手当たり次第の読書日記

新旧は全くお構いなく、読んだ本・好きな本について書いていきます。ジャンルはミステリに相当偏りつつ、児童文学やマンガ、司馬遼太郎なども混ざるでしょう。
新選組と北海道日本ハムファイターズとコンサドーレ札幌のファンブログでは断じてありません(笑)。


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保阪 正康
自伝の人間学 (新潮文庫 ほ 19-1)

雑誌連載時のタイトルが「自伝の書き方教えます」、単行本になって『自伝の書き方』。そして文庫版で『自伝の人間学』。つまり、そういう本です。
自伝や自分史を書こうと思っている人に向けて、心がけたほうがいいこと、やっちゃいけないこと、自伝の良し悪しの実例を懇切丁寧に示している実用書であり、と同時に、自伝や自分史というものには書き手の人間性がいかに赤裸々にあらわれてしまうものなのかということを、容赦なく明らかにしている本でもあります。
そう、容赦ないんですよ、保阪さん。
自伝というからには「自分で書いた」ということ。ここで俎上に上がっている自伝の書き手は、企業家過激派芸能人科学者スポーツ選手、市井の人に至るまで、もう様々な年代や業界にわたっていますが、文章を書くことのプロ、ではないんですよね。文章の素人が自分の人生について自分で書いたもの、それが自伝です。
これって、読むほうも最初から何となく大目に見てることのような気がするんですよ。出版されて書店で売られ、図書館の棚を占領する以上、あまりにも箸にも棒にもかからないような文章であっては勿論困るけれど、多少たどたどしいくらいは何でもない。表現が稚拙だったり、陳腐な紋切り型の言い回しが出てきたとしても、それはただ書くことに不慣れだというだけのこと。本人の感受性が陳腐だという訳ではないんだからと、よっぽどの悪文でない限りは不問に付す。文章の巧拙はとりあえず問わず、書かれている内容だけを読む。自伝や自分史というものは、そういう風に読まれるのが普通であるように思います。
しかし、保阪さんはそうじゃないんですね。文章そのものを徹底的に見ます。素人だからというお目こぼしは一切しない。
キリスト教の信仰や共産主義思想を持っている人の、その道一筋に歩んだ人生を語る自伝。当然、「その世界」の用語がばんばん出てきます。いや、人によっては、それのみで書かれているといってもいいくらい。門外漢の私などは、そういうものだからと簡単に片付けてしまいそうになるんですが、保阪さんはいちいち突っ込むんですね。退屈だ、見苦しい、自分の人生を語るのに聖書を長々と引用してすませるな、と。
戦争体験を語る女性の自伝の多くが、最後には「戦争は二度としてはならない」と結ばれて終わることについても実に手厳しい。「自らの固有の体験を踏まえて、ああいう時代は厭だと断じるのはいい。しかし、ああいう時代は厭だと思え、と次の世代に命じるのはよけいなお世話である」──指摘されてみればまさしくその通り。でも、実際にその手の文章を読んでいる時に、そこまで気がつけるかどうか。戦争体験の手記は「戦争反対」で終わるものだと、読む側も思い込んでさえいるかもしれません。でも、そうやって様式化してしまった戦争反対は、保阪さんに言わせれば、ただ安易に「正義」の側に立つ言葉を得意げに振り回しているだけ、当たり前のことを計算ずくで語っていてみっともない、ということになるんです。
言い回しが陳腐で紋切り型になるのは、書き手が素人だからじゃない。真剣に書いていない、ということのあらわれに過ぎない。文章のプロでなくたって、自分の人生と逃げずに真剣に向き合えば、そんな手垢にまみれたような表現を書いて平気でいられる筈がない。


 自伝を書くことは身を切ることである。自分をさらけ出すだけでなく、他人、とくに自分の周囲の人たちをも切ってさらけだすことである。それだけではない。自分のなかに巣喰っている俗物さも見せてしまうことだってある。


 自伝を書くというのは、決して生半可なものではない。全人格を賭けた戦いである。


正直、読む側として、今まで自伝というジャンルをここまで真剣に見たことは一度もありませんでした(苦笑)。思い出話、程度の捉え方だったような気がします。「古本屋に行くと、最初のページに勲章をつけた本人の写真が大きく載っているような自伝が書棚に並んでいますが、あれは子々孫々までの恥です」と保阪さんが言うような類のものをこそ、自伝の典型だと思っていたというか……政治家の自伝が綺麗事なのも、財界人の自伝が自慢と説教なのも、批判の対象にしても仕方のないことなんだと、どこかで思い込んでいましたね。
ところで、この本の中で色々と例にあげられているうち、ノーベル賞受賞科学者の生涯も赤軍派テロリストの悔恨の記も、自分のこれまでの読書や興味のジャンルとは直接結びつくものではなかったのですが、スポーツ関係者の自伝については特に関心を引かれました。
スポーツ選手の自伝には何かというと父親のことが出てくる、という指摘など、20年前に書かれた本ですが、亀田兄弟のことを思い起こさせます。

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