その研究室の扉だけが
二重に改装されている

という噂が
まことしやかに
囁かれていた。


この音楽棟のことを
よく知らない客人が
「この部屋は、
オウムを飼ってらっしゃるんですか?」
と尋ねたとか、尋ねてないとか。


そのぐらい
学生を罵倒する声が
響き渡ることで有名な
研究室があった。



某国立大学のキャンパス最果て
音楽棟4階へ上る
私の足取りは重い。

ただでさえ
ピアノの楽譜も分厚くて重いのに。




一方、健康のために
適度な運動と、
適量の酒とを欠かさない
退官間近だった教授。


教授の伝説はたくさんあるが、
そのうちの一つ

「鳩ぽっぽ」



【ぽっぽっぽー、は
誰が歌っても、
ぽっぽっぽーやろ!!!!

ぽっ    ぽっ    ぽー  、、、とか

遅く歌ったら
その曲にならんやろ!!!!

その曲に
見合った速度で弾けー!!!!】



ベートーヴェンやらショパンの合間に
突然、現れる鳩ぽっぽには
要注意です。

滝廉太郎、侮れず。



そして、
だいたいの学生が
耳元で怒鳴られて閉口するか
泣くか、
門下をかわりたいと
教務に泣きつくか・・・

でも私は、
笑ってごまかす、
というか、やり過ごしつつ
4年間プラスm1
(2000年、退官あそばされる)まで
お世話になったわけで。



今にして思えば、
自分の不甲斐ない演奏のせいなので
おっしゃる通りです、
という感じですが。



******


先日、
同窓会組織の会合で

「先生、何か弾いてくださいよ~」

とふると、

「お前が弾けや!!
ショパンかなんか、小品でええんじゃ!」


という切り返しに遭い
まんまとノクターンを弾く羽目に。


「それでええんじゃ」

と吐き捨てるように
お帰りになりました。。。
(これでも在学中より会話が成立している)


おそらく、御年75歳ぐらい。
お元気で何よりです。




以上、
鳩ぽっぽに関する回想録でした。