“愛里跨(ありか)の恋愛スイッチ小説(美來ちゃん編15)” | 愛里跨の恋愛スイッチ小説ブログ

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キス23
 

15、君がくれた愛

 


暗がりの向こうから微かに聞こえる話し声がする。
近づいてくる人の気配を感じて、私は秋真さんの腕を力強く掴み、
彼を引っ張るようにアパートへ連れていった。
秋真さんは私の意外な反応に一瞬驚いていたけれど、
徐々に柔和な表情に変わった。

 

秋真「なんとも。
  こんな夜遅くに見も知らない男を部屋に連れ込むなんて、
  意外に大胆なんだな」
美來「か、勘違いしないで下さい。
  まだ外は寒いですし、
  夜遅くにボソボソと話していたらご近所迷惑だし怪しまれます。
  それに……素性がバレたら一大事です。
  貴方も、私も」
秋真「そう」
美來「中へどうぞ。
  今コーヒーを入れますから。
  暖房器具はヒーターしか無くて寒い部屋ですけど」
秋真「ふっ。ありがとう。
  じゃあ遠慮なく、お邪魔するよ」


私は鍵を開け部屋に入るとルームライトをつけ、
すぐにファンヒーターのスイッチを入れた。
私がキッチンでお湯を沸かしていると、
秋真さんはゆっくりと部屋に入ってきた。
そしてコンパクトソファーに腰掛け、
辺りを見渡しながら好奇心に目を輝かせる。

 


美來「あんまりジロジロと見ないでくださいね」
秋真「えっ」
美來「この部屋に男性を招いたのは卯木さんだけです。
  男性は入れないって決めてたので」
秋真「へー。それは光栄だね。
  しかし、学生寮じゃないんだから、
  彼氏くらいは招いてもいいんじゃないかな」
美來「……」


秋真さんの何気ない一言にも過剰に反応してしまい言葉が出ない。
コーヒーの入ったマグカップをトイレに乗せ、
ローテーブルの上に置くと「どうぞ」と彼にカップを差し出した。
秋真さんは優しい目で私を見つめながら「頂きます」と丁寧に答える。
目を瞑り、何かを感じ味わいながら静かにコーヒーを飲む。
なんと眉目秀麗な人なんだろう。
こんな素敵な人と私が恋人同士だったんだと改めて思うと、
彼の音容に思わずドキッとして、慌ててマグカップを手に取った。

 

秋真「うまい……」
美來「イ、インスタントですよ。
  この間頂いた、卯木さんが入れてくれたコーヒーのほうが、
  断然に美味しいです」
秋真「いいな。こういう時間」
美來「えっ」
秋真「忙しすぎて忘れてたよ。
  こんな穏やかな時間と空間が俺にあったこと」
美來「……」
秋真「心許せる人と一つ屋根に下に居るのが、
  どんなに大切で安心感を与えてくれるかってことも。
  以前は確実に、この時は存在していたんだ。
  柔らかい空間も優しい空気も、温かい君も」
美來「……あの。
  二人の愛のかけらをどうやって探すつもりですか。
  有名人の卯木さんが誰の目も触れずにどうやって私と」
秋真「そのためにこのサングラスとマスクがある」
美來「どう見ても怪しいし、余計に目立ちます」
秋真「じゃあ、舞台の衣装をちょっと拝借して変装するかな。
  カツラに付け髭なんかどう?」
美來「えっ」
秋真「あははっ。冗談だ」
美來「こうやって卯木さんと向かい合っていても、
  私にはどうしても現実だとは思えないんです」
秋真「あのさ、その『卯木さん』と言うのはやめてくれ。
  堅苦しくてたまらないよ。
  俺のことは『秋真』でいい」
美來「はぁ。では……秋真、さん。
  私たちが愛し合ってたなんてどうしても想像できないから」
秋真「それは、俺の職業のせいなのかな?」
美來「はい。それは大いにあります」
秋真「それじゃ、俺が別の職業だったら。
  例えば某住宅会社の営業マンだったり、
  金融機関で勤める真面目な会社員だったらそうは思わないってことだ」
美來「そう意味ではなくて、貴方は……」
秋真「貴方は?」
美來「私の目に映っているのは、
  映画“ホタルのささやき”で主演女優だった粟田日菜乃の元彼です。
  私と彼女じゃ比べものになりません」
秋真「だから?
  売れっ子の女優だって一人の人間で一人の女だ。
  芸能人だからって一般の人と恋をして結婚してるやつなんてたくさんいる。
  だから彼女と君は、なんら変わらないよ。
  正直に言うけど、日菜乃より美來のほうが婉容だしね」
美來「そんなことありません!
  そ、それに、もしも愛のかけらを見つけたとしても、
  そのかけらは過去の産物で、今の私にはどうすることもできないし。
  だから私は……秋真さんとは」
秋真「それはどういう意味?」
美來「そ、それは」
秋真「はっきり言えよ。
  俺がこうやって君の前に現れるのを迷惑と感じてるなら『迷惑だ』、
  嫌いなら『嫌いだ』とはっきり言えば済むことだろ」
美來「嫌だなんて、思ってないけど」
秋真「じゃあ何」
美來「だって今の私は……
  和勢さんにプロポーズされて、OKをしてしまったから」
秋真「和勢さんは君が記憶を無くしてること、知ってるの」
美來「ええ。知ってます」
秋真「俺とのことは知ってる?」
美來「少しだけ。
  過去、秋真さんと付き合ってたかもしれないと話しました。
  それでも彼は、私の全てを受け入れてくれると言ってくれたんです」
秋真「……彼が好きなの」
美來「えっ」
秋真「愛してるの?」
美來「そんな、愛してるかどうかはまだ」
秋真「愛してなきゃ何なんだ。
  もしかして寂しいからOKしたのか。
  そんなのナンセンスだ」
美來「ナンセンス……秋真さん!?」


ソファーに座っていた秋真さんが急に立ち上がり、
正面に座る私の許へ歩み寄るとぐっと自分に引き寄せた。
瞬きするのも忘れた私の左頬に彼の大きな右手が触れ、
たじろぐ私の唇が柔らかな感触を感じ取る。
彼の温かさに触れ甘いゴーストの香りを嗅いだ時、
視覚、聴覚、嗅覚、触覚、私のあらゆる感覚が、
ある小さな記憶を呼び起こし、幸せな出来事を曝したのだ。

 

 

伊吹とニキの抱擁


〈美來の回想シーン〉


それは確かに存在した想い出……
秋真さんの部屋だった。
大きなテレビ画面に“君がくれた愛”という映画のエンドロールが流れ、
哀愁を感じさせるクラッシック調の音楽が聞こえていた。
秋真さんと二人、カウチソファーで寛ぎ、
映画館さながらにテーブルの上にはコーラとポップコーンがあった。
私は悲しそうにその画面を見つめ、
秋真さんはグラスを手に取りコーラを飲み干す。

 


美來「私、この映画嫌い」
秋真「ごめん。事故のこと、思い出させたよな」
美來「ううん、いいの。
  それなら私だけでなく秋真もでしょ?
  私たちは共通の痛みを持つ者どうしなんだから」
秋真「確かに事故のシーンには正直ドキッとしたけど、
  そんなこといちいち気にしてたら役者なんて遣ってられないしな。
  この間のドラマなんて、殺人を犯した残忍な男が逃走するシーンで、
  犯人は事故を起こして刑事に確保されるんだ。
  いくらスタントマンでもさ、リアル過ぎて手が震えたっていうの。
  でもさ、そんなのいちいち気にしていたら俺は先に進めない。
  ドラマでも映画でも、こういうシーンから逃げないで、
  受け止めるのもリハビリだからな」
美來「うん。秋真の言うとおりだよね。
  たださ。この映画に関しては異議ありだな。
  記憶喪失のマイケルが、支えてくれた女性ノエルを愛し、
  彼女との幸せな日々に満足していた。
  それなのに、農作業中の怪我で妻ミリアとの幸せな過去を思い出しちゃって、
  献身的なノエルを捨てて、ミリアの許に帰って再びプロポーズするのよ。
  そんなの、捨てられた彼女が可哀想で残酷すぎるでしょ」
秋真「えっ?どうして」
美來「だって彼は、自分が過去に結婚していたことを思い出せずに、
  知らない土地で助けられた女性と一緒に住んじゃったんだもの。
  ノエルは心からマイケルを愛しつつも、記憶が戻ってしまったら、
  いつか自分の許から居なくなってしまうかもと毎日震えていたのよ。
  そしてそれが現実となったわけでしょ?
  秋真がマイケルの立場だったら、
  尽くしてくれた彼女を捨てて奥さんの元に戻るの?」
秋真「どちらの女をどれだけ愛してるか、愛の度合いによると思うけど、
  この映画の場合は助けたノエルにも落ち度はあるな。
  マイケルの左手の指輪を見て、彼女は既婚者だと分かってたはずだ。
  それなのに、意識を失っていた彼の指輪をこっそり外して隠し持っていた。
  これは罪にならないのか?その行為こそナンセンスだな」

 


星光


どうして今なの!?
何度も何度も、嫌気が差すほど思い出そうとした。
必死に記憶を辿ろうとしても一度だって思い出せなかったのに。
神様はとても残酷だ。
このタイミングに忘れていた愛のかけらの一つを、
すっと私の目の前に差し出すなんて。
もっと早くに、せめて和勢さんから告られる前に思い出していたら。
いえ……
あのエレベーターで懐かしく感じたゴーストの香りと、
頼もしいこの腕に受け止められた時に思い出せていたら。
今の私はまるで、秋真さんと観た“君がくれた愛”の主人公と同じ。
秋真さんとまったり過ごした幸せな時間は確かに存在していた。
でも私は支えてくれた和勢さんの英姿に心救われたからOKしたんだ。
だから今更……秋真さんの許へなんて戻れない。
でもその決断が、彼の言ったナンセンスなの?


艶めく彼のメッシュの髪が揺れ、
鼻筋の通った美しい顔が息がかかるほど近くにある。
そして無警戒で正直な瞳は、憂慮に堪えない私をしっかりと捉えている。
私は絞り出すように声を発した。

 


美來「どうして……」
秋真「ごめん。
  君が他の誰かのものになると聞いて正直動揺した」
美來「どうして今なの」
秋真「えっ」
美來「教えて。どうして今なの!?」
秋真「和勢さんを愛してるなら、この手を跳ね除けて俺を拒めばいい。
  そして『止めて!』と俺を思いきり突き飛ばせばいい」
美來「私……秋真を突き飛ばせなくなった。
  でも突き飛ばさなきゃいけないの」
秋真「えっ。今、秋真って……美來?」
美來「私は“君がくれた愛”のマイケルにはなれない」
秋真「マイケル?
  “君がくれた愛”ってまさか……美來、思い出したのか!?」
美來「うん。ほんの一部だけ、記憶の断片だけど、
  確かに私たちは一緒に居たのね」
秋真「ああ。美來、良かった!」


湧き上がってくる喜びに秋真さんは身を任せ、
再び私を力強く抱きしめる。
そして今にも叫び出すんじゃないかと思うほど陽気な声で話した。


秋真「断片でもいいんだ。
  一つ思い出せたなら、そのうちどんどん思い出せるはずだから。
  そうすれば俺たちはまた前のように愛し合える」  
美來「愛し合えるなんて、そんなに簡単じゃない」
秋真「どうして。怖いの?」
美來「怖いわ。私たちには空白の5年があるもの。
  私にも秋真、さんにも関わった人たちが居る。
  その人たちを無かったことになんてできないわ、私」
秋真「無かったことなんてするつもりはないし、
  美來も無かったことにしなきゃいい。
  だけど、愛してもいない男と付き合うのは間違ってる。
  それは無かったことにするべきだ」
美來「そんな酷いこと、私にはできない。
  やっぱり、あの映画のマイケルみたいには」
秋真「君が今、しようとしている選択はノエルと同じだ」
美來「ノエル?」
秋真「ああ。
  愛の証である結婚指輪を隠すように、思い出した愛を無かったことにして、
  偽りの愛を、生活を送ろうとしている。
  そして和勢さんもノエルと同じだ。
  君の全てを受け入れるって?
  あいつは俺たちが付き合ってたと知ってて、
  君の気持ちも確かめずにアプローチした。
  美來を俺に渡したくない、記憶が戻る前に自分のものにしたかった。
  ただそれだけだろ」
美來「……」
秋真「何を恐れてるの。何が怖いんだ?
  5年で作り上げたものを壊すのが怖いの。
  それとも愛し合った過去を思い出すのを恐れてるの」  
美來「どちらもよ!
  どちらも私にとって大切なはずなのに、
  どちらかを選ばなければいけない現実が怖いの」
秋真「ふーっ。美來、泣かないで」
美來「ごめんなさい……」
秋真「美來、俺を見て」


両頬を伝う涙を親指の腹でゆっくりと拭い、
私を見つめる秋真さん瞳は細く眇められていた。
彼は優しくいたわるように話しかける。

 

秋真「俺は、一つずつかけらを探そうって君に言ったよね」
美來「え、ええ」
秋真「そして。
  俺は俺たちの本当の日常を取り戻す為に、あのマンションを買った。
  大事なのは俺たちの本心で、取り巻く環境や人間関係じゃない。
  俺と美來が本当に望んでいる未来が何なのかが大事なんだよ。
  だから何も恐れることなんて無い。
  俺が仕事で東京に行ってる間、あの部屋はいつでも自由に使っていいし、
  今度こそ何が起きても誰に邪魔をされても、俺は君を離さないから」
美來「秋真さん」
秋真「だから美來は、焦って結論を出さなくていい。いいね」
美來「……はい。
  でも、和勢さんにはどう言えばいいの?」
秋真「『無くした記憶を無かったことにできない』それだけでいいんじゃないか?
  そして今まで通り、同じ職場の同僚で居ればいい。
  もし美來の本当の縁があいつならあいつに、
  その相手が俺なら俺に軍配があがる。
  きっと神様が自然と導いてくれると思うよ」
美來「そ、そうね……分かりました」  
秋真「ああ。分かってくれてありがとう」
美來「あの、秋真さん」
秋真「ん?」
美來「今度は逃げないから、私とあなたのこと教えて?」
秋真「ああ。いいよ」
美來「(もう一度だけ、この人をしっかり見つめてみよう。
  秋真さんが私にとって本当に大切な人なのか)」

 

秋真さんは愛嬌のある微笑みを浮かべながら、私の髪を優しく撫でた。
さっきまで恐怖と不安で逃げ出したい衝動に駆られていたけれど、
彼の愛で光陽に包まれたように気持ちが暖かくなる。
そして居心地いい場所を見つけた小鳥のような心持ちだった。
秋真さんはまるでベッドに入り待ち望む子供に本を読むように、
出逢った時から離れてしまうまでを丁寧に聞かせてくれた。
私たちはボアラグの上で毛布に包まり、
そのまま朝まで同じ時間を過ごしたのだ。

 

 

 

(続く)


この物語はフィクションです。

 


 

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