有川浩と覚しき人の『読書は未来だ!』

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絶対に忘れない――
本が街に灯りをともした
あの日のことを。

帯の惹句です。
『復興の書店』(稲泉連/小学館文庫)

こちら、著者の方から頂きました。
雑誌『家の光』(JA)の取材をお受けしたとき、インタビュアとして来られたのが稲泉連さんで、そのご縁で到来した本です。

東日本大震災で被災した書店についてのドキュメンタリーです。
「紙の本は必要か?」と問われたとき、「必要です」と明確に答えられる論拠がこの本の中にあります。
インフラが途絶した被災地で、電気を必要とせずに読める「紙の本」がどれだけの人々を救ったか。
紙の温もりが、思いを載せて書店に運ばれた本が、一体どれだけの人々の心を癒やしたか。

震災後、東北の書店が一定の復興を果たした頃に、東北の書店回りに行きました。
そのとき、異例の訪問先がありました。
トーハン仙台支社に立ち寄り、サイン本を作ったのです。
まだ交通事情の関係で訪問が困難な書店がたくさんある、でもそういう書店にもサイン本を配本したいので、トーハンの事務所でサイン本を作ってほしい。
そういうご依頼がトーハンからあったのです。
取次の慣例ではサインを汚損と見なされると以前のblogでも書きました。
その取次さん直々にサイン本のご用命が来るのは、異例の事態です。
しかし、異例を踏んででも、書店に活気を届けたいという計らいだったのでしょう。
事務所で数百冊にサインしました。
私が直接訪問できなかったところに、トーハンさんから旅立ったはずです。

被災地に書店は必要か。
被災地の人々は本など待っていないのではないか。
葛藤を抱えながら店を再開した書店員さんの生の声を、著者は丹念に拾い上げてこの本に収めています。
書店こそが担えた復興の道しるべが、書店員さんたちの言葉の中に見えます。

「本屋というのは神社の大木みたいなものでね。伐られてしまって初めて、そこにどれだけ大事なものがあったかが分かる。いつも当たり前のようにあって、みんなが見ていて、遊んだ思い出のある場所。震災が浮かび上がらせたのは、本屋とは何となくあるようでいて、そんなふうに街の何かを支えている存在なのだということではないか。僕はそんなふうに思うんです」

「書店は〝小さな日常〟を取り戻せる場所だったと思います」

丹念に収められた言葉に胸を貫かれながら読み進み、解説で涙がこぼれました。
解説は、今は閉店してしまったジュンク堂書店仙台ロフト店にお勤めだった元書店員さんでした。

書店回りで初めて仙台へ行ったとき、大歓迎してくれた元気な書店員さんコンビのお一人です。
当時の仙台の名物書店員さんの一人でもあり、本書の中にも登場しています。
いつも山のようにサイン(する)本を積んで待ってくれていました。
「個人的なサインもお願いします」と、僭越ながらサインを差し上げたことが何度もあります。
震災後の書店回りで、開口一番「ありがとうございました」と仰いました。
「『県庁おもてなし課』の印税寄付がすごく励みになりました。私たち見捨てられてないと思えました」と。
イラストがたいへん上手な方で、エッセイ漫画形式の書店員日記を作って配布するような才能もお持ちでした。
その総集編をいただき、帰りの新幹線で読みました。
絵日記には震災のときのことも書かれていて、その中に『県庁おもてなし課』の印税寄付の話も出ていました(震災当日に自分のサイトで寄付を表明したのです)。
やはり、「ありがとうございます」と。
私は震災後に受けたインタビューで、インタビュアの女性に「印税寄付の表明は売名ではないんですか」と詰問されたり、逆風もかなり受けていたのですが、彼女がそっと書店員日記に描いてくれていた一言で、一気に報われました。
他ならぬ書店員さんを勇気づけることができていたのなら、偽善と罵られることなど何ほどのことか。
被災地の読者さんを勇気づけることができていたのなら、売名の誹りなどいくらでも何度でも受けてやる。

しかし、ジュンク堂書店仙台ロフト店の閉店で、彼女とはもう会えなくなってしまいました。
どこか別のお店に移ったのなら顔を出したいと思いましたが、閉店を機に退職されたとのことでした。
仙台に行ってももうあの元気な彼女に会えない、という寂しさは、今でも仙台に行く度に胸をかすめます。
その彼女と、解説で再会できました。
巻末には弾けるような笑顔の写真まで。

あまりにも思いがけない再会で、稲泉さんはもしかして私が彼女と面識があったことをご存じだったのかなとさえ思いました。

紙の本は必要か。
リアル書店は必要か。
その疑問に、この本が答えます。
解説の素直な真摯な言葉まで読み終えたとき、あなたはきっと、
「紙の本は必要だ」「リアル書店は必要だ」
と思うはずです。

最後に、彼女の解説の言葉を引用します。
「書店はなんとも居心地のよいところです。適度な雑音がありながら、本を開けば一人になれる、もしくは言葉と二人になれる。時間も距離も越えて、言葉に耳を傾ける。一人だけど、一人じゃない。そういう曖昧な空間に身を置く時間は、なくても生きていけるかもしれないけど、あったほうがきっといい。書店員ではなくなったいまだからこそ、ほんとうに、そう思います」

今日、紹介しようと決めていた本です。


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