手当たり次第の読書日記

新旧は全くお構いなく、読んだ本・好きな本について書いていきます。ジャンルはミステリに相当偏りつつ、児童文学やマンガ、司馬遼太郎なども混ざるでしょう。
新選組と北海道日本ハムファイターズとコンサドーレ札幌のファンブログでは断じてありません(笑)。


テーマ:
篠田 鉱造
増補 幕末百話

という訳で、京都で買い込んできた古本の話をば。
私が買ったのは昭和44年初版・48年7版の角川選書バージョンなんですが、「中身」は更にもっとずっと古いものです。明治35年頃、維新前を知る老人達に思い出話をして貰って、新聞に連載。明治38年、単行本として出版されますが、日露戦争の真っ最中という世相に合わなかったのか、連載が好評を博した割には本は余り売れなかったとか。それから二十数年たって昭和4年に増補改定版が出され、そして44年に復刻という流れとのこと。で、更にまた数十年経って岩波文庫に(今「生きてる」本ということで、画像はこちらです)……最初の新聞連載から今ではもう100年以上経ってますよ。
こういう書名ですが、内容は必ずしも「幕末」に限定されてはいませんね。天保年間のこととか、明治になってからのこともいくつか混じってます。また、特に幕末維新期に限った事柄だけというのでもなく、広く「江戸時代はこうだった」というような話もあります。彰義隊参加者の思い出話から歌舞伎役者のエピソード、安政の大地震で被災した話、もう統一性も何もなく(笑)種々雑多もいいところの内容。しかもそれぞれの話を語っているのがどこの何という人かの説明はありません。なので読み始めはちょっと雑然としているようにも思えましたが、慣れると、何というか臨場感があっていいんですよね。


 代が御一新に変ろうとした文久元治、あの頃の江戸の物騒と申したら、代は闇になるかと思われ、辻斬り、強盗、追剥、なかにも辻斬り物取りが多うござんした。腕の利いた悪旗本がこれを機に好きなまねをしたんでしょう。夜なんかめったに出られやしません。夜寝ていても女が「助けてェ」と泣叫ぶのをまま聞きました。


たとえばこんな感じです。ちょうど岡本綺堂の『半七捕物帳』とか『三浦老人昔話』とかを読んでる感じですよ。
話をしているのはみんな市井の人、元武士であっても軽輩の人ばかりですが、何しろ時期が時期ですから、大事件に遭遇している人も結構います。鳥羽伏見の戦いの時に大坂の店に奉公していて、将軍慶喜が逃げ出した後の大坂城へ見物に出かけたという話がありました。これ、司馬遼太郎御大の作品にも出てきますが、官軍が何も言わないんで市民はどんどん城内に出入りしては残されていた着物や道具を分捕っていた訳ですが。


……二日目にとうとう地雷火が破裂して、見物の男女は真黒焼になって、お濠へはね飛ばされました。嘘か本当か存じませんが地雷火の瀬踏みのため、見物を入れたのだそうです。
 それから入城禁止となって、同時に持帰った品々を寺町の宝春院(これは仁和寺宮様のお詰所でした)へ届出ろ、さなくば見当り次第厳罰とのお触で、みなふるえ上り、奪って来た物をお返しに参ったんです。なんの事はない。地雷火の犠牲に上って、褒美の金を召上げられたような始末。


ひど過ぎる(汗)。
しかもこの大坂城の品々は市民に入札させることになっていたのに、1回目の入札を見て高級品を割安で買えるチャンスだと気付いた長州藩、2回目の時には萩の船頭に命じて全部買わせ、さっさと国許に送ってしまったんです。話し手の人、「長州には、さすがにこれを見ても智恵者がいましたなあ」「旨い事をしましたんで、感心しました」と言ってるんですが、これほどきつい嫌味もまたとないですね! 亡き祖父が山口生まれだった私ではありますが、やっぱり長州は嫌いだ(苦笑)。
と、色々な話が出ている中で一番印象的だったのは、どこかの御家中の若侍だった人の桜田門外の変の現場を見に行った話。


 それぞれ用意をいたしまして、殿様は奥でお支度中だ。供廻りはみな雪を蹴って出掛けるばかり。かかる所へ供廻りの仲間で、赤合羽を着た男が、とッとッとッと、雪の間を転びつ置きつ、駈込んで来まして、あわただしく「た、大変、大変でございます」と顫え声。「なにが大変だ」と問いますと、「ただいま桜田御門外で、大老井伊掃部頭様が水戸の浪士に首をお取られ遊ばした。大変な騒ぎでございます」と顔の色を青くして、唇の色まで変えていうのです。「なにを馬鹿なことをいうのだ。そんな事があってたまるか。井伊様は御大老だ。そう胡瓜や唐瓜のように首をもがれてどうなるものか」
 誰しもこれを本統にしませんでした。「虚言を申すやつだ」「気が違っておりはせんか。縛ってしまえ」と、赤合羽は頭に預けられたが、家老は血気の武士三、四名に申し聞け、実地を見て来よとの命令に、私もその数へ加わり、マチ高袴におっとり刀で駈付けて見ますと、嘘じゃァない。……


生々しさに、息を呑みました。

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