手当たり次第の読書日記

新旧は全くお構いなく、読んだ本・好きな本について書いていきます。ジャンルはミステリに相当偏りつつ、児童文学やマンガ、司馬遼太郎なども混ざるでしょう。
新選組と北海道日本ハムファイターズとコンサドーレ札幌のファンブログでは断じてありません(笑)。


テーマ:
加賀 乙彦
悪魔のささやき

新書ブーム、なんだそうですね。

ちょっと前までノベルス以外の新書なんか1冊もなかった最寄の書店まで、気がついたら見るからに急ごしらえな新書コーナーが出来上がってました。普通、文庫コーナーと近接してるものだと思うんですが、単行本の新刊棚とノベルスのコーナーにくっついて設置されてる辺りがいかにも「ブーム」。しかも、『バカの壁』とか『国家の品格』ばっかり平積みになってる一方で、岩波新書は1冊も置いてないんだもんなああ(怒)。

とか何とかいいつつ、こんなのを見つけたので買いました。帯には「小学生殺人、放火、村上ファンドetc…」なんてあって、パッと見、訳知り顔で世相を斬る類の本のような感じですが、何しろ著者が加賀乙彦。作家で精神科医で心理学者、『死刑囚の記録』の、『湿原』の加賀乙彦です。一味違うに決まってる! ってんで、立ち読みもせずに即決買い。

いやあ、面白かったですよ……!

この本は口述筆記という形で作られています。だから全体に非常に読みやすい文章になってますね。加賀さんの話を目の前で聞かせて貰っていような感じです。この読みやすさというのもまた、ブームとしての新書ならではかな。でも内容は簡単なものではありません。

悪魔のささやき、とは一体何か。加賀氏が精神科医として面会した服役者や自殺未遂者の多くから、共通して聞いた言葉だそうです。なぜ殺人を(自殺を)したのか、について。今となってはいくら考えても判らない、あの時はまるで悪魔にささやかれてでもいるようだった、と。

自分の弱さを正当化するために言っているのではないんですね。京極夏彦の『魍魎の匣』に「通り物に当たる」という表現がありましたが、同じことを言っていますね。目の前にいる相手の首が、細くて、自分でも絞められそうに思えたから絞めてみた──本当に、そんなことで殺人犯になってしまった人がいるんだそうです。それを、妖怪作家京極夏彦は「通り物」と言い、キリスト者加賀乙彦は「悪魔」と表現する。

「思索とか理性とか意志とか決意といったはっきりした心のありようとは違って言葉ではうまく表現できない、あいまいでぼんやりした精神状態において、悪魔がささやくという現象がおこりやすいのです」

という観察のもとに、個人の犯罪や自殺にとどまらず、広く社会一般の風潮にも著者の考察は及んでいます。ひとつの社会、ひとつの国家全体が、ぼんやりした状態の心でいて、悪魔にささやかれてしまっていることがあるのではないかと。

国を挙げてナチズムに賛同してしまったドイツ、フランス革命時の恐怖政治、あっさりと何のためらいもなく決定された原爆投下……そして、日本にもこの例はぞろぞろ。著者は「日本人は悪魔のささやきに弱い」と断言しています(苦笑)。

加賀さんの実体験として印象深かったのが学園紛争の思い出。

「ついこのあいだまで『先生、先生』と慕ってくれていた教え子までが、私の胸ぐらをつかんで『このやろう!』と殴りかかってくる。かつて精神医学の初歩を教えた勉強熱心な学生も人が変わったように、『反革命の教師なんか死んじまえ』などと罵声を浴びせ、突き飛ばす」「それまでひとりひとり性格が違っていた教え子たちがみんな同じように動き、あっという間に集団暴力をふるいはじめた」というのが吊し上げられた加賀さんの印象です。やがて学園紛争の季節は終わり、学生達は何事もなかったかのように日常生活へ帰って行きます。

「つい先日、私を吊しあげた学生たちの一人に会ったんですが、当時私に対してしたことをすっかり忘れていました。忘れたふりではなく、本当に覚えていない。私のほうでは、忘れようったって忘れられないのに」

さも懐かしそうに「やあ先生、お元気ですか!」か何か言ったんでしょうか(苦笑)。

悪魔につけこまれないためには一体どうすればいいのか。著者は「知」を育てることと個人主義が大事だと主張しています。「自分の頭で考えないことにかけては、日本人は昔から定評があるんですから」……耳が痛いなあ(汗)。

池田小学校事件とか、オウム真理教事件とか近年の大事件についての加賀さんの考察も入っています。今でも精神科医である加賀さんは、松本智津夫被告に接見したことがあるそうです。かつて東京拘置所で服役者の詐病を見抜く経験をたっぷり積んでる加賀さん、松本被告は詐病じゃない、と断言してますよ。

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