手当たり次第の読書日記

新旧は全くお構いなく、読んだ本・好きな本について書いていきます。ジャンルはミステリに相当偏りつつ、児童文学やマンガ、司馬遼太郎なども混ざるでしょう。
新選組と北海道日本ハムファイターズとコンサドーレ札幌のファンブログでは断じてありません(笑)。


テーマ:
P.D.ジェイムズ, 青木 久惠
灯台
P・D・ジェイムズ、1920年生まれ。これの原書の刊行は2005年だそうですから、何と85歳での執筆! しかもそれが短いエッセイとか自伝とか枯れた味わいもまたよしの純文学とかじゃなくて、構成も堅牢な本格長編ミステリですよ。脱帽!
イギリスはコーンウォール沖に浮かぶカム島は、各界のVIPに静寂と平安に満ちた休息を提供する高級保養所。滞在客は5人まで、宣伝は一切なく、ふりの客はお断り。秘密の国際会議の開催場所としてうってつけだと首相官邸が目をつけたまさにその時、島で殺人事件が発生。地元警察ではなくロンドンから、アダム・ダルグリッシュ警視長が駆り出されることになった……。
というのがオープニング。島に滞在していた人間達の名前は紹介されますが、死んだのが誰かは(読者には)伏せられてます。次章は島にいる人々の視点で話が進められますが、時間がちょっと遡っているので、まだ事件の発生前。この中の誰かが早晩殺される事になる訳ですが、それは一体誰なのか。何やら全員が訳あり風で、しかもそれが微妙に絡み合っている感じです。静かな筆致の中にも高まる緊張……そして遂に惨劇が!
かくしてダルグリッシュと部下の刑事2名がやって来る訳ですが、これは要するに「嵐の山荘」パターンなんですね。一般社会とは隔絶された閉鎖空間、わずかな人数しかいないところで殺人事件が起きる。犯人はこの中にいる、それは誰か、そして何故?
日本の「新本格」系でこの手法を今やるとしたら、ミステリオタクの道に走るしかないような気がします。本格ミステリの「リアル」とは人工美の極致だと開き直るか、内輪ギャグに逃げるかして、「古き良き黄金時代の本格ミステリへのオマージュ」として描くしかないんじゃないのかと。でもこの作品は、どこもひねってないんですよね。それぞれ全く共通点のない、癖が強くて訳ありの人間達が、ひとつの小さな島に集まっている。その状況の設定として、これはいかにもありそうなんです。古い革袋に新しい酒を盛ることは、いくらでも可能なんですねえ。
昔の名探偵と今の名刑事の大きな違いとして、シリーズが進むにつれて身の上に変化が生じる、ということがあります。ダルグリッシュも、それから部下のケイト・ミスキン警部も、ただいま私生活の大きな転換点。次作が非常に気になるところなんですが、しかし何といっても作者がもう90歳近い(!)ですからねえ……長命と健康と健筆を、祈らずにはいられません。
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