手当たり次第の読書日記

新旧は全くお構いなく、読んだ本・好きな本について書いていきます。ジャンルはミステリに相当偏りつつ、児童文学やマンガ、司馬遼太郎なども混ざるでしょう。
新選組と北海道日本ハムファイターズとコンサドーレ札幌のファンブログでは断じてありません(笑)。


テーマ:
宇野 信夫
話のもと (1981年)

『旧怪談』を読んでいると、「あ、この話知ってる」というものがいくつかありました。
昔うちの母親の本棚から勝手に引っ張り出して読んでいた、宇野信夫『話のもと』『江戸の小ばなし』。タイトル通り、江戸時代の小噺や落語の元ネタなどを集めたという本です。出典を明記してある話もありましたが、何の注釈もないものもありました。
古道具屋からかまどを買ってきたら下から汚い坊主が出てきたとか、愛人を姪だと嘘をついて知人宅に預けたお坊さんとか、お江戸の落語家達が作った話かと思っていましたが、『耳袋』が元ネタだったとは。特に、前者はともかく後者のほうは、普通に読んだら滑稽でこそあれ、怖いとか不思議とか奇妙とかいう要素はまず見当たりませんもん。
それが怪談集として編まれた『旧怪談』にちゃんと入ってるんですね。京極夏彦がこの話の一体どこに目をつけたのか、ここではご紹介しませんので『旧怪談』224ページの「設定」をお読み下さい(笑)。
「メロディーは才能、アレンジはイデオロギー」とは渋谷陽一氏の名言ですが、『旧怪談』がそういう「京極夏彦によるカバーバージョン」である一方、宇野信夫版は原文を殆どいじっていません。


 両国橋で、四、五歳の子供をつれて袖乞いをしている浪人がいた。その日は一文の合力もない。空腹のために子供は泣いた。
 浪人は辻に出ていた餅売りに、あとで合力を受けた時に払うから、この子に餅を一つくれと願った。餅売りは、おれも今朝から商いがない、と膠もなく断わった。子供はひもじさにますます泣く。そばにいた雪駄直しの非人が、浪人に小銭を渡して、「いつでもお返し下さい」と言った。浪人はその銭で餅を買って子供にたべさせた。そして、また橋のたもとに坐って、非人に返すだけの銭をもらうことができた。浪人はすぐに非人にその銭を渡して厚く礼をのべた。そして、子供を橋の上から川中へつきおとし、自分もつづいて入水した。


『話のもと』の中の「両国橋」という1編です。『旧怪談』に原文が載っているので判りますが、これはほんとに素直な現代語訳、全くこの通りの話なんですね。宇野氏はこの話を題材に歌舞伎の脚本を書き、また人情物の落語にもなっているのだそうですが、当然これだけでは長さが足りませんから、何やかや話がふくらませてあるか、或いは大胆に翻案してあるか、なのでしょう。『旧怪談』を読んだ今、急に、この歌舞伎バージョンと落語バージョンのストーリーが知りたくなりました。
原題は「義は命より重き事」。京極さんがつけたタイトルは「プライド」。一見、そのまんまですが。
浪人が非人に金を返すのを見た餅売りの男に、京極さんはこんな言葉を言わせているのです。


「身分の低い者の施しは受けられぬ──という感じじゃないですか」

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