手当たり次第の読書日記

新旧は全くお構いなく、読んだ本・好きな本について書いていきます。ジャンルはミステリに相当偏りつつ、児童文学やマンガ、司馬遼太郎なども混ざるでしょう。
新選組と北海道日本ハムファイターズとコンサドーレ札幌のファンブログでは断じてありません(笑)。


テーマ:
岡本 綺堂
鎧櫃の血 新装版 (光文社文庫)
前に京極夏彦『旧怪談』の話から、「半七捕物帳」シリーズの「猫騒動」も同じく『耳袋』が元ネタだろうというような話をしたことがありますが。
「半七」以上に『耳袋』っぽい作品が岡本綺堂には他にあったんでした。
「三浦老人昔話」シリーズ。
これは「半七」の世界とつながっています。「半七」で、隠居した半七老人から昔の手柄話を聞いている青年が、ある日半七の家を訪ねた際に、友人だという三浦老人を紹介されるんですね。で、「わたくしのお話はいつでも十手や捕縄の世界にきまっていますけれども、こちらの方は領分がひろいから、いろいろの変った世界のお話を聴かせてくれますよ」と言われる、というのが始まりです。
「半七」では、オープニングで老人と青年のやりとりがあった後、段落を改めて物語の本筋に入る際には、地の文が三人称になっています。「わたくしは」ではなくて「半七は」になるんですね。きびきびして、いかにもミステリに似つかわしい文体です。
一方、「三浦老人」では、老人の語り口のままで物語が展開します。ものやわらかで丁寧な、ですます調。一見、まだるっこしいようですが、このゆるゆるとした感じが、語られる物語の内容に実にうまく合ってるんですよ。
奇妙といえば奇妙。怖い、といえば怖い。でも、声高ではない。ひっそりと、静か。
この感触が、『耳袋』っぽいんです。内容それ自体の元ネタがどこから来ているかは、不勉強で確かめていないのですが。
「置いてけ堀」という1編では、内職の魚釣りに出かけた御家人の釣り針に、油でねばついた櫛が引っかかってきます。何度捨ててもまたかかる。そうこうするうち、彼は、本所七不思議のひとつ「置いてけえ」と呼ぶ声を耳にするのですが、気にしないでそのまま釣った魚を持って帰ります。家に着いてから見てみると、確かに捨てた筈の櫛が魚の中に紛れ込んでいたばかりか、うなぎの中にマムシが1匹混じっていて……。
この怪異譚、何が一番気味が悪いって、「訳が判らない」ところが怖いんですよ。語り手の三浦老人が、「その櫛と、置いてけえと呼ぶ声と、そこにも何かの関係があるのかないのか、それも判りません。櫛と、蝮と、置いてけ堀と、」とんだ三題話のようですが、そこになんにも纏まりの付いていないところが却って本筋の怪談かも知れませんよ」と言っている通り。
話の中味は怖いのに、語り口は淡々として穏やか。この落差が、実に効果的です。
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