手当たり次第の読書日記

新旧は全くお構いなく、読んだ本・好きな本について書いていきます。ジャンルはミステリに相当偏りつつ、児童文学やマンガ、司馬遼太郎なども混ざるでしょう。
新選組と北海道日本ハムファイターズとコンサドーレ札幌のファンブログでは断じてありません(笑)。


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時代劇や時代小説でも、というかだからこそ、現代や現在の出来事を強く意識させられることがあります。

過激な尊皇攘夷に急速に傾斜していく武市半平太。何が彼を駆り立てているのか。ペリー艦隊来航や開国が勿論その理由です。でも、本当にそれだけなのか。

大塚英志氏が以前に指摘していた、現代日本の「愛国的な」青年達に通じるものがあるんじゃないか、という気がふとしたんですね。

大塚氏の目に映る彼らは、「自分」を「日本」に投影してしまっている存在です。日本が偉くて立派で格好良い国であるならば、すなわち自分自身もそうなったような気持ちになれる。いわば、甘ったれているんだ、と。

半平太が現代青年のように甘ったれているなどとは思いません。でも、どこかに「逃げ」があると思うのです。

どんなに聡明でも、深く物を考えていても、人望ある道場主であっても、藩主への忠誠心が厚くても、身分が低いというただ一点のみで顧みられないという理不尽。

そこから脱する方策としての「尊皇攘夷」ではなかったか。

毎度毎度幕末というと『風雲児たち』の受け売りなのですけれども(汗)、尊皇、勤皇というのはただ単純に天皇家を尊ぶ、敬うというだけのものではないんだそうですね。「徳川幕府ではなくて天皇家」というところに意味がある。

徳川家の一門でありながら、宗家よりは一段下がった御三家に格付けされたことを納得しきれなかった水戸徳川家にとって、宗家が一番偉いのではない、ということが救いになった。だから水戸家は尊皇思想の総本山なのだそうです。

領主より仏様、神様のほうが偉いとした一向宗やキリシタンの信仰が、信徒である庶民にとっては救いとなり、支配層にとっては危険思想であったのとおんなじことですよね。

下士である半平太は上士よりも低い、卑しい、劣っている存在とされる。それは現行のシステムの中ではどうあがいても絶対に変わらない。

けれども、違う理屈の中でなら。

「土佐」という括りを外し、「日本人」という概念を獲得できたなら。

今度は司馬遼太郎御大の受け売りですが(大汗)、この幕末という時代、勤皇家の若者達は「上御一人を除いては皆同じ」ということを好んで言っていたそうです。尊いのは天皇ひとりだけ、あとの人間は皆平等だ──そんな、身分制度緩和の理想としても勤皇思想はあった訳です(実際には理想通りには全然行かなかった訳ですが……)。

だから半平太は、「日本」より更に広く大きな現実を見ることはできない。目の前に提示されていても尚。

「日本」が一番大きいのではなかったなら、彼のアイデンティティは崩壊してしまうから。

一方、岩崎弥太郎には半平太のような無意識の「逃げ」はありません。自分にとって「日本」なんかはどうでもいい、自分の現状を打破したいだけだと、はっきり自覚しているし口にも出す。しかも、わざわざ半平太のいる前で殊更に高言したのは、或いは半平太自身も気付いていない無意識の本心を、悟っていたからではないかとも思えます。

しかし勿論、今の半平太にそんなことを言っても、短絡的な反応を生むだけ。それでも武士かと叫んだ半平太の心中は、さぞかし弥太郎への怒りと軽蔑に満ちていたでしょう。……けれども、そこには多分、白札郷士が地下浪人を見下し、「所詮、そういう身分だから」とレッテルを貼る意識がある。

ひとくちに「下士」といっても、決して同じではないんですよね。

挑発する弥太郎、激昂する半平太、苛立つ龍馬……この3人のシーンを見た時、彼等はまるでジャンケンのようだと思いました。

3人が3人とも、それぞれ他の2人には理解できないものを抱えている。

一番身分の高い半平太は、だからこそ却って、路上で上士に威張られるのとは全く別種の屈辱をなめていますが、それは弥太郎や龍馬には想像もできないこと。

武士の美意識に照らせば浅まし過ぎる弥太郎の上昇志向も、生まれてこのかた貧困しか知らない彼の境遇を思えば責められない。生活苦というものを全く知らない龍馬や半平太とは根本的に違う。

そして極楽トンボでノンポリの龍馬。半平太のような思想も、弥太郎のような学問もない。けれども、この中で彼ひとりだけが、黒船の実物を見ています。そしてバカはバカなりに、いや、バカだからこそ、先入観もなければ「自分の分際で」という尻込みもなく、ただひたすら懸命に考えようとしている。でも、体験を共有していない相手にそれを伝える言葉を、彼は持たないのです。

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