手当たり次第の読書日記

新旧は全くお構いなく、読んだ本・好きな本について書いていきます。ジャンルはミステリに相当偏りつつ、児童文学やマンガ、司馬遼太郎なども混ざるでしょう。
新選組と北海道日本ハムファイターズとコンサドーレ札幌のファンブログでは断じてありません(笑)。


テーマ:
西村 欣也
神の領域を覗いたアスリート

朝日新聞を好きな理由のひとつがこの人です。スポーツ担当の編集委員・西村欣也さん。切れ味鋭いコラムを読んでいるうちに、いつの間にか名前を覚えました。
表題にある「神の領域」とは一体何のことなのか。西村さんはこんな風に書いています。


 スポーツ心理学の用語で「ゾーン」という言葉がある。超一流のアスリートが体験する特殊な感覚を意味する。周囲が真っ白になったり、体の中を時間がスローモーションのように流れていったりするのだという。野球選手が「投手のボールが止まってみえた」と証言することもある。そういう瞬間を「ゾーンに入った」という。


この本でも取り上げられていますが、スピードスケートの清水宏保選手が「光の道」という言い方をする、あれですね。誰だったか思い出せないんですけれどもお相撲さんで、「相手のまわしの掴むべき箇所が光って見える」と言った人もいました。
西村さんも言っていますが、それはまさに「僕にはけっして見えない世界」。そんな話を読むのは勿論面白いに決まってる!んですが、この本、もしも西村さん以外の別の誰かが手がけた企画だったら、私は手にとっていなかったかもしれません。
普段、「Number」や「Sportiva」等の雑誌を読んでいても、特にひいきの選手でなかったら、どんな名選手のインタビューであっても飛ばしてしまうことがあります。ましてや、「この人ってちょっと」と勝手に思っているような人だったら、なおさらのこと。
この本の人選には、実は私にとってそういう人が何人か入ってたんです(苦笑)。長嶋茂雄(ジャイアンツが好きじゃない)、亀田興毅(粗野が売りのスターは苦手)、橋本聖子(有名人の政治家転身に偏見あり)という3人。
でも迷わず買ったのは、西村さんの文章、が読みたかったから。
別に美文とか名文とかいうんじゃないんです。芸として読ませる文章、という点ではスポーツ雑誌に書くライターの人のほうが上でしょう。でもこの人は「スポーツライター」であるより先に「新聞記者」である訳で、そこが違いになって表れている気がします。書き方というよりも、書く上での視点の違い。
自分が書く対象のアスリートに深い興味を持って寄り添いながら、常に冷徹さを失わない。読者の中に名勝負の感動を再び甦らせる一般のスポーツノンフィクションとは目的も手法も相当に異なる文章ですが、それとは全く別種の感動があります。「そうだったのか、知らなかった!」という、どこかミステリの謎解きの興奮にも似た感動。
長嶋茂雄が倒れる1年半前、初めて夏の甲子園を観戦して「プロ野球に吹く風と、高校野球に吹く風は、こんなに違うんですね」と驚き、自分の高校時代を思い出して「出たかったなあ、甲子園」と言っていたという姿のスケッチ。
亀田興毅が大人になるために1つやり残していることは「内なる父殺し」だという容赦のない指摘。
日本シリーズにまつわるいくつもの因縁。
短くまとめられた各章は、どれもこれも、それだけで1冊の本になりそうな題材ばかりです。全部読み終わる頃には、スポーツの世界のとんでもなさに目まいがしそうになってました。
凄いなあ……と嘆息しつつ、ふと、空想したことがあるのです。折りしも時はプロ野球春季キャンプの真っ只中。
西村さんがいつまでスポーツコラムを書き続けるか判らないけれど、いつか、彼の目にダルビッシュ有や田中将大がとまる日がくるだろうか。5年後か、10年後か、今はまだ若さの輝き以外何もない彼等の顔に経験の蓄積が見てとれる頃に。その時、彼等はどんな道を辿って、どんな選手になっているんだろう……。

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