成長から成熟と品格へ、米国依存から大人の関係へ | 永田町異聞

成長から成熟と品格へ、米国依存から大人の関係へ

稲盛和夫、寺島実郎、榊原英資という錚々たる大物民主党ブレーンが、昨日発売された文芸春秋10月号に、それぞれ新政権への期待をこめた文章を寄稿している。


稲盛は、京セラ名誉会長で、小沢一郎とのつき合いが深い。この人の見識を感じるのは、経済成長ばかりを標榜する他の財界人と違い、成長の限界をわきまえている点だ。


まず、稲盛は以下のように疑問を投げかける。


「世界のエネルギー・資源・食糧問題の現状を考えた場合、果たして世界各国が今後何十年も高い経済成長を続けていくことは本当に可能なのか」


世界人口は爆発的に増え続け、貧困と飢餓が広がる一方、経済成長という美名のもとで贅沢と飽食が蔓延し、地球は資源の枯渇と環境悪化に悲鳴をあげつつある。


誰もが感じていることではあるが、このままでは地球も人類も、もたない。稲盛は「経済成長が限界に達しているとすれば」と前置きしたうえで、次のように続ける。


「制約された経済状況の中で、いかに国民が幸せに生きていけるかという視点に立って、世界的レベルで融和を図り、調和と共生を重んじ、品格ある国家をめざしていくことが、これからの日本の目指すべき方向ではないか」


ミスター円こと、榊原英資も経済専門家の立場から、日本は「成長社会」から「成熟社会」へ変わっていくと説く。


稲盛も榊原もごく当然のことを述べているのだが、株主重視で短期的な利益や、株価に心を奪われる大企業経営者は、相も変わらず「成長」幻想を追い、これまで生きてきた基盤である日本の大地の尊さや国民の命を顧みる余裕がない。


短期的な儲けのため海外に会社や工場を移転し、産業空洞化で母国を荒廃させて、企業に残るものとはいったい何だろうか。


かつて「商売人は根無し草でなければならない」と説いた某大手小売業の経営者がいたが、母国がしっかりしていてこそ、そんなことが言えるのである。


榊原は、GMの経営破綻が意味するのは20世紀型資本主義経済の崩壊であり、いまや世界規模で、製造業中心の経済構造から環境や安全、健康、文化へのパラダイムチェンジが起きているという。


その意味で、製造業オンリーでなく農業、サービス産業も中核とした産業構造に転換し、外需依存からの脱却、地方経済の活性化で、内需拡大を図るべきだと指摘している。


寺島実郎は鳩山由紀夫の外交ブレーンとして知られる。今回の論文で、寺島は日本外交の問題として「冷戦構造の思考回路」のまま外交戦略を進めてきたことをあげる。


「アメリカについていくしか仕方がない」というほか、外交の原則論がないこの国は、戦後60年以上も在日米軍を抱え、駐留コストの7割を負担している。


その原因を、寺島は「日米の安保マフィア」という表現で説明する。


「日米関係を議論するパートナーがワシントンにおける知日派、親日派と日本における知米派、親米派の一群だけで成り立っているからです」


固定化した彼ら安保マフィアのメンバーがエールを交換しているだけだというのだ。


自衛隊のインド洋上給油活動にしても、一般に「あれこそ日米同盟の信頼の証だ」ともっぱら喧伝されているが、寺島に言わせると、それは安保マフィア間でつくられた常識に過ぎないようだ。


「日本はいったいどんな優先順位でインド洋に派遣しているのか分からない」と、米国の世界戦略担当者は寺島に語っているという。


寺島は、アメリカへの過剰期待と過剰依存から脱却し、「大人の関係」を構築すべきだと主張する。


長い間、情報を独占する霞が関と自民党政権によって喧伝され、いつの間にか信じ込まされてきた経済や外交の常識は、政権交代を機に本格的に見直されなくてはならないようだ。


これから、政治ジャーナリズムも変わらざるをえないだろう。自民党内政局の取材で、大物政治家宅へ夜討ち朝駆けをすることにエネルギーを費やしていればよかった時代は確実に終わったのではないか。


政治家と深いつながりのある大物記者よりも、政策がわかり、独自の情報分析能力を持つ記者が重宝される時代がやって来るかもしれない。


ご面倒でしょう がワンクリックしてください、ランキングが上って読む人が増えるそうです

  ↓↓↓↓↓

人気ブログランキングへ