手当たり次第の読書日記

新旧は全くお構いなく、読んだ本・好きな本について書いていきます。ジャンルはミステリに相当偏りつつ、児童文学やマンガ、司馬遼太郎なども混ざるでしょう。
新選組と北海道日本ハムファイターズとコンサドーレ札幌のファンブログでは断じてありません(笑)。


テーマ:
北村 薫
空飛ぶ馬 (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書)

いつもお邪魔するKIDさんのところ で、テレビ局の番組づくりの姿勢の情けなさに対して苦言を呈してらっしゃいました。
皆さんのコメントも含めて全くその通りだなあと思いながら読んでるうちに、ふっと連想したのが、後を絶たない食品会社の偽装問題。
似てるなあ、と思ったのです。
視聴率の数字をとるためだからと、薄っぺらな番組づくりをするテレビ局。
ブランド品のほうが売れるから、新鮮なほうが売れるからと、原材料も製造年月日も嘘をつく食品会社。
どちらも、お客をバカ扱いしている。
スポーツ競技それ自体の面白さを引き出すことよりも、ただ騒ぎ立てることのほうが視聴率につながる? 視聴者とはスポーツの本当の面白さを受け止める感性なんか持ち合わせない、底上げの熱狂にたやすく扇動されてしまう軽薄な輩ばかりだと?
この商品はどんな風につくられていてどんな風に美味しいのか、丁寧に熱心に伝えることよりも、使ってもいない銘柄肉の名前で釣るほうが売れる? どうせ味なんかわからない客ばかりだから?
そういう側面も、確かにあるのかもしれない。
でも。
売る側、発信する側が、受け手をバカ扱いしてばかりいたら。
本当は、バカじゃない人だって一杯いるのに、バカな受け手しか集まらなくなってくる。バカじゃない人には、愛想をつかされて相手にされなくなる。
と、思うんですよ。
今日のタイトルに選んだのは、「日常の謎」派の旗手・北村薫の、「円紫さんと私」シリーズの1篇です。

ヒロイン「私」は落語家・春桜亭円紫のファン。蔵王で行われる独演会に友人を誘って出かけます。翌日、蔵王観光に出かけた彼女達は、ひとり景色を眺めてたたずんでいた円紫さんに遭遇。「大勢を相手にするお仕事なのに一人がお好きですか」と訊かれた円紫さん、「大勢を相手にしてはいませんね」と答えます。


「それじゃあ一部の人、噺の分かる人が相手なんですか?」
 正ちゃんが不服そうに突っ込んだ。
「いいえ。一部でもない、たった一人、自分ですね」
「自分?」
「ええ、若い頃の僕が相手です。一席一席、純な期待をこめて耳を傾けていた僕がね。お客様は全員がその頃の僕だと思って話しています。この相手はごまかせません。それをごまかしたら、自分で自分に落語をやめろというのと同じですから」


自分の仕事のお客さんは、顔の見えない有象無象の大衆ではない。判る人にだけ判ればいいやと気取るのでもない。

昔の自分に見られても恥ずかしくなることはないか。こんな大人になっているぞと、胸を張って示すことができるか。

責任と気概というものを端的に言い表した言葉として、初めて読んだ時からずっと、心に残って離れない一節です。

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