血統

2012-02-10 22:47:00 テーマ:家族

 誕生日を祝う風習というのはいつからあるのか。
 生きている内にだけやる事なのか。

 俺は何故か昔から人の誕生日をキッチリ覚えておく(忘れない)のが大得意で、『日付け』というものに人一倍、過敏だと思う。
 覚えているからと言って、誰にでも彼にでもプレゼントは贈れないものだけど、ひと言『今日は誕生日だね』と言うだけで皆、喜んでくれるものだ。

 誕生日はその人が人生の歴史を刻み始めた特別なメモリアルデー。

 そして今日、2月10日は自分にとって大切な人の誕生日。

 去年の初夏にみんなに惜別されこの世を去った、敏じいちゃんの80回目の誕生日。

 母ちゃんのお父さんだから、俺にとても近い存在だった。
 じいちゃんにとって俺は初孫で、産まれたすぐ母ちゃんと里帰りしている時期に毎晩、夜泣きの酷い俺をじいちゃんは夜通し抱っこしてあやしてくれたそうな。
 家に来た人にいつも俺を見せびらかしては『俺の孫ばい』と自慢したそうだ。

 小さい頃は週末はしょっちゅう兄弟でじいちゃん家に泊まりに行った。

 俺が今でも一番思い出として胸にしまっているものがある。
 土曜の昼過ぎに学校が終わって、じいちゃん家に送って貰い、仕事帰り直後のじいちゃんと夕方早くに風呂に入るのさ。 じいちゃんは建設現場だったからな。

 身体をゴシゴシ洗って貰い、床屋からよく粗品で貰う(?)プラスチックの丸いクシ、あれで頭を洗って貰ってた。坊主頭には正直痛かったんだけど口に出来なかったんだよな。
 熱々の風呂の中でじいちゃんは色んな話しをしてくれた。何でも教えてくれた。温かい思い出。 
 『日本昔ばなし』を見ながら晩ご飯を食べてドリフが終わる頃にはばあちゃんが布団の準備をしてたっけかな。

 じいちゃんは土曜洋画劇場が大好きで、電気を消して茶をすすりながら寝たばこで映画を観るのが大好きだったんだ!
 温かい布団、セブンスターの匂い、あの空気。 もう一度、味わいたいなぁ!本当にいい思い出。
 他にもドライブ、魚釣り色んな所に連れて行ってくれた。
 イタズラ好きで、言う事を聞かなかった俺がちゃんと言う事を聞いてたのだから、本当にじいちゃんは俺を可愛がってたんだと思う。
 やっぱ産まれたすぐに可愛がられてた記憶を子供はしっかり本能で覚えてるものよ。
 今でもじいちゃん大好きだもん。

 優しくて、知的で争いが嫌いだったじいちゃん。いつも俺達孫の心配ばかりしていた。

 もう、どんなに会いたくても会えない。言葉も贈れない。

 死別後、初めて迎えるじいちゃんの誕生日。
 俺は今朝、日課となった朝のジョギングのコースを少し背伸びして、じいちゃんの眠る墓へと向かった。行きがけにコンビニで〝白波〟のワンカップを買って。

 薄暗い中、俺はじいちゃんにワンカップをプレゼントした。
 生まれて初めて、じいちゃんからしたら死んでようやく貰う、初孫からの誕生日プレゼント。

 色んな会話が出来たよ。感謝の言葉、近況の報告。
 そして『じいちゃん、おらぁ嫁さんと息子ば大事にして、そして母ちゃんば楽させるけん!』と改めて誓った。
 
 まぁいちいち報告せんでもじいちゃんは上からしっかりと俺達孫の日常を見張ってると信じている。

 出来るだけの孝行、恩返しはしたから後悔は無い。

 だけど、やっぱり会いたいなぁ。あの安らぐ温かい声が聞きたいなぁ。


 そして、やはり、最後に出来る恩返しがまだあったのでは、と自分に問い返してしまう。


ロンシャン
 
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