手当たり次第の読書日記

新旧は全くお構いなく、読んだ本・好きな本について書いていきます。ジャンルはミステリに相当偏りつつ、児童文学やマンガ、司馬遼太郎なども混ざるでしょう。
新選組と北海道日本ハムファイターズとコンサドーレ札幌のファンブログでは断じてありません(笑)。


テーマ:

今回も前回と同じく、「事実」を、ドラマの中でどういうものとして描くのか、が重要だった回だと思います。

山本琢磨のしたことは、確かに申し開きのしようもなくみっともない。人として非常に愚かしい、擁護の余地のないことです。しかし、現代の私達の目から見たら、だからといって命を捨てなければならないようなことでは全然ない。

だから今回の話は、龍馬がいかにヒューマニズムに溢れていたかを描こうとしたものだ──という風に受け取ってしまったら、多分それは違うと思うんです。

この時代の、しかも武士の価値観からいったら、半平太は決して冷酷なことを主張している訳でも何でもなく、それどころか、当たり前のことを当たり前に述べているだけに過ぎない。

龍馬のほうがおかしいんです。武士というのは、「生き恥をさらす」ことを何よりも嫌がるもの。後ろ指をさされて生きるくらいなら、死んで恥を雪ぐのが正しいというのが常識です。藩の上役達や半平太が琢磨に切腹させようとしたのだって、藩の体面のみを考えたものだとも言い切れない。罪人として裁かれるよりはこの方がまだ本人にとって恥辱の度合いが小さいと、そういう配慮だとさえ考えられるんです。

けれども龍馬は、何が何でも生きろ、と言う。

周囲の全てがそれを許さないなら、全てを捨てて逃亡者となってでも。

美しく死ぬより、みっともなく生き延びることの方を選べ、と。

しかし山本家の両親は、多分息子が死ななかったことを手放しで喜びはしないでしょう。武士の面目よりも自分個人の命のほうを惜しみ、親も主家も捨てて逃げ出した卑怯者、親不孝の極みだと嘆くでしょう。

半平太も、ただ逃げられましたでは済まない。監督不行き届きの責任は免れず、国許へ戻ることになります。

つまり、龍馬のしたことは、「事を収める」という観点から見ればむしろ逆、事態を余計にぐちゃぐちゃにしただけともいえるんです。実は琢磨が切腹するのが一番、事が丸く収まることでした。皆で泣いて、でもこれ以外になかったんだと自分に言い聞かせて。

だから今回のストーリーで描かれた龍馬と半平太の際立った違いは、人の命をどちらが大切にしているか、というようなことではない。

半平太にとって、倫理観や美意識は、まず何よりも、「武士として」という立ち表れ方をしていると思うのです。でも龍馬にはそれがない。

また、半平太には主義、信念、目標というものがあります。それを実現する、というゴールを常に彼は見失わず、自分の行動の全てをそれによって選んでいます。

けれども龍馬にはそれもない。いってみれば龍馬は、からっぽの器です。

だから、そこには何でも入る。

琢磨の命を助けたいと思い詰めたら、商家の店先で土下座だってできる。たぶん半平太には死んでもできない、というか、思いつくことさえ決してないだろうことも。

心身ともに武士としての秩序の中にある半平太と、いくつになっても生まれたままの子供のような龍馬。

2人の最大の違いは、そこだと思うのです。

そういえば今回は、1人だけ蚊帳の外のようだった弥太郎。牢の中という変化に乏しい環境下にいたのでは仕方がありませんでしたが、彼もまた、半平太とは決定的に違うんですよね。

相変わらずの受け売りですが、武士は、商売というものを軽蔑するものだったそうです。金銭は不浄なものだから、素手では触らないという人さえいたといいます。

弥太郎が牢の中で老人から聞いた、安く買って高く売るという商売の基本。たぶん半平太なら聞いただけで軽蔑し、低劣な精神だと断じるような種類のことです。けれども、弥太郎にとっては天啓となった。

絶望的な貧困の中から、己の才覚のみで抜け出せるかもしれないという希望。

武士は武士でも最下層の地下浪人である弥太郎にとって、武士らしさを守ることは、むしろ無意味な痩せ我慢でしかなかったかもしれません。

AD
いいね!した人  |  コメント(2)  |  リブログ(0)

青空百景さんの読者になろう

ブログの更新情報が受け取れて、アクセスが簡単になります

AD

Ameba人気のブログ

Amebaトピックス

      ランキング

      • 総合
      • 新登場
      • 急上昇
      • トレンド

      ブログをはじめる

      たくさんの芸能人・有名人が
      書いているAmebaブログを
      無料で簡単にはじめることができます。

      公式トップブロガーへ応募

      多くの方にご紹介したいブログを
      執筆する方を「公式トップブロガー」
      として認定しております。

      芸能人・有名人ブログを開設

      Amebaブログでは、芸能人・有名人ブログを
      ご希望される著名人の方/事務所様を
      随時募集しております。