手当たり次第の読書日記

新旧は全くお構いなく、読んだ本・好きな本について書いていきます。ジャンルはミステリに相当偏りつつ、児童文学やマンガ、司馬遼太郎なども混ざるでしょう。
新選組と北海道日本ハムファイターズとコンサドーレ札幌のファンブログでは断じてありません(笑)。


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小林 信彦
変人十二面相 (1981年)

得意の連想式読書法。『江川さんちのスグル君』を読んだので思い出しました。そういえば大の大人が江川をめぐってケンカになるという場面の出てくる小説を昔読んだっけ、と。
「中三時代」1980年4月号から7月号、「バラエティ」同年9月号から1981年4月号に連載されたという作品です。作者曰く「いま小学生である子供たちが、おとなになったとき、〈あのころ、どんな事件があったのだろうか?〉と考えるだろう。そういうときに、過去を想い出すヒントに、この小説がなれば、と思う」とのことで、冷夏だったとかVHSとベータの規格争いに未だ決着がついていないとか山口百恵引退とかジョン・レノン暗殺とか、色んな話が出てくるのですが、一番たくさん言及されているのがプロ野球についてなんです。
というのも、語り手の女の子のパパ。実質的主人公である彼の職業はマンガ原作者で、1年前から「すすめボトラーズ」というタイトルの野球ものの連載を手がけています。もっともそれまで野球を全く知らなかったパパなのですが、仕事となればやむを得ず、ルールを勉強しテレビで試合を観るうちに、いつの間にやら熱狂的野球ファンになってしまったからたまらない。コンビを組むマンガ家さんと編集者氏も加わって、何かといえば野球談義に花が咲くという訳なんですね。
で、時は1980年。


 とにかく、去年のシーズン中の江川バトウの世論は、ものすごかった。
 巨人ファンのお姉ちゃんでさえ、テレビの画面に江川がうつると、
 「うたれろ、うたれろ!」
 などと罵声を浴びせるくらいなのだ。


こういう時期に、にわか野球ファンとなったパパは、当然の成り行きというべきか、「情緒的というか、感情的というか、なんともつかないアンチ巨人なのである」という状態。王選手は偉いが巨人軍は感じが良くない、というお人です。
ところが担当編集者氏が、単に熱烈G党であるにとどまらず、江川ファンだったことで問題が勃発します。


 「なに?」
 原稿ができ上がったあとで、井戸さんとビールの乾杯をしていたパパは、血相を変えた。
 「きみ、江川を支持するのか?」
 「支持するとか、そういうモンダイではありません」
 井戸さんは、しずかに答えた。
 「たんに、江川には才能があると申し上げただけです」
 「なんというクールさ! まるで江川そっくりじゃないか!」
 パパは、かっとなって、叫んだ。


かっとなったあまり、パパは、江川をほめるのならば原稿は渡せないとまで言い出します。ここで編集者氏も、そんなことほんとにやられたら雑誌に穴があくんですから何とでも言ってなだめればいいものを、「じゃ、先生は江川に才能がないとお考えなのですか?」とまともに反論してしまう始末(笑)。


 「才能はあるさ。大したものだ。だからこそ、腹が立つのだ。奴に勝たせたくない……」
 パパは感情的になった。もともと、〈好き〉と〈嫌い〉しかなくて、〈あいまいな中間色〉のないパパは、クールな人を見ていると、よけい、かっとなるのだ。
 「すくなくとも、ぼくの前では、江川をホメて欲しくないのだ。江川に才能があるのは認めよう。しかし、どうも人間的に好きになれない。……ぼくは、今まで、きみを友達と思ってきた。しかし、江川をホメたたえるようでは、きみとの関係もこれまでだ」


んな大袈裟な(爆)。
マンガ家さんが間に入ってパパをなだめ、この場はおさまるのですが、この後も何かにつけて、この作者コンビは江川ネタを持ち出しては編集者をいぢめて遊んでるんですね(笑)。
夏の箱根で俳句を作ろうということになれば、こんな調子。


 「梅雨冷えや」と内藤さんがひねり出した。「江川も炬燵欲しげなり」
 「江川だって人間ですよ!」
 ジャイアンツ・ファンの井戸さんは、かっとなる。
 「江川出て ファンも白ける 夏の宵」とパパ。
 「不自然な 江川の微笑に 総毛立ち」と内藤さん。


うーん、去年さんざん叩かれまくったスポーツ界の人、亀田ファミリーだって朝青龍だって、ここまで容赦なく完膚なきまでにコケにされまくる存在ではなかったですよね。ネット上のからかいとかお笑いのネタとかならともかく、この小説の場合、作者ははっきりと子供向けのつもりで書いてる訳ですよ。そういう作品の中でこういう扱いを受ける人って、後にも先にも江川卓ただ1人だけのような気がします。

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