『プロ野球の一流たち』 二宮清純 | 手当たり次第の読書日記

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新旧は全くお構いなく、読んだ本・好きな本について書いていきます。ジャンルはミステリに相当偏りつつ、児童文学やマンガ、司馬遼太郎なども混ざるでしょう。
新選組と北海道日本ハムファイターズとコンサドーレ札幌のファンブログでは断じてありません(笑)。

プロ野球は交流戦が始まりました。ファイターズ、今のところ幸先よく連勝スタートです。

……しかし、今日の対ドラゴンズ初戦ではちょっと気になったことがありました。ファイターズ先発の多田野投手が、頭へのデッドボールで危険球退場となった場面なんですけれども。

デッドボール、即、退場の宣告、ではなかったんですよね。最初は単なるデッドボール扱いで、するとドラゴンズ落合監督が抗議に出てきて、審判団協議の結果、「危険球」。

この、プロ野球で時々起こる「抗議したら判定変更」というの、どうも釈然と致しません。今回多田野君がぶつけたのはすっぽ抜けの緩いボール、バッターも避ける動作をしておらず、これで「危険」かなあとファンごころとしては思う訳ですが、それでもぶつけてすぐにその判定が下ったのだったら何とも思いませんよ。ルールだから仕方ない、で終わりです。

けれども、抗議で判定が動いた、という形になってしまうとですね……物凄く納得し難い心情になってしまう訳なんです(苦笑)。

という訳で、この3回の時点で稲葉選手のソロホームランにより1点先制していたファイターズ、リリーフ陣予想外の(爆)好投によりこの僅か1点のリードを最後まで守り切って勝ったんですけれども。試合終了の瞬間、思わず「ざまーみろ!」という気分になってしまったことをここに懺悔致します(汗)。

多田野君、上々の立ち上がりだっただけに残念でした。この次また快刀乱麻の投球術を見せてくれることを期待しています。



プロ野球の一流たち (講談社現代新書 1941) (講談社現代新書 1941)/二宮 清純
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うちの父親が新刊広告を見つけてわざわざ買いに行った本です。買った人間が読むより先に読んでしまいました(笑)。

タイトル通り、ベテラン選手や監督経験者へのインタビュー、取材を中心にした、各自の野球論の紹介が全体の2/3ほどを占めています。イーグルス野村監督が「配球」を語り、“怪童”中西太さんが「打者の育成」を語り、ベイスターズ工藤投手が「バッテリー」について語る、といった按配ですね。残り1/3は、二宮さんが見るアメリカ日本それぞれの野球界について。

中西さんのバッティング論など専門的な技術の話もかなりたくさん出てくるのですが、自分に野球経験のない素人読者にも面白い本でした。色んな選手のエピソード集としても読めるんです。

たとえば、ある選手の中学生時代。


 相撲部の監督に口説かれたんです。“全国大会で優勝するためには一人足りないからオマエやらないか”って。

 最初は断りました。“勘弁してください。あんなまわしなんか付けて、恥ずかしくてやれないですよ”って。

 でも、あまりにも熱心に口説かれたので、結局“ちょっとやってみます”と言って一、二日練習した。それで愛知県大会に出たら優勝してしまった。

 その結果、蔵前での全国大会にも出場しました。僕の成績は団体戦で二勝一敗。五部屋くらいからスカウトがきました。

 もし、あのまま相撲を続けていたら、悪くても大関にはなっていたでしょうね(笑)。


これ、一体誰のことだと思いますか?

去年のホームラン王、イーグルス山崎選手なんです!

インタビューではない二宮さんの文章で、「清原和博は強打者か」という1篇が印象に残りました。

2006年4月、ファイターズの先発投手2人がデッドボールをめぐってのトラブルに見舞われています。当時ホークスのズレータ選手が金村投手のデッドボールに激昂、殴って怪我をさせるということがあったかと思えば、ダルビッシュ投手のデッドボールを手に受けた清原選手が「命をかけてマウンドに走っていき、そいつを倒したい」との発言をして、物議をかもしました。

ズレータ選手の件では「故意にぶつけられたから怒ったに違いない」→「報復されても仕方ない」という声が出てきたりさえしていましたが、二宮さんはこう書いています。


 清原にしろズレータにしろ、死球を受けたとはいえ胸元付近のボールなのだ。他のバッターなら、ここまでは怒るまい。なぜ、彼らはここまで過激に反応するのか。理由はただひとつ、彼らはともに内角に弱点を抱えているからである。

 胸元付近の死球を受けたにもかかわらず何もメッセージを発しなかったらどうなるか。ピッチャーはさらに厳しいコースを執拗に突いてくるだろう。こうなると、もう手の打ちようがない。

 ズレータは行動で、清原は口で反撃に打って出た。インコースを打ちこなす技術のない彼らにとって、ピッチャーの“内角侵攻”から我が身と生活を守るには、これしか方法がなかったのである。


2年後の今になって、やっと、腑に落ちた、という気分です。