2012年05月29日
『ヤクザと原発』鈴木智彦・著
テーマ:ノンフィクション
ヤクザと原発 福島第一潜入記/鈴木 智彦

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今まで自分が見聞きしてきた原発に関する情報が、いかに表面的だったかを思い知らされました。
著者は、暴力団取材が専門のフリーライター、鈴木智彦氏。ジャーナリストとして初めて、作業員として福島第一原発に潜入し、ヤクザと原発の関係を明らかにしています。
都会の人間には想像がつかないほど、地域共同体の内部に溶け込んでいるヤクザの存在。
原発が国策であるが故に、暴力団が巣くう温床になっているという現実。
水素爆発した直後、「死んでもいい人間」だけが作業員として志願したという地獄の状況。
熱中症との闘いとなった壮絶な作業現場と、リアリティに富んだ作業員たちの生々しい言葉。
そのどれもが日ごろのニュース報道では決して伝えられていない新鮮な情報でした。そして何よりも鈴木氏の命がけの潜入取材がノンフィクションとして圧倒的におもしろい(不謹慎ですが)。ペンネームを使わず、本名のまま取材を続けていたといいますが、その後の身の安全は大丈夫なのかと心配になるほどです。
原発問題がいかに根深く、解決が一筋縄ではいかない厄介な問題であるかを思い知らされました。国のエネルギー政策として、その場しのぎの対処療法ではなく、抜本的な方針転換を打ち出さない限り、原発をめぐる利権は温存され、原発の存続を今後も長い間許し続けることになりそうだと感じました。
原発を考える上で、欠けていた視点を与えてくれる衝撃的な1冊です。
■かつてヤクザの分類に博徒系、的屋系などと並んで、「炭鉱暴力団」という項目が存在していた。
■資本家たちは炭鉱労働者をまとめ上げるため地元のヤクザを利用し、親分を代表者として各地に下請け会社を作らせた。暴力というもっとも原始的、かつ、実効性の高い手段は、国策としてのエネルギー政策と常にセットとして存在している。
■原発は暴力団…正確にいうならヤクザと一心同体だった地域共同体に金を落とし続けた。電源三法交付金や発電所が支払う固定資産税をはじめ、原発運営、維持管理…地元に落ちる巨額の金を抜け目ない連中が懐に入れる。
■「隠そうったって無理な話で、それは暗黙の了解だ。もともとみんな仲間内なんだから。親戚や友達、先輩後輩…地域が全部グルと思っていい」
■暗黙の了解…その後も原発取材で嫌というほど聞かされた言葉である。
■暴力団にとって、原発のようにダブルスタンダードと隠蔽体質の上に成り立つ産業は、最高のユートピアかもしれない。
■原子力発電は国策であり、国家によって莫大な資金が投入される巨大利権である。電力会社の下には東芝や日立、IHIなど原発プラントメーカーがあり、その下請け企業は、私が把握しているだけで、10次請け以上までネズミ講式に広がっている。仕事を右から左に流し、汗を流さずに利権を得る。これは暴力団フロント企業の典型的体質だ。
■住吉会や稲川会など、東北に多くの傘下団体を持つ組織はもちろん、山口組をはじめ、ほぼすべての団体がなんらかの救援活動を行っていた。義援金の領収書は匿名でもらう。世間に喧伝すれば売名行為だと叩かれるが、なにか証が欲しいのだろう。
■「経営者が電力から『死んでもいい人間を用意してくれ』と言われていたらしい」
■フクシマ50の中に暴力団員が数名いるという話は、ほぼ事実と考えていい。就職しているメーカーも、組織も、所属2次団体も、名前も分かっている。
■私が泊まっていた旅館のフロント前には、動物愛護団体が持ってきた餌が置かれている。その理由が飲み込めた。自分たちが20キロ圏内に入れないため、作業員に餌やりを託しているのだ。
■トラブルがあっても表に出ないのは、東電という雇い主が絶対的権力を掌握しており、気に入らない職人や業者を簡単に排除できるからだろう。こうした規約や誓約書によって隠蔽された不正は、私が見ただけでも両手の指では足りなかった。
■原発が都市部から離れた田舎に建設されるのは、万が一の事故の際、被害を最小限にとどめるためだけではない。地縁・血縁でがっちりと結ばれた村社会なら、情報を隠蔽するのが容易である。建設場所は、村八分が効力を発揮する田舎でなければならないのだ。
■暴力団が原発をシノギに出来るのは、原発村が暴力団を含む地域共同体を丸呑みすることによって完成しているからだ。原発は村民同士が助け合い、かばい合い、見て見ぬふりという暗黙のルールによって矛盾を解消するシステムの上に成り立っている。不都合な事実を詰め込む社会の暗部が脹れあがるについれ、昔からそこに巣くっていた暴力団は肥え太った。原発と暴力団は共同体の暗部で共生している。
■円高が進んで企業の海外進出が加速しても、発電所を国外に移転することは不可能だ。公共工事と並び、巨額の資金が投入される発電所建設という大プロジェクトを、暴力団が見逃すはずがない。
■「マスコミが注目してるのは原発だけ。そこから追い出したところで、放射能のおかげで他にいくらでもシノギはある。20キロ圏内の瓦礫撤去、近隣の建設工事、県内で盛んになっている除染ビジネス…ダンプも人間もそっちに回せばいいだけだ」
■原発を動かしてきた人間たちにとって、いまの日本が放射能まみれの汚染地帯に見えることは事実である。
ヤクザと原発 福島第一潜入記/鈴木 智彦

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今まで自分が見聞きしてきた原発に関する情報が、いかに表面的だったかを思い知らされました。
著者は、暴力団取材が専門のフリーライター、鈴木智彦氏。ジャーナリストとして初めて、作業員として福島第一原発に潜入し、ヤクザと原発の関係を明らかにしています。
都会の人間には想像がつかないほど、地域共同体の内部に溶け込んでいるヤクザの存在。
原発が国策であるが故に、暴力団が巣くう温床になっているという現実。
水素爆発した直後、「死んでもいい人間」だけが作業員として志願したという地獄の状況。
熱中症との闘いとなった壮絶な作業現場と、リアリティに富んだ作業員たちの生々しい言葉。
そのどれもが日ごろのニュース報道では決して伝えられていない新鮮な情報でした。そして何よりも鈴木氏の命がけの潜入取材がノンフィクションとして圧倒的におもしろい(不謹慎ですが)。ペンネームを使わず、本名のまま取材を続けていたといいますが、その後の身の安全は大丈夫なのかと心配になるほどです。
原発問題がいかに根深く、解決が一筋縄ではいかない厄介な問題であるかを思い知らされました。国のエネルギー政策として、その場しのぎの対処療法ではなく、抜本的な方針転換を打ち出さない限り、原発をめぐる利権は温存され、原発の存続を今後も長い間許し続けることになりそうだと感じました。
原発を考える上で、欠けていた視点を与えてくれる衝撃的な1冊です。
■かつてヤクザの分類に博徒系、的屋系などと並んで、「炭鉱暴力団」という項目が存在していた。
■資本家たちは炭鉱労働者をまとめ上げるため地元のヤクザを利用し、親分を代表者として各地に下請け会社を作らせた。暴力というもっとも原始的、かつ、実効性の高い手段は、国策としてのエネルギー政策と常にセットとして存在している。
■原発は暴力団…正確にいうならヤクザと一心同体だった地域共同体に金を落とし続けた。電源三法交付金や発電所が支払う固定資産税をはじめ、原発運営、維持管理…地元に落ちる巨額の金を抜け目ない連中が懐に入れる。
■「隠そうったって無理な話で、それは暗黙の了解だ。もともとみんな仲間内なんだから。親戚や友達、先輩後輩…地域が全部グルと思っていい」
■暗黙の了解…その後も原発取材で嫌というほど聞かされた言葉である。
■暴力団にとって、原発のようにダブルスタンダードと隠蔽体質の上に成り立つ産業は、最高のユートピアかもしれない。
■原子力発電は国策であり、国家によって莫大な資金が投入される巨大利権である。電力会社の下には東芝や日立、IHIなど原発プラントメーカーがあり、その下請け企業は、私が把握しているだけで、10次請け以上までネズミ講式に広がっている。仕事を右から左に流し、汗を流さずに利権を得る。これは暴力団フロント企業の典型的体質だ。
■住吉会や稲川会など、東北に多くの傘下団体を持つ組織はもちろん、山口組をはじめ、ほぼすべての団体がなんらかの救援活動を行っていた。義援金の領収書は匿名でもらう。世間に喧伝すれば売名行為だと叩かれるが、なにか証が欲しいのだろう。
■「経営者が電力から『死んでもいい人間を用意してくれ』と言われていたらしい」
■フクシマ50の中に暴力団員が数名いるという話は、ほぼ事実と考えていい。就職しているメーカーも、組織も、所属2次団体も、名前も分かっている。
■私が泊まっていた旅館のフロント前には、動物愛護団体が持ってきた餌が置かれている。その理由が飲み込めた。自分たちが20キロ圏内に入れないため、作業員に餌やりを託しているのだ。
■トラブルがあっても表に出ないのは、東電という雇い主が絶対的権力を掌握しており、気に入らない職人や業者を簡単に排除できるからだろう。こうした規約や誓約書によって隠蔽された不正は、私が見ただけでも両手の指では足りなかった。
■原発が都市部から離れた田舎に建設されるのは、万が一の事故の際、被害を最小限にとどめるためだけではない。地縁・血縁でがっちりと結ばれた村社会なら、情報を隠蔽するのが容易である。建設場所は、村八分が効力を発揮する田舎でなければならないのだ。
■暴力団が原発をシノギに出来るのは、原発村が暴力団を含む地域共同体を丸呑みすることによって完成しているからだ。原発は村民同士が助け合い、かばい合い、見て見ぬふりという暗黙のルールによって矛盾を解消するシステムの上に成り立っている。不都合な事実を詰め込む社会の暗部が脹れあがるについれ、昔からそこに巣くっていた暴力団は肥え太った。原発と暴力団は共同体の暗部で共生している。
■円高が進んで企業の海外進出が加速しても、発電所を国外に移転することは不可能だ。公共工事と並び、巨額の資金が投入される発電所建設という大プロジェクトを、暴力団が見逃すはずがない。
■「マスコミが注目してるのは原発だけ。そこから追い出したところで、放射能のおかげで他にいくらでもシノギはある。20キロ圏内の瓦礫撤去、近隣の建設工事、県内で盛んになっている除染ビジネス…ダンプも人間もそっちに回せばいいだけだ」
■原発を動かしてきた人間たちにとって、いまの日本が放射能まみれの汚染地帯に見えることは事実である。
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