魔の給料日⑥
魔の給料日シリーズ最終回!!
読者の皆様お待たせいたしました。
アクアの、夫の運命はいかに??
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ギャンブル依存症とは
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約束の時間の約5分ほど前、
アクアと夫は井上さんの事務所前に着いた。
時間的にはパーフェクトである。
しかし、夫はすぐに車から出なかった。
少しこわばった顔をし、それから深呼吸をした。
それなりの気負いがあったのだろう。
「アクア、車のエンジンつけておくから。
適当にして待ってて。ちょっと長くなるかも知れんけど…」
「うん、わかった。頑張って。」
「うん、行って来るわ。」
外は小雨が降っていた。
まるでアクアたちの気持ちを投影してるかのようである。
夫は車を出ると背中を丸め、小走りで向かいの事務所に入っていった。
『大丈夫だろうか?』
不安が押し寄せる。
そんなアクアに気付いてか気付かないでか、
小さな杏里はテレビを見ながらご機嫌に過ごしていた。
「すいません、水野ですが…」
「あっつ、奥へどうぞ。」
夫が井上さんの事務所に訪れた時にはすでに阪本さんも席についていた。
予想通りである。
異様な緊張感に包まれた小さな個室。
戦いの火蓋は気って落とされた。
夫はなかなか帰ってこなかった。
事務所に入ってから一時間ほど過ぎていたと思う。
杏里は暇をもてあましてとうとうぐずり始めてしまった。
『遅いなぁ。杏里はぐずりだすし、それにもう時間がない。
今帰ってきたとしても会社に18時半までに帰って全てを仕分けるのは無理や…』
事務員の退社予定時刻は18時半である。
それまでに何とか処理をしたかったのだがそれも難しくなっていた。
夫は夫なりに今、眼の前の事務所の中で戦っていることはわかっている。
しかし、アクアも余裕がない、
苛立ちが少しずつ膨らみ始めていた。
『あかん、このままじゃ爆発しそう。』
大きなお腹で助手席に1時間座り続けるだけでも苦痛なのに、
そのうえ杏里の面度も見ているのだ。
「杏里、お腹すいた?
コンビニに行ってパンでも買おうか?」
アクア窮屈なスペースから外に出ることにした。
ずっと待っていたところでいつ帰ってくるかもわからない。
小雨の降る外の空気は排気ガスや空気中の埃なんかが
雨で浄化されたようでとても気持ちよかった。
コンビにはそこから目に見えるほどの距離に位置していた。
『少しくらい車を離れても大丈夫だろう。』
アクアはなるべ雨がかからないように杏里を抱きかかえると
小走りでコンビニへ向かった。
少しの外出はアクアにも杏里にもとてもいい気分転換になった。
イライラした気持ちがリセットされたようだ。
杏里は嬉しそうに車の中でパンを食べている。
少し気持ちが落ち着いたところでアクアは覚悟を決めた。
『会社に電話を入れないとな…』
事務員の退社時間はもう目前だった。
「お疲れ様、アクアです。」
「お疲れ様です。」
「ごめん、今いいかな?」
「はい。大丈夫です。」
「ごめんな、連絡遅くなって。もうすぐあがる時間やんな。」
「あっ、大丈夫です。」
「実はちょっと時間がかかってて、
今社長と一緒やねんけど帰るまでに
もう少し時間がかかりそうやねん。」
「そうですか、
じゃあ先に帰っておきますね。」
何かを察していたのだろうか?
嫌な声も出さずさらっとウケ答えてくれる事務員達。
そんな彼女達に心底感謝をした。
それも普段のコミュニケーションあってのものだと思う。
いつも彼女達はアクアの見方でいてれた。
しかし、営業マンはどうだろう?
夫と、社長とそれほどまで気持ちで繋がっているだろうか?
今はただ、最低限の信頼を維持する術として
彼らの退社までに給料を用意するしかない。
責任が重くのしかかる。
電話を切って一息ついた頃、やっと夫が帰ってきた。
「ごめん遅くなって。」
夫の顔に少し笑顔が戻っていた。
「どうやった?」
「満額じゃないけど
借りることが出来たわ。」
『良かった…』
ものすごい安堵感が押し寄せて言葉にならなかった。
かき集めて用意したお金と借りたお金を合わせると
何とか社員達の給料を用意することが出来たのだ。
夫の顔も緩んでいる。
二人でこうやって笑い会えたのは本当に久々だった。
「さあ、いこっか!」
夫は急いで車を会社へ向かわせた。
今回の出来事は
『お金の回らない苦しさ』
を夫の胸に焼き付けるいい機会になった。
『何とかなる』
その言葉がいかに不確実であるかを彼自身体験したのだ。
今回は確かに何とかすることが出来た。
しかし、夫は事務所の中で相当絞られたようである。
「もう今回が最後」
と念を押されてきたようだ。
「今回が最後」
その言葉が脅しではないことを彼は理解しただろう。
そう、問題は次からなのだ。
基本的な問題は何も解決されていない。
ホッとできるのもつかの間だった。
しかしアクアは信じていた。
夫さえ本気になれば売り上げも資金繰りも好転していくはずだと…
夫はこれを機に再起することが出来るのだろうか?
全ては夫に託すしかない。
そう思われた。
しかし、意外な人の出現により
自体は又変わっていくこととなるのだ。



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