手当たり次第の読書日記

新旧は全くお構いなく、読んだ本・好きな本について書いていきます。ジャンルはミステリに相当偏りつつ、児童文学やマンガ、司馬遼太郎なども混ざるでしょう。
新選組と北海道日本ハムファイターズとコンサドーレ札幌のファンブログでは断じてありません(笑)。


テーマ:
厭な小説/京極 夏彦
¥1,890
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発売を知ってから実際に買うまで、かなりの逡巡がありました(笑)。

おや京極ファンなのに何で、と思われるかもしれませんが、実はこう見えても全ての京極作品を購入している訳ではありません。『どすこい(仮)』は立ち読みして大いに楽しみましたが買いませんでした。その後『どすこい(安)』になっても『どすこい。』になっても買いませんでした。『南極(人)』も買ってません。ていうか、買わないぞと心に固く誓っております(笑)。

と、いうようなのとは、今回の逡巡の理由はまあ違うんですけれども。

だってタイトルがこうですよ。厭な小説。

帯を見ても広告を見ても、著者自身がゲラを通し読みして厭な気分になっただの読んで後悔しても知りませんからねだの、そんな言葉のオンパレード。悪寒、嫌悪、拒絶…あらゆる不愉快、詰め込んだ日本一のどんびきエンターテインメント」っていうんですから……京極夏彦の筆力を以てしてそんなことをやられたら、一体どういうことになるのか。

しかも書店で手に取って見た現物は、新刊なのにわざわざものすっごく古い本のようにしてある装丁です。喜国雅彦「本棚探偵」シリーズのような、ではありません。あれは「昔に出版された本のような書体やイラスト」ということでしたが、これは、「出版されてから何十年も経って紙が古く汚くなってしまった本」という風につくってあるんです。更にわざわざご丁寧なことには、ページを開けば小さな染みが……はい、本に挟まれて潰れてしまった蚊の死骸までちゃんと付いてます(爆)。

そして最初の1編「厭な子供」の冒頭を見てみれば、理不尽極まりない上司の言動にうんざりしきっているサラリーマンの姿が……ここで私は本を閉じ、平積みの山の上に戻して書店を出てしまったのでした(汗)。

しかしそれから数日後。

新聞に載った新刊書評の中の一語に目が止まりました。

ん? 「ホラー」って書いてある?

あ、それなら……。

という訳で買いました。読みました!

いやあ、さすがはやっぱり京極夏彦です。こういう題材の時にこんな言い方をするのも変なんですが、今回もまた面白い! 惹句には「イッキ読み厳禁のアンチ・エンターテイメント」などと書かれていたりしますが、これは真に受けちゃダメですよ(笑)。

この作品世界に浸るためにはやはり一気に読んだほうがいいですし、十二分にエンターテイメントです。

これだけ執拗に克明に、ありとあらゆる種類の「厭」が描き尽くされていても、なんです。

登場人物達が経験する種々の「厭」ときたら、もう絶対に同じ目にはあいたくないと心から願いたくなるようなものばかり。彼らが味わう嫌悪、徒労感、絶望のさまの描写には、本当に身の毛がよだちます。

なのに、でも、にもかかわらず。

即ちこの小説の読後感が悪い、ということには全くなっていかないのが凄い。

あまり上手くない書き手だと、作中の人物が経験する不快な体験の描写が、そのまま読者にも同じ不快を強いることになってしまうことがままあるんです。ヤな奴のヤな言動を、そいつがヤな奴だということを伝えるために詳しく述べる。その結果、読者が「そうそう、こういうヤな奴っているんだよね」と思ってくれる……のを通り越してしまって、「何でこういうことまでいちいち書かなきゃならないの? 読んでて物凄くいらいらする!」になってしまったりするんですよね。

京極夏彦はそこら辺のさじ加減が絶妙に上手い。「多々良先生」シリーズの、沼上君と多々良先生のやり取りとかね。自分勝手が肥満して服を着て歩いているような多々良先生に振り回されっ放しの沼上君、いつもいつも言い合いの末キレる寸前、ということになっている訳ですが、この2人の不毛な会話が何度繰り返し出てきても、読者がうんざりすることはないんです。沼上君は憔悴しきってますが、読者は抱腹絶倒なんですね。

同じことがこの作品についても言えるんです。「厭」なのはあくまで登場人物達だけ。読者が味わうのは、第一級作品ならではのスリルとサスペンスですよ。

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