手当たり次第の読書日記

新旧は全くお構いなく、読んだ本・好きな本について書いていきます。ジャンルはミステリに相当偏りつつ、児童文学やマンガ、司馬遼太郎なども混ざるでしょう。
新選組と北海道日本ハムファイターズとコンサドーレ札幌のファンブログでは断じてありません(笑)。


テーマ:
北村 薫
ひとがた流し
選考委員は、阿刀田高・五木寛之・井上ひさし・北方謙三・林真理子・平岩弓枝・宮城谷昌光・渡辺淳一。第136回直木賞、受賞作なし、とのことです。
へええ……『ひとがた流し』ダメだったんだ。
ただ受賞しなかった、というだけなら別に何も思わないんですが、「受賞作なし」というのが少々引っかかりました。つまり、一緒に候補に入ってた他の5作品のどれにも、「負けた」という訳ではない。そして詳しい選考過程はまだ判らないんですが、新聞の記事によれば、実は『ひとがた流し』はかなり評価が高かったのだそうです(当然だね!)。でも最終的に落とされた。
本筋に入るのが遅い。そう言われたらしい。
……思わず、全身から力が抜けてしまいました(苦笑)。
この小説の主人公は、3人の女性です。高校生の頃からの友達づきあいも中年期に突入。牧子と美々は子持ち、千波は独身。それぞれ家族ぐるみのつきあいです。美々の娘が青春の悩みを抱えていたり、千波の近くに謎の男が出没したり……でも特に波乱万丈なことが起こる訳でもない日常が、ゆっくりしっかり描写されていきます。何てこともないんだけど、でも読ませる。彼女達のそれぞれが自分の身近な人みたいに思えてきて、「あのあと、どうした?」と気になる。さすが名手北村薫の筆の冴え、と思ったら。
3人のうちひとりが、深刻な病気を抱えていることが判って……。
今、敢えて病気になったのが誰かを書きませんでした。というのは、あくまでも主人公は3人全員だ、と思うからです。
アマゾンのカスタマーレビュー見てみましたが、やっぱり誤読してる人がいましたけれども、これ、「闘病小説」ではないんですよ。ましてや「泣ける話」なんかじゃない(「泣ける話」呼ばわりして批判されていましたが、これははっきりいって、作者への侮辱だと思います。北村薫はそんな安易な作家ではありません)。
これは、友達についての物語、です。友達がいなくなってしまうこと、について書かれた物語。3人が、2人になってしまう物語。
その喪失が重いからこそ、記憶がかけがえのないものだからこそ、3人がまだ何の屈託もない3人でいる頃の姿が丁寧に記されていなければなりません。3人の誰に対しても同じように読者が親しみを覚えるようになった頃、突然その悪い知らせはもたらされます。最初のうちは、まだそれほどの現実味もないままに……。
これをして、本筋に入るのが遅い、だなんて評された日には(嘆息)。
それにしても北村さん、直木賞にはほんとご縁がないというか……第114回『スキップ』、第118回『ターン』、第131回『語り女たち』、そして今回と、これで4度の落選です(苦笑)。いや、北村さんの実績と人気からいえば、何も今さら直木賞なんか(笑)貰おうが貰うまいがどっちでもおんなじようなものなんですけれどもね。ただ、北村薫ほどの作家が、これだけ何度もノミネートされていながら未だに受賞せずじまいというのがどうにも解せません。
ちょうど10年前の「本の雑誌」1997年1月号で、「1996年度の山周賞・直木賞をやり直す」という新潮・文春にケンカ売ってるに等しい(笑)企画をやってるんですが、それが『スキップ』が落ちた年。「夫婦間の機微が描けていない」「(ヒロインである)女子高生の人生を構成していた要素は、一が家族で、二が学校のはずなのに、かつての家族に対する熱い思いがないのはおかしい」等と言われたようです。これに対して「本の雑誌」編集部の面々は、
「夫婦間の機微を描くのがこの小説の眼目ではない」
「一が家族で、二が学校のはずだという指摘も、本当にそうなの?と言っておきたい」
「面白い小説を減点法で採点されたらたまらないですよね」
と反論。実際の受賞作『恋』(小池真理子)と並んでダブル受賞だ!と勝手に決めてしまってます(笑)。
面白い小説を減点法で採点されたらたまらない。これ、つくづくその通りだと思うんですよ。
第132回まで選考委員に入ってた(つまり過去3回北村薫を落選させてた中のひとり/笑)田辺聖子30年ほど前の名言、「筒井康隆や平井和正を直木賞にできない直木賞なんて、つぶれちゃえ」を借用してひとこと。
泡坂妻夫や宮部みゆきを受賞させるのにあんなに何年もかかった直木賞。北村薫を直木賞にできない直木賞。そんな直木賞なんてつぶれちゃえ!
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