手当たり次第の読書日記

新旧は全くお構いなく、読んだ本・好きな本について書いていきます。ジャンルはミステリに相当偏りつつ、児童文学やマンガ、司馬遼太郎なども混ざるでしょう。
新選組と北海道日本ハムファイターズとコンサドーレ札幌のファンブログでは断じてありません(笑)。


テーマ:
田辺 聖子
女のハイウェイ―カモカシリーズ 4

殆ど30年前のことでいい加減しつこいと思われるでしょうが、あと1つだけ、「江川問題」がらみで思い出した本の話を。
田辺聖子さん「カモカ・シリーズ」の中に、「悪役にごほうび」というタイトルで、この件についてお聖さんの思うところが書かれています。
「野球知らずの阪神ファン」というのがお聖さんの普段のスタンスですが、ここでは、意識して「野球に関心のない人間から見ると」という目線に徹してますね。
お聖さんが注目しているのは、江川問題それ自体よりも、それについて語る巷の人達。テレビのニュースキャスターも街頭インタビューされるおっちゃん達も、皆「顔色もつやつやとはりきって」「快さそうにワルクチをいっている」と喝破しています。


 江川一味の横紙破りは、日本の男たちを大よろこびさせた。
 つまり、ワルクチをいう喜びに酔わせた。
「ねえ、おっちゃん、みんなで心合せて一人の人間をにくむって、たのしいことなんやねえ」
 と私はカモカのおっちゃんにいった。
「さよう。江川こそ、輝けるカタキ役。讃えるべき悪役。江川にこそ、国民栄誉賞をあげて頂きたい」


注意して頂きたいのはこれ、お聖さんは決して皮肉や嫌味、斜に構えて言ってるんじゃない、ということなんです。
「江川の弁護するもん一人もあらへん、オール日本人の心を一つにむすびつけた」「江川憎し、江川ハラ立つという一点で、エリートも大衆も老いも若きも、シッカと手をにぎり合う、こういうことをさせる人は江川だけ」という存在。たとえるならば、「二・二六事件のあとの、阿部定サンみたいなものね」というんですね。
今も昔も、世間は深刻で胸の痛くなる事件が満ちあふれています。楽しい話題でないのみならず、「人によって批判や支持がマチマチでしてな。こういうのを話題に持ち出すと、むしろケンカを誘発しやすい」ということになる。
深刻過ぎて大きな声では言えない二・二六事件の後、阿部定事件には誰もが素直に驚いて素直に噂話に熱中したことでしょう。江川事件も同様に、人々の心を結びつける話題だ、というんですね。
お聖さんに言わせるとこの件は、楽しい横紙破り、ということになります。
「社会には、そういう無法はいっぱいまかり通ってる。たしかに横紙破りをしたのに、頬かむりして知らん顔を押し通してる奴はいっぱいあります」が、こういう話題は陰険で深刻、ちっとも楽しくない。「しかし、江川はどうか。コミッショナーはじめ、一味の横紙破りは、みな楽しい。誰もかれも、大声で指さしてどなれるというものです」


 おっちゃんによれば、みんな喜んで憎んでるそうである。
 陽気に江川をにくんでいる。ほがらかに憎んでる。たのしくにくんでる。
 うれしく、みんなを立腹させた。
 江川への憤怒で、みんな生きる希望をとりもどした。
 メシがうまくなり、職場の人間関係がよくなり、人の話の輪へ入っていきやすくなった。
 カタキ役が、人の心を和ませることはあるものである。
「イヤ、悪役というのは、世間に要るもんですなあ。江川クンにほうび上げとくなはれ」


てなことを言われたら、当時ほんとに愕然とし憤激した野球ファン、この事件でジャイアンツファンをやめてしまいましたなんていう人は、茶化すな!と、気分を害するかなあ。
でも、コアな野球ファンの捉え方だけではない、世の中全体の空気について、一面の真理をついていると思うのです。

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