手当たり次第の読書日記

新旧は全くお構いなく、読んだ本・好きな本について書いていきます。ジャンルはミステリに相当偏りつつ、児童文学やマンガ、司馬遼太郎なども混ざるでしょう。
新選組と北海道日本ハムファイターズとコンサドーレ札幌のファンブログでは断じてありません(笑)。


テーマ:
深淵(上) (光文社文庫)/大西 巨人
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読み終わったのはもう何箇月も前のこと(確かまだ去年のことだったような/汗)。

どうにも感想を書きあぐねて、ずっと放置してしまっておりました。

単につまらなかった、とか、期待外れだった、とかいうのとも違うのです。そもそも、そうなら「なーんだ」と本を閉じてしまってお終いで、わざわざブログに書こうとは思いません。

うまく言葉で表せるようなすっきりとした形では浮かんでこない読後感の切れ端を、それでも書き留めておかなければという思いにかられる本ではあるのです。あるのですが……。


ふと目覚めると、麻田布満は北海道釧路市にある病院のベッドの上にいた。昨晩は、ここから遠く離れた西海地方の旅館に泊まっていたはずだが……。看護婦との噛み合わぬ会話から、麻田は十二年間の記憶をすっかり失っていることを知る──。自宅に戻り、徐々に平穏な暮らしを取り戻しつつある麻田に、知人・橋本勇二の冤罪事件に関する重要な役割が巡ってくる。


電車の中で麻田布満は「秋山君」と声をかけられた。失われた十二年間の記憶を知るその人物丹生哲彦によれば、麻田は「秋山信馬」として西海地方の松浦県宝満市で暮らしていたのだという。ある日、当地で起こった殺人事件の証人として秋山宛に召喚状が届いていると、丹生から手紙がきた。麻田は事件の真相と自らの記憶の空白を明らかにするため、宝満市へ向かった。


最初のものは文庫本上巻の、次のは下巻の、それぞれ内容の紹介文です。

光文社から出ていて、中身はこういう小説だといわれたら、さてはミステリかと思いますね。大西巨人といえば何といっても『神聖喜劇』ですが、この大長編もミステリ的興趣に満ち満ちていますし、『三位一体の神話』や『迷宮』の初出は「EQ」誌でした。

でも、ミステリ作家、ではないんですよね、この人は。

文学、の畑の人なんです。

そのことは判っていたつもりだったのですが……ついつい、ミステリを読む気持ちでこの本を読んでしまいました。

主人公の記憶喪失の謎に、また彼がかかわる殺人事件の裁判2つの成り行きに、夢中になって読み進み、そして──ラストまで来て。

……あ、あれ? これで終わっちゃうの?

肩すかしを食らったような気分になってしまったのです。

でも多分、私のこの「失望」は間違っている。だってこれは、「ミステリ」=謎の解決を目的としたエンタテインメント小説、ではないのだから。

と、この点については自分を納得させることはまあ出来たのですけれども。

頭に引っかかって離れない、小さなとげのような疑問があるのです。

文庫巻末の解説で、筆者の鎌田哲哉氏は、この小説の主人公麻田布満に対して数々の突っ込みを入れています。この男は自分では「生の根源的問題」を真剣に問うているつもりでいるのですが、しかし、彼には決定的に見落としてしまっていることがある。それは読者をどうにももどかしくさせるもので、鎌田氏は「もし許されるなら、私は自ら作品の中に飛び込んで思い切り話がしたい」と書いているのですが……。

このもどかしさは、作者が想定していたものなのだろうか。

麻田がこうした人間であるのは、作者がそういう風に設定したからなんだろうか。

ひょっとしてそうではないのではないかと、そんな気がしてならないのです。

鎌田氏が指摘している麻田の数々の弱点に、作者は或いは気付いていないのではないかと……。

……大西巨人も、遂に老いてしまったのか?

恐怖にも似たそんな思いが、読了して数箇月を経た今も、どうしても心を去りません。

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