逃亡②
妻の吐く暴言を聞いてしまった夫
彼の心はどうなるのだろうか?
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ギャンブル依存症とは
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「聞こえたから。」
その短い一言はアクアを凍りつかせた。
アクアの住む小さなマンションはリビングからの声が玄関まで筒抜けになる。
その玄関ドアの向こうに夫がいるとも知らず、
暴言を吐き続けていたのだ。
それも、勢いに任せて思ってもいないようなひどいことまで…
言い訳の余地もなかった。
「お前の気持ちはわかった。」
夫は怒っているようでも悲しんでるようでもなかった。
廃人のように曇った目をして感情のない言葉をアクアに投げつけたのだ。
怒ってくれた方がまだましだった。
夫のその反応は悲痛この上なかった。
「わかったって何が?」
「お前の会話が聞こえてたっていったやろ?
そう思われても仕方ないなぁ、って思ってン。」
気力のないこの言葉を吐くこの男は一体誰なんだろう?
『こんな人、アクアの愛した男じゃない。』
そう思うと怒りと涙がこみ上げてきた。
「そんな事言う前にアクアに言うことはないの?
二日も家空けて何考えてるの?
バカラに行ってたんやろ?
アクアがそう言ってしまう気持ちもちょっとは考えてよ!
この二日間どんな気持ちで過ごしたと思う?
どれだけ苦しかったと思うの?」
「ごめん、
だから仕方ないなぁ、って思って。
俺が全部悪いし、
お前が出て行っても仕方ないやんか。
俺には止める権利なんてないもん。」
「それでいいの?
そんな簡単なもの?
貴方にとって家族ってそんな簡単なもんなん?
失って取り戻せるものと、そうでないものが世の中にはあるねんで。
貴方には、これだけは手放したくないってものはないの?
家族がそうじゃないの?」
悲しみと苛立ちでとめどなく涙が流れてきた。
それでも目の前の男は、
顔色一つ変えずに廃人のような顔をしているのだ。
「手放したくないけど、仕方ないやん。
俺が悪いねん。
俺が…」
「なんでそうなんよ!
手放したくないならなんで必死にならへんのよ!
必死にあがいてつなぎ止めようとせーへんの?
なんでそうしてくれへんのよ!!!!!!!!!」
アクアは半分叫び声に近い声を上げて夫の両腕にしがみついた。
しかし、夫には何も響かない…
目の前の男は相変わらず血の気のない顔を変えずにこう答えた。
「仕方ない、俺が悪いねんから。」
この生活のなかでアクアを支えていてくれたもの。
それは夫への愛と家族の絆だけだった。
憎んでも憎みきれない。
離れたくても離れられない。
その念がアクアを支えていてくれたのだ。
それは夫の中にも少しは残っていると思っていた。
『家族だけは失いたいくない。』
そう思っていてくれていると思っていたのだ。
しかし、この瞬間、そんな小さな支えがもろくも崩れ落ちてしまった。
目の前の男がいとも簡単に踏み潰してしまったのだ。
この瞬間、アクアの中の何かが壊れてしまった。









