青山1丁目の出来事(東京)

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弊社は音響コンサルタント会社として運営していますが、実はその中にはスタジアム設計も含まれています。
2002年日韓共催W杯のときには決勝の舞台となった日産スタジアム。
あの設計も弊社が行ったのですよキラキラ

スタジアムを設計するにあたり、我々は1998年に当時の国立競技場で基礎調査を行い、その問題点を把握したうえで、日産スタジアムを設計いたしました。
今日はその当時の随想をアップさせていただきます。



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 有史以来、我々が地球上で生活を営んで、また過去、現在まで視覚、聴覚、味覚など五感のバランスが取れた環境を望み、創り出し、快適性を追求してきた。
 地球上各地で人類が創出した環境は異なり、それが文化として現在にまで受け継がれてきている。日本においても、各地に独特の習慣や風俗が大切に保存、継承され、それらがその地域の暮らしと密着し、景観の要素のひとつにもなっている。
 カラオケブームが携帯電話に取って代わられ、ゲームセンターがパソコンを利用した家庭内TVゲームに移行しているのと同様に、その時代によって我々の楽しみのツールは変化するが、世界中が同じであろうか。
 インターネットやLANに代表される電子情報化の時代、瞬時にして世界中の動きを把握することができ、時間的に小さくなった地域であるが、人間の生活環境としての条件や快適性と言うものは、全ておなじであろうとはとうてい考えられない。
 聴覚の面から見ても同じことが言える。各地に生活に密着した音文化があり、それが他の感覚との相乗効果により、地域性と認識できるものと思われる。
 そこで音と言う側面から各地の特徴、人の営みを概観してみたい。


 数年前のある日、2002年ワールドカップに使用することを目的とした国内最大収容能力を持つ某競技場の音響設計を目的とした基礎調査を国立競技場で行った時の出来ごとである。
当日は、同競技場でNカップ杯サッカーの決勝を行っており、その歓声がどの程度周辺へ伝搬しているかを調査していた。都心で最も便利の良い青山周辺の住宅地に住んでいるある方が、我々が行っている騒音調査を見ておもむろに一枚の力作を取り出して「これがこの周辺の風景です」と我々に示した。
 私は、絵画に対しての観る目は全くないに等しいが、この一枚の「絵」に対しては異常なほどの魅力と強烈な印象を受けた。これほどまでに音を主題としてダイナミックにこの地域を表現しているものを今まで見たことがない。しかしながら、この「絵」をよく観ると、どの場所から、どのような時、どのような音がどの程度出ているのか、十分すぎるほど理解できるものの、全体としては種々の音がお互いに競い合い、まさに「騒音のるつぼ」と化しているではないか。

$(株)エーアール響鳴するデザインのブログ

 音に対して人は感覚的な印象で判断、反応することが多く、物理的な量の大・小のみでは対応が難しいことがある。音をマクロに広域的に捉えた場合、千駄ヶ谷、青山周辺の音環境は、この図のような印象として一つの側面からは考えられ、イメージ化することができるかもしれない。しかしながら、ミクロに近隣の問題としてみた場合、特に騒音としての観点からは、強烈な予期せぬ侵入者として、迷惑な存在にしかならない。
 我々は自身にとって、益、あるいは不利益な関係が成立する場合、必要なものか否かの判断を行うものの、直接何らの影響がない場合、舞台で演じられている「芝居」の観客としての立場で捉えられているのではあるまいか。

 ちなみに国立競技場でサッカーが催されているとき、サポーターの声援は場内でLAeq81~85dB、最大値では100~105dB(A)であり、競技場から約500m離れた地点ではLAeq:63dB、最大値は67dB(A)であった。チアホーンを使っていた時は、それよりも数デシベル大きかったが、現在はほとんどの競技場で使用されていない。
 またこの場所で測定した騒音のデータが活用され、その後に行った模型実験も併用した検討により、某競技場は、現在国内で最も大きな最新の設備を備え、周辺に迷惑をかけることなく運用されている。


福原博篤(1998)環境と測定技術 vol.25 No.8 pp.84-86 環境背景音考(1) 掲載済

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そしてこれがその後の模型実験の様子です。




$(株)エーアール響鳴するデザインのブログ-模型実験の様子

スタジアムと同じ環境を作り、防音対策の信頼性を確かめます。

施術前がこれ!


$(株)エーアール響鳴するデザインのブログ-対策前

矢印が音の方向性を指示しますが、外に出て行っているのが分かりますね。


そして対策後がこれ!

$(株)エーアール響鳴するデザインのブログ-対策後

外に漏れず、均等なエネルギーであることが分かります。

こうして完成したのが・・・


$(株)エーアール響鳴するデザインのブログ-完成


この日産スタジアムの周辺は病院が並び、音環境には非常に敏感な場所でもあります。
ですが、この模型実験からも分かりますように、騒音に関する問題は出ていません。
そして利便性に富んでいること。
反響音も十分なことから、さまざまなアーティストのライブやイベントなどにも使われております!

$(株)エーアール響鳴するデザインのブログ-ライブ時
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