空っぽの時間

本の感想や日常の記憶

++迷い人のモノローグ


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歩道に猫がいた。

白い猫で、少しだけ尻尾に茶色い毛が混じっている。
奴は俺と目が合うと、前足の片方だけをすっと前に伸ばし、地面から離して、その姿勢でじっとしていた。

黒い瞳は、前を見据えている。
俺も立ち止まって奴を見ていたが、しばらくして何事もなかったように歩き出した。

そのうち逃げるだろうと思っていた。



ゆっくりと近づく足音。

それを聞いても、奴は動かない。
しかもそれを確認したかのように、今度はこちらに向かって歩き出した。


やがて疾走して近づいてくる。
獲物を見つけたようなその勢いに、俺は驚いて身を引いた。

(あ…)

奴は足元ギリギリすり抜けて。
通り過ぎてから離れたところで止まり、俺が振り返って見ているのを同じように振り返って見ていた。


「ふん」

と、言ったかどうかは、定かでない。




家に帰ってデスクに座り、パソコンの画面を立ち上げた時、ふとそのことを思い出したので書いておくことにした。


『今日、猫に道をゆずった』

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「花火って、きれいだよねぇ」


夏の虫が鳴く、ほんのりと蒸し暑い夜。
うちわを持って、店の縁側に座ってぼんやりといると、時々車のヘッドライトが曲がり角から通り過ぎるのが見えた。
暗闇に遠ざかる光が儚い感じがして、花火を連想したものだから、思わず声が出てしまっていた。聞かせるつもりではなかった。だから、かすかに呟く声ではあったけど、たまたま隣に座っていた彼女は、
「そうかしら」と、一言答えた。

「え、きれいじゃない?」
「もちろん見た目はきれいな方がいいけれどそこを重要視するのはよくないわ。
やっぱり中身というか、性能がいいかどうか。それが問題よ」
「…性能が?」

というと、仕掛け花火のことだろうか。
巧みな計算で広がる色の洪水。
形によって変わる、空を泳ぐような動き。
職人の技が光るところではある。

頷いた。

「やっぱり大仕掛けなのはかっこいいもんね」
「あら、大きいのはダメね。今はなんでもコンパクトでなきゃ。そこから
裏打ちされる技術なのよ」
「…コンパクト」

あまり小さな玉では、火薬の量も少ない。
花火の直径も小さくなるのは当然で、さみしい気がする。

それとも。
小さいということは、やはり線香花火のような手で持つものだろうか。
ただ、そこに技術があるかどうか、いやあるだろうけど、どうなんだろう。

首を傾げた。

「私も小さいのをするのは好きだけど」
「する? ああ、使うのね。私も好きよ。便利だもんね」
「え、便利なの? …あれ?」

戸惑った。

小さいのに、技術のつまっている、便利な魔法の筒。
それはどんなものだろう。


急に不安になった。

「…花火、だよね?」

「え?」
彼女は私の顔を見てゆっくりと答えた。




「もちろんカーナビよ」

彼女を顔を照らして、ヘッドライトが通り過ぎていった。
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