手当たり次第の読書日記

新旧は全くお構いなく、読んだ本・好きな本について書いていきます。ジャンルはミステリに相当偏りつつ、児童文学やマンガ、司馬遼太郎なども混ざるでしょう。
新選組と北海道日本ハムファイターズとコンサドーレ札幌のファンブログでは断じてありません(笑)。


テーマ:
井出 孫六
小説 佐久間象山〈上〉

こんなシンプルなタイトルだから、きっと冷静にして正確を心がけた端正な伝記小説なんだろうな。
と思って読み始めてみたら。いやあめっぽう面白かったです!
「序章 黒船出航」──出航、ですよ。黒船現る、じゃないんです。今まさに日本に向けて出発せんとしているペリー提督の姿から始まります。しかし日本について殆ど知識もなく、なのにシーボルトの協力を頑として拒絶する提督、危ぶむ通訳。次章から舞台は日本へ、江戸木挽町の象山書院を訪れたのは吉田松陰──『風雲児たち』愛読者をあっという間にとりこにするオープニングでした。その後も、川路聖謨、プチャーチンなど『風雲児たち』レギュラーキャラの名前が続々と! 司馬遼さんの『世に棲む日日』なんかだと、吉田松陰、あまりにも透明過ぎて人間離れしたキャラクターになってますが、ここの寅次郎くんはちゃんと人間です(笑)。一本気で熱血で単純で善良で。象山先生とのやり取りは、『風雲児たち』キャラの絵で脳内に展開されていましたね(笑)。
ただ、1年間にわたって雑誌に連載された小説だったようですが、司馬遼さん『翔ぶが如く』で発生していたのと同様の事態がやはりここでも起こってました。序盤での設定が、途中でうやむやになっちゃてる(笑)。
ペリー艦隊の通訳をつとめることになった牧師ウィリアムズ博士に、長崎でシーボルトと面識があったという正体不明の不思議な老人・謝永川も同道することになりますが、航海の途中で彼は死んでしまいます。後に、決死の覚悟で密航を試みた吉田寅次郎と対面した時、老人の最期の言葉を思い出したウィリアムズ博士でした……という、いかにも「小説」!な展開になってたんですが。
その後、この件に関しては完全スルー(汗)。主人公・佐久間象山先生の押しの強さ存在感の前に、ペリー艦隊はいつの間にか気がついたらいなくなっちゃってたって感じだし(笑)、寅次郎くんもすっかり影が薄くなっちゃいます。重要サブキャラなんだから、刑死のシーンはしっかりやってくれるだろうなと思ってたら、蟄居中の象山先生を訪ねた高杉晋作が最後の手紙を届けてくれた、というだけになっちゃってました。
象山先生といえば、何といっても幕末の重要人物。とだけ思っていて、彼の舞台としては、江戸の象山書院と暗殺された京都、これしか頭にありませんでした。この作品では、松代藩士としての佐久間修理がしっかりと描かれています。
幕末維新の動乱とは直接何の関係もない、藩内の勢力争い。それに巻き込まれて余計なエネルギーを傾注せざるをえなかった象山先生。藩のため主君のためと信じて全力で反対者をやっつけにかかった結果、だんだん立場が微妙になってきます。……そんな折も折、幕府の命により上洛することになる訳なのですが。
これまでに読んだものでは、たとえば海音寺潮五郎作品などでは、天誅という名のテロが横行する京都にろくな警護役もつけずに乗り込み、西洋鞍を置いた馬でこれ見よがしに闊歩する、まるで狙ってくれと言っているようなものだ、しかし自ら恃むところが大き過ぎた彼にはその危険性が判っていなかった、というような描き方になっていました。
しかし、この作品では。


 ……一八六四(元治元)年にもまだ三十八枚の残奸状が舞った。十日にいっぺん人斬りが行なわれていたということになる。そのような京都に開国論者佐久間象山を送りだすことは、すなわち死地に赴く「出征」と同義のことと何びとにもわかっているとき、松代藩は「早速出立すべし」と厳命したのであった。公儀よりのお声がかりをよいことに、体のよい厄介払いができたと、藩老たちはひそかにほくそ笑んだにちがいない。その直後、象山の宿敵長谷川深美(昭道)の蟄居が釈かれていることも注意しなければならない。


そして。

問題の、京都は物騒だから天皇を彦根に移そうという案が出されるに及んで。


「修理を京都においておくわけにはいかない。わが松代藩の存亡にかかわることだ」
「それはいかにも簡単なことと存じまする。今夜のこの顛末を京の街にごまんといる西国の浪人どもに流せば足りることです。長谷川深美殿が四月以来、彼らと交わりを深めておりますから、深美殿を通せば、いつでも彼らと連絡がとれるようになっているときいております」


うわあああ……(汗)。
「新選組!」の坂本龍馬暗殺のくだりを思い出しました。直情径行な攘夷浪士の暴走などではなく、冷徹な意志と周到な策略をもって仕掛けられた罠。
佐久間家は断絶になりました。事件直後、あっという間の処分です。
後ろ傷を受けたから。

それだけが理由でした。

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