手当たり次第の読書日記

新旧は全くお構いなく、読んだ本・好きな本について書いていきます。ジャンルはミステリに相当偏りつつ、児童文学やマンガ、司馬遼太郎なども混ざるでしょう。
新選組と北海道日本ハムファイターズとコンサドーレ札幌のファンブログでは断じてありません(笑)。


テーマ:
小林 恭二
俳句という遊び―句会の空間

新聞に俳人・飯田龍太の訃報が載っていました。
そういえば以前から、句作をやめている、という記事を時々目にしていましたが。今にして思えば……という感じです。
といっても私は俳句も短歌も好きだけれどもめっぽう疎くて、龍太の句も数えるほどしか知りません。でも、「あれえ……亡くなっちゃったんだ」という気にさせられてしまったのは、この本を読んでいたためでした。
前に『短歌パラダイス』のことを書いた際にちょっと触れましたが、俳句詠み小説家の小林恭二と岩波書店編集部が語らって、当代一流の俳人達を集めて句会を開かせ本を作っちゃった、というとんでもない企画です。
時は1990年4月12日、場所は「桃と杏と桜の花が同時に咲く」という山梨県境川村の飯田龍太邸──場所の提供のみならず、ホテルの手配等まで彼の手を煩わせることになった上、小林氏と編集者氏は打ち合わせの為に飯田家を訪れるたび、飯田夫人の豪華な手料理をご馳走になりスコッチのボトルをあけていたんだとか(笑)。
そうして始まった句会では、2日間にわたる真剣勝負の中にも、楽しい「挨拶句」がしばしば見られました。


桜しべ闇の龍太にあひにゆく    田中裕明


先頭の車は龍太桃の花       岸本尚毅


春の夜のこんにやく薄う薄うせよ  高橋睦郎  ──前夜、飯田邸の夕食でこんにゃくが出たんだそうです。


そうかと思えば、こんなのも。「坂」という題で「つんどくや何処も坂なす古廊下」と詠んだ高橋さん。


 この句に関していえば、ひじょうに同情すべき点がある。
 というのも、この句の情景がおそろしいことに飯田家の廊下にぴったんこだったのだ。つまり、この句は結果的に非常に失礼な挨拶句になってしまったのだ。
 で、飯田龍太が「余計なお世話だ」と叫んでまず逆選。あと三人が笑いを噛み殺しながらそれに倣った。
 ところが何のことやら分からず、呆然としている人物がひとりいた。すなわち作者高橋睦郎その人である。
 「あの、これ、僕の家の風景を詠んだんだけど……」
 遅れて外から帰ってきた高橋睦郎は、この日飯田家の古廊下の有様を見ていないただ一人だったのである。


さらには、「いか」という題で三橋敏雄が詠んだ「塩辛のいか柔らかし春灯」のポイントが低いのを見た飯田さん、


 「まったくどいつもこいつも恩知らずばかりだ。キミたちは日本酒を飲むときどれだけ塩辛にお世話になったか忘れたか」
と嘆じ、座がどっとわいた。


こんなのを読んでいたもので、何だかよく知っている人が亡くなったような、変な喪失感があるんですよ。
三橋敏雄が「大正の男激減す春疾風」という句を詠んでいます。「ここで大正の男は三橋君と僕だけで、不愉快の極みだね(笑)」と言っていた龍太さん。何だか本当に、早春の風に連れ去られてしまったような……。


百千鳥雌蕊雄蕊を囃すなり


春の富士沸々と鬱麓より

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