手当たり次第の読書日記

新旧は全くお構いなく、読んだ本・好きな本について書いていきます。ジャンルはミステリに相当偏りつつ、児童文学やマンガ、司馬遼太郎なども混ざるでしょう。
新選組と北海道日本ハムファイターズとコンサドーレ札幌のファンブログでは断じてありません(笑)。


テーマ:
役にたたない日々/佐野 洋子
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一気読みしてしまいました!

物凄く大雑把に言ってしまうと、5年前からの著者の日常生活を描いたエッセイ、ということになりますか。著者略歴を見ると佐野さんは昭和13年生まれとありますから、60代後半の日々。

年をとっての一人暮らし。もっと年をとった母親は痴呆の症状が出て老人ホームにいて、自分もしょっちゅう物忘れをするようになっていて、おまけに乳癌になって、手術をしたけど、やがて骨に転移して、余命2年くらいと言われて……。

あ、判った。判ったからもういい、読まなくてもいい。と思った人、いませんか?

高齢女性の厳しい寂しい孤独な生活が書かれてるんでしょ。役にたたない日々、ってつまり、年寄りの自嘲だよね? そんなの読んだら、物悲しい気持ちになるからヤだなあ……。

と思ったら大間違いです。


 六時半に目が覚めた。目が覚めるととび起きる人がいるそうだが、信じられない。起きて何するのだろう。枕のあたりをバタバタたたいて手にさわった本『ベトナムから来たもう一人のラストエンペラー』(森達也)をうとうとしながら読む。私はベトナムについて何も知らない。ベトナム戦争をテーマにしたアメリカ映画の情報とテレビのニュースしか知らない。それにしても白人はひどい。有史以来ひどい。

 お前たち何様だ。頭がはっきりしないので腹が四分の一くらいしかたたないうちにまた寝てしまった。目が覚めたら八時ちょっと前で、寝たままワイドショーを見た。腹をかかえて笑った。にせ有栖川何とかがにせ結婚式をして、石田純一はノコノコ行って五万円のご祝儀を置いて来たそうだ。急に石田ナニガシが好きになった。幸せを感じた。幸せを感じているうちに起きようと気合いを入れた。


これが冒頭です。いかがですか!

朝食をとりにファストフード店に行くと、自分のような独り者らしい老女の客が4人いて、全員、煙草をふかしながら遅めの朝食中。「明日同じ時間に来たら同じ顔ぶれかもしれない。そして誰も人と話をしない」と思った佐野さん、その次に感じたことというのが、意味もなく力がわいてきた」──わいてきた、ですよ。これが空元気じゃないんです。

友達が引っ越し祝いをくれるというので、リクエストして送って貰った台所用品が届いた日、自分が同じ物を買っていたことに気づいて愕然。しかも買ってから2ヵ月は経っている。毎日目に入っていた筈なのに……。

自分が呆けたかというショックと友達への申し訳なさとで、佐野さんは泣き出してしまいます……ところが。「しかしその時私の頭の中はずるがしこく働いた。泣いているうちに友達にあやまろう。私は泣き止まないうちに電話した」って(苦笑)。

癌患者になったって、佐野さんはこんな佐野さんのままです。空元気でも負け惜しみでも達観でも悟りでもなく、心底、癌で死ぬ人なんて珍しくないと思っています。入院中のお見舞いに息子の友達が「冬のソナタ」のビデオを持ってきてくれて、たちまちハマる。韓流ドラマを次々観て、ロケ地にも旅行して、堪能し尽くした次には香取慎吾にハマり中村獅童に心奪われ、三谷幸喜作品のDVDを全部買い……「私は自由業で年金がないから九十まで生きたらどうしようとセコセコ貯金をしていた」けど、余命2年とは「ラッキー」だと、外車に綺麗なお皿にお洒落な寝巻きにDVD、欲しい物を気にせずどんどん買い始めます。


 来たジャガーに乗った瞬間「あー私はこういう男を一生さがして間に合わなかったのだ」と感じた。シートがしっかりと私を守りますと云っている。そして余分なサービスは何もない、でも心から信頼が自然にわき上がって来た。最後に乗る車がジャガーかよ、運がいいよナア。

 そうしたらやきもちをやいた友達が、「佐野さんにはジャガーは似合わない」と云ってたそうだ。何でだ、私が水呑百姓の子孫だからか。口惜しかったらお前も買え。早死すれば買えるんだ。私は七十で死ぬのが理想だった。神は居る。私はきっといい子だったのだ。


誰にも似てない佐野洋子。こんな人、多分他にはいませんよ。

この本、帯に「人生をめぐる名言がゴロゴロ転がっています」とあるんですよね。確かにその通りで、全編名言だらけといってもいいくらいではあるんですが、それを惹句として帯に載せてしまうというのはちょっと引っかかる気持ちもあったりします。結果として名言になってはいるけれども、佐野さん自身には別に、名言を吐いて読者を導いたり啓蒙したりしてやろうなどという意図はないのですから。なのにこんなコピーをつけたら、夢をかなえるゾウがどうしたこうしたとかいう類いの本と、似たようなもんかと思われたりしかねない……。

とは思うものの、或いはこれは編集者の熱意のあらわれなのかも、とも感じるんですよね。

判り易く、手っ取り早く、導いたり啓蒙したりしてほしくて、そういう本ばかりを選んでいる人達。そんな読者のもとにも、その手の安直さとは対極の、「佐野洋子」という名の爆弾を何とかして届けようと、知恵を絞った結果なのかもしれないな、と。

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