2012年01月05日
『見直されるノンフィクションの力』(2012年1月5日毎日新聞朝刊)
テーマ:新聞記事
昨年は、震災によって生活の基盤や将来への希望が揺らぎ、心の拠り所を求めて本を読みあさった1年でした。特に、現場の息づかいを感じるノンフィクション作品からは多くの気づきが得られ、改めて文学の力に気づかされました。
そんな折、けさ(1月5日)の毎日新聞の文化面に、「2012年 見直されるノンフィクションの力」という興味深い対談記事が載っていました。
対談しているのは、2005年のデビュー作『物乞う仏陀』が開高健賞と大宅壮一賞の候補となり、昨秋『遺体 ー震災、津波の果てに』を刊行した石井光太氏と、『ぼくもいくさに征くのだけれど 竹内浩三の詩と死』で2005年に大宅壮一ノンフィクション賞を受賞し、現在、『新潮45』に「復興への道『国道45号線』をゆく」を連載中の稲泉連氏です。
私もテレビ局で報道番組を担当している仕事柄、現場に出かけて取材して放送するということを繰り返しているため、同じように現場に出向き、文章にまとめて作品を発表するノンフィクション作家の仕事にはとても関心があります。そういう意味でとても充実した内容の記事でした。
「ノンフィクションはジャーナリズムとはそもそも違うもの」。
この言葉からノンフィクションの今後の可能性が見えた気がします。
「映像や小説をやることでノンフィクションに還元したい」。
どん欲な抱負も印象に残りました。
今後、気鋭の作家と評される2人の作品を読んでみたいと思います。
【石井光太氏】
■自分が読者だったら、好きな書き手に現地に行ってほしい。その人の目線で、その世界を見たいと思う。
■あれだけ大きなことがあると、自分に何ができるのかと考える。人はそれまでに積み上げたことしかできません。
■僕は、何時何分に何があった、という報告、ジャーナリズムには興味がありません。もっと文学なところに興味がある。また、人には何度も会って話を聞く。時間をかけて関係を積み上げ、そうしてしか得られない情報を書くというのが僕のスタイル。それを守っていればどんな状況を取材し書いたとしても差別化はできます。
■ノンフィクションは、ジャーナリズムとはそもそも違うものです。
■ノンフィクションはゼロから一つの世界観、物語をつくる。(略)それには文学と同じやり方をやったらどうかと。たとえば徹底的ににおいや感触を描写する。言葉にできない感情を、細かい事実を描写することで、答えや知識を与えるんじゃなくて、読んでいる人にいろんなことを考えてもらいたい。
■書く目標は何なのか。僕の場合は、若い人の価値観を変えたいということ。
■1万人の固定読者がいればやっていけ、3万人いればベストセラー作家。全読者に合わせる必要はありません。
■自分にとっての衝動、「やらなきゃいけない」という気持ちが大きければ大きいほど、作品のパワーになってくる。
■5年以内に映像か小説をやりたいですね。40歳になる前に。どんどん違う挑戦をして、いろんなことを吸収し、ノンフィクションに還元したい。
【稲泉連氏】
■どういう視点、立場でそこにいるかが大事。テレビ・新聞記者、フリー、ブロガー、みなそれぞれに違った立場と視点がある。事実というのは多面的なので、いろんな視点が存在することが必要なはず。
■「ああ、そういう風景があったのか、空気が流れていたのか」と身にしみる。そういう感覚を与えてくれるのが、ノンフィクションの「視点」の一つだと思うんです。
■(原稿用紙)300枚、400枚と書くには、相当なエネルギーがいりますからね。その衝動が自分でも言葉にならないから、とりあえず書いていく。書き終わってから、ああそうか、だから自分ここに行ってこれをを書いたのか、と気づくこともあります。
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