手当たり次第の読書日記

新旧は全くお構いなく、読んだ本・好きな本について書いていきます。ジャンルはミステリに相当偏りつつ、児童文学やマンガ、司馬遼太郎なども混ざるでしょう。
新選組と北海道日本ハムファイターズとコンサドーレ札幌のファンブログでは断じてありません(笑)。


テーマ:
アガサ・クリスティー, 橋本 福夫
鏡は横にひび割れて

アガサ・クリスティーのミス・マープル・シリーズの翻案ドラマ第2弾「大女優殺人事件」を観ました。
春に放送された第1弾「嘘をつく死体」が面白くて、ぜひともまたやってほしいと思っていたのです。今回の原作『鏡は横にひび割れて』も、まさに注文通り! ……とくれば、もっと手放しで楽しみにしてもよかったんですが。
一抹の不安がありました。脚本が、ジェームス三木じゃなくなってたんですよねえ……と言ってしまったら今回の方に対してあまりにも失礼なんですが、でも正直、ジェームス三木がまず1本書いた後で、引き継いで遜色なく書けるという人がどれだけいるだろうかと思うのですよ。
で、ともかくも観てみたんですが……ううーん、悪くはなかったんですけれども、有体に申し上げて「あ、やっぱり」でしたね(苦笑)。
何はともあれ、小説もドラマもご存知ない方のために簡単に説明しますと。

大女優マリーナ・グレッグ(ドラマでは暮山真里奈)のパーティで、ファンの女性が急死。酒のグラスに毒が入っていたのだが、それは本来マリーナのグラスだった。命を狙われていたのはどちらの女性だったのか?

という話です。
いや、ほんとにこれだけの話なんですってば! そりゃあ第2第3の殺人も起こるし、マリーナと周囲の人々の人間模様もなかなか読ませます。でも、ミステリとしての構造は至ってシンプル。平凡な中年主婦ヘザーと大女優マリーナ、そのどちらを・誰が・何故、殺したかったのか? これのみで引っ張っていく作品です。
と言うと、小説を読んでないドラマ視聴者の方は首をかしげるかもしれませんね。今回のドラマは「嘘をつく死体」とは異なり、メインの殺人事件以外の枝葉の部分は、殆ど全部オリジナル設定になっていました。真里奈の最初の夫が彼女を騙そうとしていたり、死んだ女性の夫から強請られたり。こういう目くらまし(ミステリ用語で言うところの「赤いニシン」!)がふんだんにある一方で、メインの事件の手がかりとなる事実はラストぎりぎりまで明かされません。
これはこれで、別に悪くない構成なんですよね。ただ、原作小説と比べてみると、クリスティーの書きっぷりの見事さはやはり大したもの。殆ど冒頭部分から、重要な事実があっさり提示されているんですよ。ヘザーとマリーナ、双方の人柄についても何度も繰り返し語られます。でも、それらの描写・説明の持つ意味に、読者の誰もが気付かない。最後の謎解き場面まできたところで、何とも思わずに読み過ごしてきた部分の意味を初めて知ってあっと驚かされる……この「やられた!」感の爽快さは、ドラマのほうにはやはり薄いと言わざるを得ません。
ただ、これは脚本家やプロデューサーの力量・識見の問題というよりは、今現在の社会情勢からいってタイミングが悪かったというのもあるんじゃないかという気はするんですよね。「悪魔が来りて笛を吹く」で被害者の数が1人減らしてあったのと同じような「配慮」が働いていたのではないかと。マリーナの過去の行動には、どうあっても弁護できないことが多過ぎるんですよ(苦笑)。子供が出来ないので養子を3人も貰いますが、妊娠が判った途端その子達に関心を失い、よそへやってしまう。そして生まれた自分の子供に障害があったことにショックを受け、施設に入れてそれっきり。彼女はそれ以来ずっとノイローゼ気味ですが、こらちょっと待て自分が不幸だと思い込むのはいいけど放り出された養子と実子のことはどうなんだ! しかもこの人、この作品の事実上のヒロイン。
という訳で、ドラマの真里奈はマリーナとは違い、子供を見捨てたりもしていないし、我儘で極度の自分勝手で気紛れでいつも周囲を振り回す、という性格でもなくなっています。テレビ的にはしょうがないよなとは思うのですが……真里奈役は浅丘ルリ子さん。愚かで哀れで、しかも、それでもなお誰よりも魅力的で美しいマリーナの存在感を出せる人だと思うだけに、うーん、原作どおりの設定で観たかったなああ。
ところでこの小説、ドラマを観たので久しぶりに再読してみたのですが、思わず吹き出しそうになってしまったのが、本筋に直接関係ないこんな場面でした。ミス・マープルのところに家事をしに来ている若妻チェリイは、村に最近できた新住宅地に住んでいますが、ご近所との些細なトラブルが絶えません。夫は模型機マニアのオーディオファンで、チャイコフスキーを大音量でかけては隣人から壁を叩かれたりしてますが、この音楽はボリュームを下げてはいけないんだ、とどこ吹く風。そして自分達こそ隣の猫が庭に穴を掘るので迷惑しているとこぼしてるんです。
うわあ……まるでワイドショーの愚痴電話コーナーか女性週刊誌の投書欄みたい(笑)。太陽の下に新しきものなし!

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