手当たり次第の読書日記

新旧は全くお構いなく、読んだ本・好きな本について書いていきます。ジャンルはミステリに相当偏りつつ、児童文学やマンガ、司馬遼太郎なども混ざるでしょう。
新選組と北海道日本ハムファイターズとコンサドーレ札幌のファンブログでは断じてありません(笑)。


テーマ:
漆黒泉 (文春文庫 (も19-2))/森福 都
¥730
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この人の長編は初めて読みました。

舞台は宋代の中国。開封の都で茶商を営む晏延政の一人娘・芳娥は、「ゆくゆくは男をも凌ぐ長身に成長するであろう」と、この時代の女性としては非常にありがたくない予言をされてしまった少女。わずか8歳で時の宰相の息子と婚約することになりますが、それからいくらも経たずに彼は急逝してしまいます。

それから9年後。幼い日にたった2度会っただけの亡き婚約者を慕い続けたまま17歳になった芳娥は、彼の遺志を継ごうと決意を固めました。予言の通りの長身に成長した彼女は、女ながら武芸も身につけています。婚約者の政敵だった男を葬り去ろうというのですが──。

という発端部分を読めば、男装の美女が大活躍する、これは愉快痛快冒険活劇か?と思います。確かにそういう要素もありますが、しかしそれだけではありません。二重三重に伏線が張り巡らされた堂々の謎解きミステリでもあるのです。

亡き婚約者の敵を付け狙う芳娥の前には、次々と色んな人々が登場してきますが、これがどれも一筋縄ではいきません。たとえば、幼い日の彼女にありがたくない予言をした、雅号を「奉元先生」という人物。「卜占とは異なる不可思議なやり方で、世の中の様々な出来事を予言し見通すと噂されていた」「半月先の天気や水の湧く場所、流行病の兆しなどを幾度となく言い当て、人々を驚かしてきた」と紹介されると、まるで仙人か何かのようにも思えます。女の子が長身になるなど、と芳娥の父親が予言に渋い顔をすれば、背が高ければいいことがある、男に化けられるではないか、と突拍子もないことを言い出すのもそうですね。芳娥は子供心に、男に化けられれば、普通の娘でいるよりもずっと世界が広がるのだということに気付き、胸をときめかせます。奉元先生は、このぶしつけな予言をすることで、実は芳娥の前に世界への扉を開いて見せたのだといってもいいでしょう……。

と思ったら。

何だ何だこの人、仙人みたいだなんてとんでもない、思いっきり俗物じゃないかあ。しかも決して大物じゃない。大物っぽく振舞いたい小人物……。

と、全てがこんな調子です。物語が進むにつれて、ひとり、またひとりと芳娥が追う謎にかかわる人物が新たに登場してくるのですが、新しい登場人物が増えるごとに、先に登場していた誰かが最初とは全く違った顔を見せることになったりするんですよね。その度に謎の解明も行きつ戻りつ、二転三転を繰り返します。全ての真相が明らかになるのは本当に最後の最後。

最近のミステリの風潮からいえば、決して長過ぎるという分量ではありませんし、表面上のストーリーそれ自体はすいすいと快調に進みます。でもだからといって、読むほうも快調に飛ばしてしまったりしたら、必ず伏線を見落としてしまうことになるので要注意! どんな些細な(と見える)描写も、読み飛ばさずじっくり味わって下さい。最後の真相まで辿り着いたら、作者の筆力にきっと感嘆させられますよ。

巧い、とはこういうミステリのことをいうんだなあ。人目を引くタイムリーな題材の超大作も決して悪くはないけれど、私の趣味は、やっぱりこっちのほうですね。

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