldman Collection, London
Photo:立命館大学アート・リサーチセンター
河鍋暁斎 《地獄太夫と一休》
明治4-22(1871-89)年
絹本着彩、金泥
イスラエル・ゴールドマン コレクション
Israel Goldman Collection, London
Photo:立命館大学アート・リサーチセンター

 左:2番めの妻が亡くなった際に、わざわざ抱き起して写生したものを元に描かれた幽霊画は、その緻密な下絵とともに観られます。

 

 近づいて表情をじっくりご覧あれ。眼には金泥と青が施され、明るい会場で観ても怖ろしい迫力です。


 右:室町時代に自ら「地獄太夫」と名乗り、地獄図の打掛を纏っていた伝説の遊女と、禅僧・一休とのエピソードを描いたもの。

 

 骸骨の三味線に合わせて小さな骸骨が踊りだし、奏者の頭蓋の上では一休が煽ります。

 彩色も金彩も豪華な花魁の衣装とその美貌との対比もすばらしく、楽しくも感嘆の作品は、別バージョンの作品と並び異彩を放ちます。

 

 

河鍋暁斎 《三味線を弾く洋装の骸骨と踊る妖怪》 明治4-22(1871-89)年 紙本淡彩
イスラエル・ゴールドマン コレクション Israel Goldman Collection, London
Photo:立命館大学アート・リサーチセンター

 文明開化の当世では、妖怪も洋装します。

 

 日本刀に三味線、そこにシルクハットという骸骨は、時代の先端を行く洒落者か?はたまた日本の風俗を真似る外国人の酔狂か?

 軽やかな筆致のユーモアにさまざまな読み取りを誘う一枚です。


そしてこちら。

河鍋暁斎 《百鬼夜行図屏風》 明治4-22(1871-89)年 紙本着彩、金砂子
イスラエル・ゴールドマン コレクション Israel Goldman Collection, London
Photo:立命館大学アート・リサーチセンター

 中世以来、絵巻に描かれてきた妖怪たちの夜の行進を、暁斎は屏風に仕立てました。

 

 大きな画面には、視覚的なリズムも小気味よく、活き活きとした妖怪たちの夜の集いが描かれます。
 上下に施された金砂子もややくすんだ感じで、夜の雰囲気を高めています。

 


 このほか、妖怪たちの影絵の版画や、幽霊に驚く人々の小品などで、彼の豊かな想像力とその巧みな創造力を堪能できます。

 


第6章 祈る 仏と神仙、先人への尊祟

 

展示風景
神妙な神仙と山水画の世界へ。

 最後を飾るのは、これまでの洒脱でアイロニーあふれる画風から一転、幽妙な神仙画たち。

 

 ゴールドマンが最初に魅せられた作品をはじめ、暁斎は多くの達磨図を描いています。

 それは、狩野派の立役者、元信や長谷川等伯から白隠たちの系譜に連なるもの。

 

 また、雨中の山水図や精妙な観音など、静謐で聖なる世界をも表現しています。

 

 

 
河鍋暁斎 《半身達磨》 明治18(1885)年 紙本淡彩
イスラエル・ゴールドマン コレクション
Israel Goldman Collection, London
Photo:立命館大学アート・リサーチセンター

 ロンドンのオークションでわずか55ポンドで入手した、この作品に導かれて、うらやましいほどのコレクションとなりました。

 

 こうした神や仏の世界を表した作品たちは、まさに「絵師・暁斎」の真価であり、改めてこの「画狂」の幅広く、奥深い才能を感じさせるのです。

 

 

 動乱の世を見つめ、自然を見つめ、異界を見つめ、その中で貪欲に、軽やかに自身の画を求め続けた河鍋暁斎。

 

 執念ともいうべき画への熱意とそれに見合う底知れぬ才能は、聖も俗も、貴も賤も、異界も現実も、あらゆる境界を自在に往来して、魅力的な作品を遺しました。

 

 その魅力は、その美しさも醜さもひっくるめ、愚かさもみじめさもひっくるめ、喜びも悲しみもひっくるめて、クールに見つめながら愛した、人間そのものの肯定からくるのだと思います。

 

暁斎を知るための決定版ともいえる展覧会。
まもなく終了です。ぜひ!

 

 

 

 

 

(penguin)




『ゴールドマンコレクション これぞ暁斎! 世界が認めたその画力』

 

開催期間:~4月16日(日)
会場 :Bunkamura ザ・ミュージアム (渋谷)
    〒150-8507 東京都渋谷区道玄坂 2-24-1
アクセス :JR「渋谷駅」(ハチ公口)より徒歩7分
       東京メトロ銀座線、京王・井の頭線「渋谷駅」より徒歩7分
       東急・東横線、東急田園都市線、東京メトロ・半蔵門線、
       東京メトロ・副都心線「渋谷駅」(3a出口)より徒歩5分
     * お車の場合、専用駐車場はありません。東急本店駐車場(有料)をご利用ください
開館時間 :10:00~19:00
       (毎週金・土曜日は21:00まで、入館は閉館の30分前まで)
休館日 : 無休
入館料 : 一般 1,400円(1,200円)/高校生・大学生 1,000円(800円)/
       小・中学生 700円(500円)
     *( )内は20名以上の団体料金(電話での予約必要 Tel.03-3477-9413(Bunkamura))
     * 学生券をお求めの場合は学生証の提示が必要
     *障害者手帳の提示で割引料金あり。詳細は窓口でお尋ねください

お問い合わせ :Tel.03-5777-8600(ハローダイヤル)
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開館50周年記念特別展 山種コレクション名品選Ⅳ

 

東西検証第二弾。東京画壇の名作で日本近代絵画を概観

 

 

 

 山種美術館50周年を記念するシリーズ最後の展覧会は、東西対決の東京編です。

 

 江戸から明治へ、さまざまな価値観が転換していく近代にあって、日本画の新しい在り方と革新を求めて、模索と挑戦を続けた画家たちの軌跡を東京の画壇から観ていきます。

 

 美術館創設者の山﨑種二は、戦前・戦後を通じて、日本画家たちを支援し続けました。

 

 こうした画家との直接の交流により、彼の依頼によって揮毫されたものなど、作品にはさまざまなエピソードが残されています。

 

 この由来も含め、近代から戦後まで、日本画壇を牽引した代表的な画家たちの名品約50点、切手や教科書の掲載などで観たことのある作品たちが勢揃い!
 山種美術館の底力を実感できる、記念特別展最後を飾るに相応しい内容となっています。

 


第1章 近代の東京画壇

 

展示風景
代表的な作品が並ぶ。

 西洋化の進む明治時代、新たな日本画の地位確立を求めた、アーネスト・フェノロサ岡倉天心による指導のもと、横山大観、下村観山、菱田春草らが古典研究を重視しながらも、時代にふさわしい画題や表現を追求していきました。

 

 1889年には東京美術学校が開設され、初代校長として岡倉が就任します。その後、彼らは日本美術院を新たに創設、小林古径や速水御舟らが次世代を担う個性を発揮します。

 

 また、官設の展覧会として開設された文展(大正期には帝展、昭和に改めて新文展)からは、川合玉堂や鏑木清方、松岡映丘などが現れます。

 

 明治から昭和初期の東京の日本画壇を支えた画家たちの代表作品が一同に並びます。

 

 

 入り口で迎えてくれるのは、松岡映丘《春光春衣》

松岡映丘 《春光春衣》 1917(大正6)年 絹本・彩色 山種美術館

 この季節に相応しい、あでやかな作品です。
 縦長の画面上部に十二単衣の姫君を、下部に松と桜を配し、色彩のバランスが心地よく、観ているものも華やいだ気分になります。

 

 次いで並ぶのは橋本雅邦《日本武尊像》

 こうした日本の神話に基づく作品は、天皇をいただく、新しい日本の政治体制の中、日本の歴史の正当と愛国意識を醸成する意図に沿って、当時の画家たちの多くがモティーフとしました。

 中でもこの作品は、そのたたずまいの健康的な神聖さで高く評価された、雅邦の代表作のひとつです。

 

 

横山大観 《心神》 1952(昭和27)年 絹本・墨画淡彩 山種美術館

 この作品は、「美術館を創って万人に公開するなら」という条件で、大観が山﨑種二に購入を許したものだそうです。

 

 彼のトレードマークともいえる富士が雲間から勇壮な姿を表して、墨画ながら、しっかりと彩色された一枚です。

 

 もう1点の《叭呵鳥》は、その目つきの悪い(笑)表情がキュートです。

 

 

菱田春草 《月四題》のうち「秋」 1909-10(明治42-43)年頃
絹本・墨画淡彩 山種美術館
展示風景
 《月四題》から「秋」と「春」が並びます

 菱田春草《月四題》から春と秋の2点が。

 胡粉や金泥を上品に使用し、凛としたたたずまいです。願わくば4点並ぶところが観たいもの。

 

 

下村観山 《老松白藤》 1921(大正10)年 紙本金地・彩色 山種美術館

 金地に、上下を大胆に切った松と絡む白藤がリズミカルに描かれた屏風は、琳派を彷彿とさせる装飾性を持っています。

 

 

川合玉堂《早乙女》1945(昭和20)年 絹本・彩色 山種美術館

 川合玉堂は、彼らしい農村の穏やかな風景を描いた《早乙女》
 俯瞰の視点で、大きく田んぼの一区画を切り取った構図は、これまでにない新しい試みです。

 

 

 そして、小林古径《清姫》からは4点。

小林古径 《清姫》のうち「日高川」 1930(昭和5)年 紙本・彩色 山種美術館

 このたび修復されて、画面も活き活きとした色彩と輝きを取り戻し、久しぶりのお目見えです。

 

展示風景
小林古径 《清姫》右から
「寝所」「日高川」「鐘巻」「入相桜」。

 ぜひ近寄って観てください!

 

 愛しい安珍を追う清姫の髪は黄金色のオーラを纏っています。

 

 思いの強さから龍に変じた彼女が、彼の隠れる鐘に巻きついた、その空気にも金泥が施され、迫力の画面になっていることが確認できます。

 

 平面性と細やかな装飾性とがみごとに合致した、個人的にはいちおしの作品です。

 

 

 このほか、あまり知られていませんが、渡辺省亭《葡萄》《月に千鳥》が、精緻と大胆を兼ね合わせた巧みな筆で印象的です。


 
展示風景
渡辺省亭 《葡萄》 19-20世紀(明治-大正時代)
絹本・彩色 山種美術館
展示風景
渡辺省亭 《月に千鳥》 20世紀(明治-大正時代)
絹本・彩色 山種美術館

 

 また、速水御舟《昆虫二題》の2点も、西洋画も研修し、自身の表現に活かしていったという彼の独特の画風を感じさせる秀作。

 

 

展示風景
《伊勢物語(合作)》から中村岳陵 「春日の里」
1928(昭和3)年頃 紙本・彩色 山種美術館

 中村岳陵や松岡映丘らの合作《伊勢物語》では、美しい書とともに、かわいらしい絵物語を楽しめます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

展示風景
落合朗風 《エバ》 1919(大正8)年 紙本・彩色
山種美術館

 落合朗風《エバ》は、まるでフランス西洋画のルソーの作品のよう・・・。

 

 鮮やかな植物の繁茂と異国風の女性像で、戦前の日本画とは思えない、不思議な世界を創っています。

 

 

 

 

 

 

第2章 戦後の東京画壇

 

 戦後の日本画壇の復興は、終戦翌年には復活した日展から始まります。

 

 ここからは、「日展三山」といわれた、東山魁夷、杉山寧、髙山辰雄をはじめとし、抽象的な表現や油彩のような絵具の厚み、内面的な主題など、それまでの日本画とは異なる表現や技法を試みて、未来への日本画の在り方を模索していきました。

 

 同時に復活した院展からは、安田靫彦や前田青邨らが、従来の日本画の格調を引き継ぎつつも、時代に合った表現を創りあげていきます。

 

 それらは、奥村土牛の大胆な構図と色彩や、小倉遊亀のそぎ落とした中に対象を印象的に配する画風を生み、平山郁夫や守屋多々志らの独自性へと広がります。

 

 日展と院展の画家たちを中心に、戦後の東京画壇の軌跡と平成へと連なる変化を作品で確認します。

 

奥村土牛 《鳴門》 1959(昭和34)年 紙本・彩色 山種美術館

 モノトーンに押さえられた画面が、鳴門海峡の渦潮の勢いをあますところなく表します。

 

 よく見ると、微妙に金泥が施されており、その微妙なニュアンスが、画面に独特の深さをもたらしていることが分かります。

 

 大胆で勢いのある作品の印象が強い土牛ですが、その画面には緻密な工夫がなされているのです。

 

東山魁夷 《年暮る》 1968(昭和43)年 紙本・彩色 山種美術館

 雪に暮れる京の年の瀬が描かれます。
 除夜の鐘の音が聞こえてきそうなしんしんとした年末の風情は、魁夷が得意とした青の階層で、みごとに表されています。

 

 京都の四季を表す4点が一挙展示されています。京都が変わっていくことを憂いた川端康成の言葉に動かされて描かれたもの。

 春(《春静》)と冬(《年暮る》)の作品が山種美術館所蔵となった際に、四季連作になる

よう、と初夏(《緑潤う》)と秋(《秋彩》)の作品が揮毫されたのだとか。

 

 

 大観らに学び、戦後の日本画壇を引っ張った安田靫彦は、神話や歴史から題材を取った作品を得意としました。

 

 その時代の文献や、遺されている遺物を徹底的に研究し、それらを実際の画面に反映させる彼の作品には、物語と史実とがみごとに昇華しています。

 

安田靫彦 《出陣の舞》 1970(昭和45)年 紙本・彩色 山種美術館

 戦に赴く信長が、好んだ「幸若舞」を舞うシーン。

 背後に描かれる兜は実際にこの時代に流行した意匠、着用の小袖は、当時の武将が好んだデザインになっています。

 

 

 このほか、実際の死体解剖の風景を、独自のたらしこみや淡い淡彩で描いた前田青邨《腑分》
 激しい波しぶきの音が響きそうな加山又造の迫力の水墨《波濤》
 想像で描かれながらもいかにもそうであったかのように思わせる、迫真の肖像を生み出した片岡珠子《鳥文斎栄之》など、

 多様化していく日本画の表現と画法を楽しめます。

 

 

展示風景
右:山口蓬春 《新宮殿杉戸楓4分の1下絵》 1967(昭和42)年
左:橋本明治 《朝陽桜》 1970(昭和45)年
ともに紙本・彩色 山種美術館

 また、皇居正殿の東廊下の杉戸のために描かれた作品に感銘を受けた種二が、安田靫彦、山口蓬春、橋本明治、東山魁夷、杉山寧に同種作品の揮毫を依頼したという中から、山口と橋本、杉山の作品も展示されます。

 

 いずれも鮮やかな色彩と金泥、金箔などを使用した豪華で装飾的な作品。

 

 日本美術が持つ、「空間を飾る」用途と、「画」としての存在が画面を埋める装飾性とも併存しているのを楽しめます。

 

 

 

 さまざまな技法の工夫とテーマの開発で新たな日本画の道を切り拓いてきた過程を名作で追う東京編。

 

 先の京都編と合わせたとき、日本画壇が切磋琢磨してきた歴史に、あなたは何を見つけるでしょうか。

 


【おまけ】

カフェで楽しめるカラフルな和菓子たち♪

 

 エントランスのカフェでは、いつも展示作品のモティーフを活かした和菓子が楽しめます。

 

 どの作品のどこが使われているのか、そのお味とともに楽しんでみては?

 

 


(penguin)




【開館50周年記念特別展】山種コレクション名作選Ⅳ
日本画の教科書 東京編 -大観、春草から土牛、魁夷へ-

 

開催期間:~4月16日(日)

会場 :山種美術館 (恵比寿)
    〒150-0012 東京都渋谷区広尾 3-12-36

アクセス :JR恵比寿駅西口・東京メトロ日比谷線恵比寿駅2番出口より徒歩約10分
      恵比寿駅西口より日赤医療センター前行都バス(学06番)、「広尾高校前」下車、徒歩1分
      渋谷駅東口ターミナル54番乗り場より日赤医療センター前行都バス(学03番)、
       「東4丁目」下車、徒歩2分

開館時間 :10:00~17:00 入館は16:30まで

休館日 :毎週月曜日

入館料 : 一般 1,200円(1,000円)/大高生 900円(800円)
     *( )内は20名以上の団体料金
     *障がい者手帳、被爆者健康手帳の提示者および同伴者1名の料金は無料
     *中学生以下無料
     *きもの割引 会期中きものでご来館の方は団体料金になります
     *リピーター割引 使用済み入場券(有料)のご提示で会期中の入館料が
      団体料金になります(1枚につき1回限り有効)

お問い合わせ :Tel.03-5777-8600(ハローダイヤル)

公式ホームページはこちら
 

 

 

『 【開館50周年記念特別展】山種コレクション名作選Ⅳ
日本画の教科書 東京編 -大観、春草から土牛、魁夷へ-

招待券を10名様へ!!(お一人様一枚)

応募多数の場合は抽選の上、
当選は発送をもって代えさせていただきます。


《申込締め切り 4月5日(水)》

お申し込みは、ticket@art-a-school.info まで 手紙

!!希望展覧会チケット名、お名前、送付先のご住所を忘れずに!!

美術ACADEMYSCHOOL チケットプレゼント係
〒102-0083 千代田区麹町6-2-6 ユニ麹町ビル4F
電話03-4226-3009
050-3488-8835

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明治に花咲いた、名人の精緻に酔う

 

 

 古代エジプトを起源とし、中近東で技法が確立して、その後世界に広がった七宝。

 

 日本にも、シルクロードから中国を経て渡ってきました。
 最古のものは奈良時代にさかのぼり、戦国の桃山時代に日本でも造られるようになったといいます。

 

 その後、尾張で中国製品を参考に独自に開発された七宝の技は、幕末から明治にかけて飛躍的に発展しました。

 

 折しも、万博を通じてヨーロッパではジャポニスムブームが興り、日本の工芸や浮世絵が高い人気を得ていた時代。

 

 職人たち自身の研鑽はもちろん、近代化を世界にアピールし、外貨を獲得したい明治政府の輸出政策と相まって、日本の七宝は短期間で世界最高峰の技術を獲得し、黄金期を迎えます。

 

 そんな時代に、武家の家に生まれ久邇宮朝彦親王に仕えながら、その職を辞し、知識や材料のない中、七宝制作の開発と発展に注力し、国内外の博覧会で成功をおさめ、有線七宝で世界にその名を馳せたのが、京都の七宝家・並河靖之でした。

 

 有線七宝とは、リボン状の薄い金属線で模様の区切りをつけ(植線)、その中に釉薬を入れて焼きつける技法。この金属線が、繊細な図柄を引き立たせます。

 

 手間も時間もかかるこの手法を、素人から始めた並河が、どのように習得し、高めていったのかは、いまだ不明な点が多いそうです。

 

 それとともに、並河が開発したのが、「黒色透明釉薬」でした。
 鮮やかな色彩と美しいグラデーションを持つ彼の作品は、釉薬の研究にも並々ならぬ情熱を持っていたことをうかがわせます。

 そうした中、それまでの七宝には存在していなかった透明感のある艶やかな黒色を生み出したことで、作品はよりその文様や色彩を浮かび上がらせせていきます。

 

 一方、金属線を使用しない技法で同時期に名を上げたのが東京の濤川惣助でした。

 「有線の並河、無線の濤川」は、ともにその才能で人気を二分し、「西の並河、東の濤川」として称されました。

 

 

展示風景
アール・デコの邸宅の展示空間との
競演もステキ。

 この有線七宝の並河靖之の没後90年を記念して、初期から晩年までの作品を一堂に観られる、国内初めての展覧会が、東京都庭園美術館で開催中です。

 

 主に輸出用として制作された明治期の精緻な七宝作品は、国内に残っているものはそれほど多くありません。

 

 ヴィクトリア&アルバート博物館からの里帰り作品も含み、下図の数々とともに国内の主要な作品が集うこの展覧会、今後またいつ出逢えるか分からない貴重な機会です。

 

 学生時代に彼の作品に魅せられて、この道に進み、念願の個展を開催できたという、学芸員さんの思入れの強い展示会場は、作品を置く台座の色から照明まで、こだわりの空間となっています。

 

 その植線の技、色彩の妙は驚嘆の数々、単眼鏡をお持ちの方はぜひご持参ください。
 美術館でも希望者には単眼鏡を貸し出してくれます(数に限りがあります)。

 

 

本館会場


 ここではまず、並河の作品の中でも特に勝れたものを堪能、ハイライトです。

 

展示風景
並河靖之 《鳳凰文食籠》 並河靖之七宝記念館蔵


 迎えてくれるのは、現存では最も初期の作品といわれる《鳳凰文食籠》

 

 志那製七宝を模した、光沢がなく、やや濁った色彩の釉薬が使われ、モチーフも古典的な図柄です。

 

 しかし、蓋の円形の中におさめられた鳳凰の造形、その色合わせなどは、すでに彼のセンスを物語ります。

 

 ここから、透明釉薬を使用するようになり、色彩、艶ともに輝く作品へと技術が向上していきました。

 

 《舞楽図花活》などでその過渡期を確認できます。

 

 図案も並河のトレードマークともいえる蝶や花々も自在に表れてきます。

 

展示風景
並河靖之 《桜蝶図平皿》 京都国立近代美術館
展示風景
並河工場 下図「桜蝶文皿」
並河靖之七宝記念館蔵

 《桜蝶図平皿》(↑)

 壺や花瓶が多い中で、珍しい平皿の一作。こちらは、図案とともに。

 ぜひ裏側の意匠も確認してください!みごとな植線による文様が施されています。

 

 

並河靖之 《桜牡丹菊蝶文小花瓶》 並河靖之七宝記念館蔵

 明るい緑地にあでやかに咲き誇る牡丹。
 写真だと大きく見えますが、手の中におさまるかわいい小さなサイズです。

 

 

並河靖之 《菊唐草文細首小花瓶》 並河靖之七宝記念館蔵

 こちらは「商品」として複数制作されたと思われる小花瓶。
 ターコイズブルーの地に上下のオレンジの配色が効いています。

 

 

展示風景
並河靖之 《鳳凰草花図飾壺》 ヴィクトリア&アルバート博物館蔵

 《鳳凰草花図飾壺》

 

 ヴィクトリア&アルバート博物館からの一対。

 

 植線に金銀を使い分け、側面の黒色の唐草文様部分にはこれも並河が創始した茶金石が用いられ、鉱石のキラキラとした耀きも持ち、輸出用工芸品らしい、意匠に富んだ豪華な作品です。

 

 

 

 

 


 そして、彼の特徴のひとつ、黒色透明釉薬の精華の品々を。

 

展示風景
並河靖之 《龍文瓢形花瓶》 ギャルリー・グリシーヌ蔵

 

 《龍文瓢形花瓶》(→)

 

 艶やかな黒に浮かび上がる龍の顔面の微妙なグラデーションと、さまざまな釉薬で斑に仕上げられた鱗の細やかなこだわりに注目です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

展示風景
並河靖之 《菊唐草文花瓶》 東京国立博物館蔵

 

 (←)《菊唐草文花瓶》

 

 シカゴ・コロンブス博覧会に出品されたものだそうです。

 さまざまな菊の描法、左右対称の配置が、伝統的なモチーフながら、どこかモダンさを持ち、並ぶと眼に心地よい品格のある一対です。

 

 

 

 

 

 

展示風景
並河靖之 《蝶に花丸唐草文飾壺》
京都国立近代美術館蔵

 

 《蝶に花丸唐草文飾壺》(→)

 

 つまみの部分に蓮の花をあしらった、愛らしい小壺。
 金彩の縁取りと、上部と下部に配される茶色地のモチーフの繰り返しが、胴部分で華やかに舞う蝶と唐草を引き締めて、バランスのよい作品です。

 

 

 

 

 2Fの踊り場で、いまひとりのナミカワ、濤川惣助や同時代の他の七宝家の作品で、違いを確認した後、新館会場へ。

 

 

 

 


新館会場

 

 こちらでは、並河の工場で作成、使用されていた下図とともに、ゆるやかな時系列で、彼の創作の変遷を目で確認していきます。


 学芸員さんを虜にしたという作品はこちら(↓)。

 

並河靖之 《藤草花文花瓶》 並河靖之七宝記念館蔵
並河靖之 《藤草花文花瓶》(部分)並河靖之七宝記念館蔵

 白と紫の藤の花が、リズミカルに配置され、下部にはたんぽぽの黄色がアクセントになっています。

 黒地に見えますが、実は深い瑠璃色です。
 いろいろな方向から試してください!ふと青い光を放つことを確認できます。

 

 

並河靖之 《菊紋付蝶松唐草模様花瓶》 一対 泉涌寺蔵
並河靖之 《菊紋付蝶松唐草模様花瓶》一対
(部分)泉涌寺

 下図の存在から、注文によって制作されたと分かる一対の壺は、象嵌された菊花文から天皇家由来。
 昭和天皇の御遺物として、平成に入ってから下賜されたものだそうです。

 

 蝶や唐草には、茶金石が用いられ、植線は金銀という豪華で賑やかな作品です。

 蝶はその6本の脚まで再現!じっくり観てください。

 

 

京都並河図案部 七宝下図「桜花蝶文皿」 並河靖之七宝記念館蔵

 先の《桜蝶文皿》と色違いの下図。
 こちらも完成品を観てみたかったところ。

 

 

 数々の万博や国内の内国勧業博覧会などで受賞し、名実ともに評価を得た並河ですが、一方で繰り返される意匠への工夫を指摘され、彼自身も「文様を超える意匠」の模索を続けます。

 

 やがて彼の作品は、その文様が、「デザイン」から「絵画的なるもの」へと変化を見せていきます。

 

 文様を全体に散らせるのではなく、器全体をひとつの“画面”とし、一幅の絵画のように余白を持たせた作品たちは、有線を意識させず、そのものがひとつの「世界」になっているような、幽妙なたたずまいを獲得しています。

 

並河靖之 《菊御紋章藤文大花瓶》 並河靖之七宝記念館蔵
並河靖之 《菊御紋章藤文大花瓶》(部分)
並河靖之七宝記念館

 鮮やかな青に、薄紫の藤が咲き誇ります。
 花弁のグラデーションや葉の細やかな釉薬の工夫が、より写実性を高めています。

 

 はめ込まれた菊花文が、まるで月のようにも見えて…。
 植線もさらに細くなり、その技術にも驚きです。

 

 

展示風景
並河靖之 《蝶に竹花図四方花瓶》
清水三年坂美術館蔵

 

 (←)めずらしい四方の形の《蝶に竹花図四方花瓶》も、一枚の掛け軸を思わせる構図になっています。

 

 漆黒に浮かび上がる風景は、幻想的ですらあります。

 

 

 

 

 

 

 

 

並河工房 七宝下図「舞楽図花瓶」 並河靖之七宝記念館

 「舞楽図」は周りの装飾を排し、シンプルながら、印象的な人物像が、その動きとともに軽やかに描かれています。

 

 

 このほか、おそらくは人気と注文にもよったのだと思われる、小物たちも。

 

展示風景
煙草入れ、香水瓶も海外好みの精緻な花鳥画が。
いまこそ、ちょっと持ってみたいかも・・・。
展示風景
並河靖之 《紅葉桔梗鳥文小屏風》 並河康之七宝記念館蔵
両手に納まるミニサイズの屏風はほしい!

 

 煙草入れや香水瓶、名刺入れなどの実用の作品から、手のひらサイズの小屏風といった、ちょっとした観賞用のものまで、当時の人気ぶりをうかがわせます。

 

 小屏風のデザインは、現在ならスマホケースとしてもステキかも…と(笑)。

 こちらの上下にあしらわれた円形の紋様はぜひ近寄ってみて。3匹の蝶が形作っています。

 

 

 やがて、海外でのブームが去り、ほぼ90%をその輸出に頼っていた七宝工芸は、それゆえの華美な装飾に対する拒否感が生まれた時代の空気とも重なって、衰退していきます。

 

 並河の工場も縮小を余儀なくされ、大正12(1923)年、一代で閉鎖されることになります。

 

 

展示風景
ますます空間を活かした風景画が
そのまま器になったような作品に・・・。

 晩年には、植線にはこだわり続けながらも、墨のボカシを入れたり、筆さばきを思わせる強弱を加えたりと、京都の風景などをモチーフにして、ますます絵画的な作品に傾倒していきました。

 

 金閣寺や五重塔、春日大社などが淡いグラデーションの中に浮かび上がる作品たちは、七宝であることも、その植線の技術も超えて、「並河靖之」という“ひとつのジャンル”になっている、そんな印象すら与える、強固な世界を創っていました。

 


 ゼロから始めて、独自の技法を生み出し、時代を創りながら、一代で静かに消えて行った、このたぐいまれな才は、いままた改めて、その技と美でわたしたちを魅了します。

 

 それは、伝統的な意匠を用いながらも、そのデザインと配色で、新しい七宝の世界を切り拓いたその革新性をいまも感じるからかもしれません。

 

 まもなく終了。

 100年も前のものとは思えない、鮮やかさと精緻さを会場で感じてください!

 

 

(penguin)



『並河靖之七宝展 明治七宝の誘惑 ―透明な黒の感性』
 
開催期間 :~4月9日(日)
会場 東京都庭園美術館(目黒)
    〒108-0071 東京都港区白金台 5-21-9
アクセス :JR山手線「目黒駅」東口、東急目黒線「目黒駅」正面口より徒歩7分
      都営三田線・東京メトロ南北線「白金台駅」1番出口より徒歩6分
開館時間 :10:00~18:00
     ※3/24、3/25、3/26、4/1、4/2、4/7、4/8、4/9は夜間開館20:00
      ※入館は閉館の30分前まで
休館日 :3/22
入館料 :一般 1,100円(800円)/大学生(専修・各種専門学校含む) 880円(700円)/
     中・高校生・65歳以上 550円(440円)
     *( )内は20名以上の団体料金
      *小学生以下および都内在住在学の中学生は無料
      *身体障害者手帳・愛の手帳・養育手帳・精神障害者保健福祉手帳・被爆者健康手帳を
      お持ちの方とその介護者1名は無料
     ※ドレスコード割引:蝶のモチーフを身に着けて来館の方は100円引き

 

お問い合わせ :Tel.03-5777-8600(ハローダイヤル)
 

美術館サイトはこちら





 
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1970年代から現代へ。笑いと批評のパワーを体感

 

 

 

 東京ステーションギャラリーで現在開催中の『パロディ、二重の声』展がおもしろいです!


 「パロディ」、本家に依拠し、それをあからさまに示した上で、あくまでも自立した表現としてメッセージを発するこの表現手法。

 

 それは、「模倣」「複製」「引用」「転用」「盗用」「オマージュ」「翻案」などと、どこが同じで、どこが異なっているのか?
 わたしたちはあまりにも無防備に、無自覚に使い、なんとなくわかった気で受け止めているのでは?

 

 そんな問いかけとともに、「パロディ」が空前のブームとなった1970年代の視覚文化から、その機知とパワーに迫る、挑戦的かつ刺激的な展覧会です。

 

 世界的な反抗と闘争の年代であった60年代から、そのひとつの達成と挫折を経て、時代は醒めた感覚を持ち、軽やかに皮肉な笑いを求めた70年代へ。

 そうした社会的な空気の中、アートをはじめ、さまざまなメディアにおいて、「パロディ」が使用されていきます。

 

 特に70年代、雑誌や漫画によって「パロディ」は、その言葉とともに普及し、一般投稿者も巻き込んで、文化の発信地でもあったパルコでは、「日本パロディ展」なる展覧会も開催されるほどの大きな社会現象になりました。

 

 本展では、その「パロディ」のブーム前、最盛期、そしてそのブームが起こした問題を、アート作品に限らず、パフォーマンスやテレビ番組、マンガや雑誌から広告まで、幅広いジャンルの表象から検証します。

 

 だからサブタイトルにもあるように、「前後左右」。
 時間軸とともに、表現の、さらにはそれらが持つさまざまな意味と形を含み、立体的に見せているのが特徴です。

 

 多くのテーマと思索を持つ濃くも楽しい内容の一部を、章立てに沿ってご紹介~。

 


プロローグ(特別出品)

 

展示風景
どこかで見たようなスタイルの「モナ・リザ」風肖像画がズラリ
誰のスタイルか、誰を描いているのかだけでも時を忘れそう

 入り口に並ぶのは、レオナルドの《モナ・リザ》のポーズを取った数々の肖像画。

 

 ボッティチェリのヴィーナス風だったり、フェルメールの真珠の耳飾りの少女風だったり、クリムトのユディト風だったり…。ほかにもレンブラント、ルノワール、ピカソ、藤島武二、黒田清輝、果ては、ヒラリー・クリントンや、アウンサンスーチー、アンネ・フランクまで…!

 

 1978年の「日本パロディ展」でパルコ賞を受賞した経歴を持つ、山縣旭の近年作。

 

今回が美術館での初展示という、「歴史上100人の巨匠が描くモナ・リザ」シリーズからの迫力の空間のお出迎えは、70年代ではないながら、そのパロディ(パスティーシュ:文体模写)性といい、インパクトといい、気の効いた特別出品です。(これを機に?「レオ・ヤマガタ」と名を変えたとか:笑)

 

 

展示風景
まずは、この展覧会での「パロディ」の定義から

 今回の展覧会での「パロディ」の定義を「用語辞典」に見立て(これもパロディ風味?)た一覧を確認して、いよいよ本編へ。

 

 

展示風景
たてかん:鶴見俊輔

 

 

 

 

 

 

 

 会場のあちこちに配された「たてかん(立て看板)」には、戦後日本の画一化する社会構造への警鐘を鳴らした鶴見俊輔をはじめとした、文化人やアーティストたちの「パロディ」についての定義やコメントが読めるようになっています。

 

 各章に付された副題は、一流レストランのメニューについた料理名のパロディ。絶妙な「お味」の特徴を捉えています。

 


第一部 国産パロディの流行前夜 ~季節のポップアートのアイロニー風味~

 

展示風景
たてかん:赤瀬川原平

 

 60年代中盤から、日本のアーティストたちの中に、「パロディ」を予兆する作品が生まれてきます。

 

 モダンから、ポストモダンへ、前世代への批判や反抗の意味合いの強い、しかしそこに皮肉な笑いの要素を持つアート作品で、「パロディ」ブームの夜明けを感じます。

 

 

 

 

 

 

篠原有司男《Coca-Cola Plan》1966年、個人蔵

 「イミテーション・アート」という発想にもとづいて、雑誌で見たロバート・ラウシェンバーグの作品を“模作”、タイトルもそのままで自身の作品とした、驚きの作品。

 

 ラウシェンバーグ本人の許可を得て、量産されていきますが、そこには、ポップ・アートへの賛美とともに、社会もアートもアメリカからの輸入により成立している日本の現状に対すアンヴィヴァレントな屈折が見られます。

 

 「コカ・コーラ」のカナ表記のある瓶を使用した立体作品とともに、その皮肉を感じてください。

 

 

横尾忠則《POPでTOPを!》1964年頃、作家蔵

 亀倉雄策のあまりにも有名な62年のオリンピックポスターを、モノクロの作品にし、雑誌掲載した時の版下。

 

 スターターたちは、ピカソ、ルオー、ビュッフェ、リキテンスタイン風に描きかえられ、トップに出るリキテンスタインのセリフが効いた、諧謔に富む、横尾らしい作品です。

 

 前世代への反発と、時代への軽やかで痛烈な批判、そしてこちらにもポップ・アートへの自身の憧憬とがないまぜになり、みごとに昇華、ポスターに比べてはるかに小さなサイズながら、その力は元の作品を凌駕しています。

 

 

吉村益信《豚;Pig Lib》1994年、大分市美術館蔵

 本物の豚を使用して作成されたオブジェ(?)は、フランスのハムの缶詰のポスター広告を立体化したもの。

 

 過激で放埓な活動で知られたネオ・ダダのメンバー吉村の作品は、ユーモアをさらに反転させて、既存のアートそのものに対するカウンター・パンチになっています。

 タイトルでは、当時盛り上がっていた社会運動すらも茶化します。

 

 

展示風景
ブリキ版の富士とともに立石の作品が並ぶ

 さらに見どころとして、タイガー立石《八紘一宇の富士》

 

 64年に「第一回観光芸術展」で一斗缶を解体して作成したという3.76mの富士山(実際の約1/1000)の書き割りが再現されています。

 

 タイトルの「八紘一宇」には、彼の本名絋一の由来も含まれる、ダブルミーニングなもの。

 

 岡本太郎によって批判された日本一の山がまとう国粋主義的な意味合いとともに、保守性や現代アートさえも批判します。

 

 

展示風景
八木一夫 《ニュートンの耳》 1969 個人蔵

 学芸員さんいちおしのひとつは、八木一夫《ニュートンの耳》

 

 現代美術に比して、低く見られがちな陶芸の立場から、当時の前衛美術の最先端であった関根伸夫の《位相大地》、三木富雄の《耳》、堀内正和の《エヴァからもらった大きなリンゴ》の作品を、自身の作品に取り込み、ひとつの形にしたもの。

 

 出会った造形に即反応し、自在に自作へ使いこなした彼こそを“稀代のパロディスト”として位置づけています。

 


 このほか、

 存在のしかたそのものが、まさにパロディともいえる、ハイレッド・センター「ミキサー計画」の招待状や、メンバーのひとり、赤瀬川原平の貴重な作品、

 既存の名画を使用して、「描くこと」そのものの意味と、「名画」を作りだす制度そのものへの問題を提起した鈴木慶則のタブロー、

 虹色のグラデーションで、渓斎英泉の春画やゴーギャンの傑作を変容させて、自身の絵画解釈を視覚化した靉嘔

 グラフィック・デザイナー木村恒久の美しくもユーモラスでラディカルなフォトモンタージュなど、

 敢えて定義を広くとった「パロディ」を観られます。

 

展示風景
靉嘔から鈴木慶則の作品が並ぶ
展示風景
木村恒久の作品はたてかんとともに

 


第二部 肥大するパロディ ~複製メディアの噴出に読者参加を添えて~

 

展示風景
たてかん:赤塚不二夫

 

 高度成長期、複製技術の飛躍的な進化と普及、雑誌の興隆により、消費活動と情報産業の肥大化した時代、それは、享受するだけの消費者の存在から、発信する消費者の台頭ももたらします。

 

 その時流に乗って、爆発的な人気を博したのが、雑誌『ビックリハウス』でした。
 読者投稿を主軸にした企画により、当時の若者たちの支持を得て、ここに「パロディ」がその名とともに大衆化します。

 

 パルコと組んだ展覧会まで開催されるまでになる一大ブームはしかし、その濫発によって内輪受けを加速させ、手軽さから希薄化・形骸化して、「パロディ」が本来持っていたはずの攻撃性や訴求力が失われていく方向にも作用します。

 

 率先して「パロディ」的なるものを生み出してきた赤瀬川をして「肥満したパロディ」と言わしめるに至った、その盛り上がりと衰退の両面を見ていきます。

 

『ビックリハウス』創刊号、1974年
展示風景
一堂に並んだ全号数は圧巻

 こちらは雑誌『ビックリハウス』の創刊号。
 最終号までが並ぶコーナーは、当時の活性ぶりを伝えます。

 

 

赤瀬川原平《櫻画報 1971年3月19日号》より、1971年

 70年から『朝日ジャーナル』に連載が始まった赤瀬川の「野次馬画報」は、馬=桜肉にちなみ、4回目から「桜画報」と改題され、メディア・ジャックというパロディとして、過激な警察や社会風刺で、回収事件まで引き起こします。

 

 

河北秀也(AD)《独占者》、1976年、公益財団法人メトロ文化財団蔵
展示風景
いずれも「ざぶとん一枚!」といいたくなる上手さ

 広告表現でもパロディ的な手法が使われました。

 

 74年9月から制作された営団地下鉄のマナーポスターは、76年にマリリン・モンローの「帰らざる河」をモチーフにして以来、その手法が前面化したといいます。

 

 ちょうど、ポスターが広告という枠組みを超えて部屋を飾るものとして受容された時期でもあり、希望者が殺到、シリーズのうち、玉三郎を起用したものは、掲載初日にして9割近くが盗まれたのだとか。

 

 アートディレクター河北としては、あくまで手法であり、「パロディ」とは認識していなかったものの、ブームの中で、「パロディ」として受け取られたのです。

 

 

倉俣史朗《Homage to Mondrian #1》1975年/
Cappellini 2009 ©KURAMATA DESIGN OFFICE,
Special Cooperation with Cappellini Point Tokyo_Team Iwakiri Products

 モンドリアンの代表作を、キャビネットの扉としてデザインした倉俣の作品。

 

 バッグや服などに借用されることも多いミニマムな表現を、原作に忠実に、立体として表した作品は、タイトルにある通り、「オマージュ」となっています。

 

 大衆化や単なる笑いへの形骸化の一方で、対照的に感じられる「オマージュ」の形式も、ここでは「パロディ」と捉えています。

 

 

展示風景
木村直道から平田実の作品が並ぶ

 このほか、

 つげ義春の『ねじ式』をパロディにした赤瀬川の『おざ式』長谷邦夫『バカ式』、梶原一騎や水木しげるのキャラクターを使った長谷の『ゲゲゲの星』といいたコミック、

 国鉄の広告ポスターを社会問題から人びとの目を逸らすものとして批判した平田実《DISCOVER JAPAN》

 ゴッホの自画像を模写しつつ、一部をエピソードに合わせた要素に変えた木村直道の油彩など、

 多様なジャンル、さまざまな階層で「パロディ」の世界が展開しています。

 

 
 
 

 中央に据えられた台では、実際に手に取って見られる書籍や雑誌が置いてあるのも、嬉しい。

 

 

第三部 いわゆるパロディ裁判 ~剽窃と引用をめぐる判決の盛り合わせ~

 

展示風景
たてかん:小泉直樹

 

 70年代の「パロディ」氾濫の裏側では、16年もの歳月にわたって、裁判が進展していました。

 

 白川義員の写真を利用したマッド・アマノの合成写真をめぐり、その著作権と“剽窃”について争われ、最終的には和解となるものの、結果はマッド・アマノの敗訴に終わります。

 

 最後の章では、いわゆる「パロディ裁判」の経過と判決を追います。

 

 
 

 展示されているのは、係争の対象となった、白川の撮影写真とマッド・アマノの合成写真のみ。

 

 あとは、裁判の経過と判決文、それらを報道した新聞記事で構成されるこの章の展示は、美術館としては、かなり冒険的な試みかと…。

 

展示風景
裁判の経緯と判決文の展示
展示風景
当時の新聞報道

 

 ここで明らかにされるのは、日本の著作権法の枠外にあった「パロディ」という表現形式の存在。

 

 法律が初めて「パロディ」と出会うことになったこの判例は、現在に至るまで、法律と文化、その両面において、議論と研究が続いていることを認識させます。

 

 あらゆるものがデジタル化して、コピーも借用も変容も、ひいては盗用すらもより簡単にできてしまう現代に、この「パロディ」が引き起こした問題は、決して過去のものではないのです。

 

 表現の自由と著作権の保護、このテーマを改めて考えることを促して、展覧会は、70年代から現代へと回帰してくるのです。

 

 

 本来の作品の力を援用しつつ、そこに新たな表現として確立する「パロディ」。
 同位性と重なることで身にまとうインパクトという「二重の声」が持つ機知と批評の力と楽しさと危険は、70年代から現代にも変わらぬ魅力と問いかけを放ちます。

 

 さまざまな作品(表象)から「パロディ」の形とそのパワーみなぎるエキサイティングな空間を感じてください!

 

 

エピローグ

 

 出口では、重たいテーマでどんよりしないように、の配慮からか、76年から放映された伊丹十三の美術番組の映像が観られます。

 

アート・エイジェンシー・トウキョウ
『伊丹十三のアートレポート「質屋にて」』1976年

 『伊丹十三のアートレポート』と名づけられた番組は、パロディ風のストーリーやシチュエーションから、ウォーホル、クリスト、ギルバート&ジョージなど、現代アートへの理解を深める、今でも十分に見ごたえのある趣旨と内容になっています。

 

 もちろんこれも展示作品ですが、「お口直しのデザート」とでも名づけたい、お茶目なエピローグです。

 

 内容てんこ盛り。
 じっくり楽しむ時間を持って、どうぞ!

 

 

(penguin)




『パロディ、二重の声 日本の一九 七〇年代前後左右』
 
開催期間 :~4月16日(日)
会場 :東京ステーションギャラリー (丸の内)
    〒100-0005 東京都千代田区丸の内 1-9-1
アクセス :JR東京駅 丸の内北口 改札前(東京丸の内駅舎内)
開館時間 :10:00~18:00 (金曜は20:00まで)
     ※入館は閉館の30分前まで
休室日 :毎週月曜日(3/20は開館)、3/21
入館料 :一般 900円(800円)/高校・大学生 700円(600円)/
     中学生以下無料
     *( )内は20名以上の団体料金
     *障がい者手帳等持参の方は100円引き(介添者1名は無料)
 

お問い合わせ :Tel.03-3212-2485
 

美術館サイトはこちら



 

『パロディ、二重の声 日本の一九七〇年代前後左右』
招待券を10名様へ!!(お一人様一枚)


応募多数の場合は抽選の上、
当選は発送をもって代えさせていただきます。


《申込締め切り 3月24日(金)》

お申し込みは、ticket@art-a-school.info まで 手紙
!!希望展覧会チケット名、お名前、送付先のご住所を忘れずに !!

美術ACADEMYSCHOOL チケットプレゼント係

〒102-0083 千代田区麹町6-2-6 ユニ麹町ビル4F
電話03-4226- 3009
050-3488-8835

 

 

 

 

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画を生きた生涯を空間に確認する


 
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 美術界の流れに背を向けて、描くことと生きることを同位にした画家・山田正亮

 時にその言動はスキャンダラスな醜聞となって残っている彼の生涯は、ただひたすらに己の生を、「描くこと」に費やしたものでした。

 ストライプの作品で知られる彼の画業が、没後6年を迎え、初めて本格的に検証される展覧会が東京国立近代美術館で開催されています。



 
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展示風景
作品が並ぶかっこいい入り口

 孤高の中で生み出された作品は5000点を超え、その作品のすべてに克明な記録を残していたという山田が目指し、求めたものとは何だったのか。

 選りすぐりの油彩約200点と、紙作品約30点、それに50冊に登る制作ノートの初公開の構成。
 
 そこには、遺された作品の科学的な検証の結果も踏まえ、生み出された作品に迫る、画期的な個展となっています。

 会場は最新のLED照明を、作品に合わせて細やかに変化させ、色彩にこだわった彼の創作の繊細な重なりや変化がより観られるように工夫されています。

 また、時系列を基本に並べられる各部屋も、作品に合わせて展示方法をひとつひとつ変えていて、それぞれの空間がかっこよいのも魅力です。
 
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展示風景
ある部屋では年表仕立てで作品が並ぶ。
展示風景
ここでは壁一面のインスタレーション風に。
展示風景
白のトーンだけでキリリと引き締まった壁も。



1.Still Life (1948−1955)
 
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展示風景
繰り返しの中に表現の変化が見られます。

 戦後、自らの記憶の中にある静物を描き続けた山田。
 まずはキュビスムやセザンヌの影響を感じさせる「Still Life」の連作を確認します。

 繰り返し同じモティーフを構図を変えながら描き、やがてそれらが抽象化されていくさまには、早くも画と対話しながら突きつめていく彼のスタンスが垣間見られます。



 
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《Still Life no.64》 1953年 油彩・キャンバス 41×53㎝


2.Work (1956−1995)

 
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展示風景
ストライプが鮮やかに見える照明にも注目。

 そして彼のトレードマークとも言える「Work」シリーズ、さまざまな色彩のストライプの時代へ入っていきます。

 彼の画業のうち、最も長く、最も多くの作品を生み出したシリーズは、50年代をB、60年代をC、と年代で分けられて、90年代のFまで続き、制作順に番号が付せられました。



 
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《Work B.125》 1956年 油彩・キャンバス 117×91㎝
宇都宮美術館蔵
 
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《Work C.73》 1960年 油彩・キャンバス
180×68㎝ 東京国立近代美術館蔵
《Work C.77》 1960年 油彩・キャンバス
180×68㎝ 東京国立近代美術館蔵
 
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《Work C.92》1961-62年 油彩・キャンバス 117×91㎝
横浜美術館蔵
 
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《Work C.216》 1964-65年 油彩・キャンバス
162×97㎝
 
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《Work Ep.447》 1984年 水彩・紙 79×109㎝
 
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《Work F.116》 1992年 油彩・キャンバス 182×259㎝


 時代ごとに少しづつ、時に急激に変わりますが、基本的には直線を組み合わせるストライプ、ボーダー、クロス、矩形の連なりを描き続けます。

 それらに施された色彩の何と豊かなことか・・・・!

 何十何百の色が重ねられ、並べられた画面は、ぜひ近づいてじっくり観てください。
 ふるえるような色彩の重層が確認できた時、それは単なる抽象的なラインから、詩的とすら思える表情を見せてくれます。

 それぞれの部屋のセレクトとそこから醸し出される雰囲気とともに、楽しんで。
 
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展示風景
展示風景
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展示風景
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展示風景
展示風景

 グリッドを区切る線も、区切られた矩形も、微妙にトーンを変化させ、目に心地よいリズムをもたらしてくれます。

 
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展示風景
見ごたえのある制作ノートのプロムナード。

 この間にまるで時間を超える回路のように、制作ノートが壁に並ぶ通路があります。

 丁寧なデッサンやさまざまな言葉の集積は、それだけでも作品といえそうな美しさと、やや脅迫的な怖さを伴って、切なくなってきます。

 95年、「Work の系列はその円環を閉じた」として、40年続けたその制作に自ら終了を告げるそうです。




3.Color (1997−)
 
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展示風景
こちらもまた異なる展示空間で作品が映える。

 左目の手術の後、「まだやり残したことがある」と始められたのが、「Color」でした。

 モノトーンの色面の作品が並びますが、ここでもやはり、画面隅などに現れる下に塗られた色の層が、単色ではない多様なニュアンスを湛え、ミニマリスムとは異なる彼の求めた世界が感じられます。



 
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《Color no.98》 1999-年 油彩・キャンバス 65×53㎝



 「描き続けたまえ 絵画との契約である」と自らを絵画に捧げた山田正亮の真摯と狂気。

 
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山田正亮ポートレート 1956年

 画に魅せられ、描かずにはいられない、突きつめずにはいられない、苦しみと歓びに殉じた画家の、幸福で不幸な生涯。

 その相対する要素が塗りこめられた作品たちは、一見同じパターンを表しながら、豊穣な表情を持っています。

 静かに沈殿する情熱の叫び――それぞれに考え抜かれた空間とともに感じてください。


 
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東京都国立市の山田正亮のアトリエ
会場出口付近には撮影可でアトリエも再現されています。


 近年、戦後日本のアートシーンが世界で見直されている中、山田の仕事もそのひとつの視座として注目されています。

 昨年にはロンドンでも個展が開催されたこの時期に開催された本展は、これからの研究に大きな第一歩となることでしょう。

 その意味でも見逃してはもったいないです。
 今週末まで。お急ぎを!



【同時開催】

 2階のギャラリー4では「瑛九1935-1937 闇の中で「レアル」をさがす」も開催中!

  彼の評伝を著した友人で、画家でもある山田光春旧蔵の作品と資料が収蔵された、その中からのお披露目です。

 所蔵品を含めた戦後の版画作品から油彩による晩年の点描作品など、書簡や資料とともに展示される空間は、さながら“ミニ回顧展”といえる充実ぶり。

 彼の目指した「レアル(リアル)」の表現、追求し苦闘する姿を作品で実感できることでしょう。
 書簡を翻刻掲載したカタログも注目です!
 
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展示風景
フォトコラージュは今でも新鮮!
展示風景
晩年の油彩作品
 
 
(penguin)
 
 

カラーパレット 『endless 山田正亮の絵画』 カラーパレット
 
開催期間:~2月12日(日)

会場 :東京国立近代美術館 (竹橋)
    〒102-8322 東京都千代田区北の丸公園 3-1

アクセス :東京メトロ東西線「竹橋駅」b1出口、徒歩3分
     * 駐車場はありませんので公共の交通機関をご利用ください
開館時間 :10:00~17:00
       (毎週金曜日は20:00まで、入館は閉館の30分前まで)

休館日 : 月曜日

観覧料 : 一般 1,000円(800円)/大学生 500円(400円)/
     *( )内は20名以上の団体料金。高校生以下は無料(学生証をご提示ください)
     * 障害者手帳をお持ちの方とその付添者1名は無料
      (入館の際に障害者手帳をご提示ください)
     * 本展の観覧料で当日に限り同時開催の「瑛九1935-1937 闇の中で「レアル」をさがす」、
     所蔵作品展「MOMATコレクション」も観覧可能

お問い合わせ :Tel.03-5777-8600(ハローダイヤル)

美術館サイトはこちら

 
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大胆、カラフルなデザインに通底するフィンランド・スピリット


 
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 渋谷のBunkamuraザ・ミュージアムでは、フィンランド発、世界で大人気のマリメッコの展覧会が開催されています。

 ファブリックから始まり、その大胆な模様と色彩で今やバッグや小物に至るまで、ナチュラル志向の女性たちを魅了したブランド、マリメッコの魅力をその創始からたどる内容は、デザインの国フィンランドのデザイン・ミュージアムのコレクションから約50点のファブリック約60点の貴重なヴィンテージドレスを含む豊富な資料で魅せてくれます。




Introduction マリメッコとは?

 
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展示風景
大きなファブリックに迎えられる入り口
 会場に入ってまず圧倒されるのが、壁一面に吊るされるファブリックの数々。

 素朴ながら独創的な模様と色彩の氾濫は、あっという間にマリメッコの世界へと導きます。

 フィンランド語で「マリーのドレス」を意味するマリメッコは、テキスタイルを学び、広告代理店での経験を経たアルミ・ラティアにより、1951年に創業されました。

 才能あるデザイナーを集め、巧みなPR戦略により、60年代には世界的なブランドとして成長します。
 特にケネディ大統領夫人だったジャクリーンが着用したことは、アメリカから世界への有力な宣伝効果を持ちました。
 
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ジャクリーン・ケネディが購入したドレス≪ヘイルヘルマ≫ 1959年
 ファブリック≪ナスティ≫(小さな無頭釘)、1957年
 服飾・図案デザイン:ヴオッコ・ヌルメスニエミ
Design Museum / Harry Kivilinna

 デザインの元になっているのは、フィンランドの伝統的モティーフや自然。
 それらを大胆に使用することで、独特の味を持つカラフルな布地を作り出します。
 
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ファブリック≪シィールトラプータルハ≫(市民菜園)
図案デザイン:マイヤ・ロウエカリ 2009年
Siirtolapuutarha pattern designed for Marimekko by Maija Louekari in 2009

 創業者ラティアの「伝統的な家庭環境と、変化し続けるこの世界の新しい生活環境を結ぶ架け橋」という理念は、こうしたファッションの世界を超えて、ライフスタイルそのものの提案へと広がるほどに成長していくのです。


マリメッコの歩み 1951-2016

 マリメッコを支えてきたのは、多くの女性デザイナーたちでした。
 ここでは、時系列に各デザイナーの個性的で多様なデザインを原画や制作物から観ていきます。
 
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ドレス≪キヴィヤルカ≫ 1957年
ファブリック≪ピッコロ≫(ピッコロ[擬音]) 1953年
服飾・図案デザイン:ヴオッコ・ヌルメスニエミ
Design Museum Archive

 ラティアのコンセプトワークとPR戦略は非常に優れており、そのカリスマ性がマリメッコの強力な土台を形成しました。
 数々のロゴマークの提案を蹴って、現在につながるシンプルな書体を採用した過程や、さまざまな広告のスクラップブックなどからその跡をたどります。

 デザイナーとしては、初の正社員デザイナー、ヌルメスニエミをはじめとして、マリメッコでは最も有名といわれるマイヤ・イソラ(わたしたちにもおなじみ「ウニッコ」のデザイナー)、ヌルメスニエミを継いで服飾デザインを担当したアンニカ・リマラ、ウール製品に才を発揮したリーサ・スヴァントなど、それぞれが、自分を活かしながら、バラエティに富んだデザインを創作していきます。
 
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展示風景
広告写真とともにウールのドレスが並ぶ
展示風景
さまざまなデザイナーたちの競演

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ファブリック ≪ウニッコ≫(ケシの花)
図案デザイン:マイヤ・イソラ 1964年
Unikko pattern designed for Marimekko by Maija Isola in 1964

 そうした中で、ベンッティ・リンタの入社をきっかけに、ファッション・デザイナーを起用することになったマリメッコで、初めて日本人スタッフとして抱えられたのが脇阪克二でした。

 
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展示風景
脇阪克二のデザインのコーナー

 どこか和の平面性を残した彼のデザイン画とドレスは必見!



 また、創業者であるラティア亡き後を継いだマルヤ・スナの元では、二人目の日本人デザイナー石本藤雄が、特にインテリア用のファブリックで名を馳せたそうです。

 
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展示風景
石本藤雄のデザインのコーナー




 現在フィンランドで陶芸を制作してるという彼のデザインは、抽象的な文様の組み合わせで、どこかクール。脇阪とは対照的な魅力を放ちます。





 
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展示風景
ファブリックモティーフを使用したテーブルウェアも

 2000年代に入ると、レトロ・ファッションが見直され、マリメッコでも初期のデザインがさまざまに復活してきます。








デザインの芸術
 
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展示風景
植物がモティーフのシックなファブリック
展示風景
都市や森のイメージがファッションへ

 会場では「マリメッコの歩み」と合わせて紹介される、マリメッコが持つ芸術性は、モティーフの種類、そのシリーズ展開や柔軟な変容、そしてさらなる応用としての、テーブル・ウェアや子供向けの小物や靴、女性のバッグからなんと航空機のデザイン(!)まで、広がりを見せます。
 
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展示風景
子ども用の小物やスニーカーがかわいい
展示風景
おなじみ「ウニッコ」の製品たち
展示風景
こんな航空機乗ってみたい!
 
 
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ドレス、服飾デザイン:ミカ・ピーライネン 2001年
ファブリック≪マンシッカヴオレト≫(イチゴの山々)
図案デザイン:マイヤ・イソラ 1969年 Design Museum / Harry Kivilinna


 ある時は軽やかに、ある時はシックに、またある時は楽しげに、そしてユーモラスに、またはシャープに。
 
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展示風景
ひとつのモティーフがバリエーションに
展示風景
目も覚めるような色彩の組み合わせが美しい

 幾何学的な模様があり、植物をモティーフとした有機的なものがあり、ストライプがあり、ボーダーがあり、単色の色面の組み合わせあり…と、それらのファブリックとドレスが競演する空間は、多様なのに、どこか落ち着きを持った華やかな空間になっています。

 そこにこそ、フィンランドという土地に根差した自然との共生と、現代に合わせて飛翔する先進性を融合させるために、クリエイターたちの独創性とアイデアを求めたマリメッコの理念が現れるのでしょう。
 
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ドレス≪カトリッリ≫、ファブリック≪プケッティ≫(ブーケ)
服飾・図案デザイン:アンニカ・リマラ 1964年
Design Museum Archive / Photo: Seppo Saves

 出てくるときには幸せな気分になる展覧会♪
 まもなく終了です。お見逃しなく!
 
(penguin)


 
『マリメッコ展 ―デザイン、ファブリック、ライフスタイル』

 

開催期間:~2月12日(日)

会場 :Bunkamura ザ・ミュージアム (渋谷)
    〒150-8507 東京都渋谷区道玄坂 2-24-1

アクセス :JR「渋谷駅」(ハチ公口)より徒歩7分
       東京メトロ銀座線、京王・井の頭線「渋谷駅」より徒歩7分
       東急・東横線、東急田園都市線、東京メトロ・半蔵門線、
       東京メトロ・副都心線「渋谷駅」(3a出口)より徒歩5分
     * お車の場合、専用駐車場はありません。東急本店駐車場(有料)をご利用ください

開館時間 :10:00~19:00
       (毎週金・土曜日は21:00まで、入館は閉館の30分前まで)

休館日 : 無休

観覧料 : 一般 1,400円(1,200円)/高校生・大学生 1,000円(800円)/小・中学生 700円(500円)
     *( )内は20名以上の団体料金(電話での予約必要 Tel.03-3477-9413(Bunkamura))
     * 学生券をお求めの場合は学生証の提示が必要
     *障害者手帳の提示で割引料金あり。詳細は窓口でお尋ねください

お問い合わせ :Tel.03-5777-8600(ハローダイヤル)

公式サイトはこちら
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