『日本歴史を散歩する』 海音寺潮五郎 | 手当たり次第の読書日記

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新旧は全くお構いなく、読んだ本・好きな本について書いていきます。ジャンルはミステリに相当偏りつつ、児童文学やマンガ、司馬遼太郎なども混ざるでしょう。
新選組と北海道日本ハムファイターズとコンサドーレ札幌のファンブログでは断じてありません(笑)。

海音寺 潮五郎
日本歴史を散歩する

父親の本棚に入っていた古い文庫本です。何となく手にとって目次を開いてみたら、「久坂玄瑞の恋文」という章題が目にとまりました。
えっ面白そう!と勢い込んで読んでみたら、京都は島原に久坂の馴染の芸妓がいて、文久3年8月18日の政変で長州が京都を追われたのを最後に二度と会うことはなかったという話でした。翌年長州兵を率いて上洛した際、久坂は彼女に会いに行ってるんですが、長州人はお尋ね者だからと会わせて貰えなかったのだとか。
久坂が去った後でそれを知らされた彼女は、真っ青になって「どちらに向けて行かはった?」と外へ走り出たとありますから、相思相愛の仲だったんですね……その後の彼の死に様を思うと、哀れ、の一語につきます。
という悲恋のエピソードなんですが、その話に入る前。ある夜久坂がひとり駕籠で島原へ向かった、と書いたところで、いきなり新選組の話になっちゃうんですよ。
中村彰彦「輪違屋の客」でも書かれた、加納惣三郎の辻斬り事件。
加納惣三郎といえば、司馬遼太郎「前髪の惣三郎」及び映画「御法度」が有名な訳ですが、どちらが実際に伝わってる話に近いかといえば、当然というべきか(笑)中村作品のほうでした。海音寺さんが紹介してる事件のあらましは、殆ど中村作品そのまんま。違いといえば、惣三郎を斬ったのが、小説では土方歳三でしたが、実際は局長副長の命を受けた平隊士2名だったらしいということぐらいです。
で、久坂エッセイなのに何で新選組ネタが出てくるのかというと。
話が元へ戻って、島原へ行く途中の久坂。田んぼの一本道を半分ほど行ったところで、「その駕待て!」と木陰から怪しい男に呼び止められたというんですね。


 つかつかと駕のわきに寄って来たところを見ると、眉深に頭巾をかぶってはいるが、ちゃんと袴をはいた浪人風だったといいます。久坂は、静かに駕の垂を上げて、
「人違いするな、わしは長州の久坂だ」
 声をはげまして、叱咤するというでもなく、極く静かな声で言ったそうですが、それを聞くと、賊は何にも言わずに飛ぶように逃げたといいます。
 久坂の威勢は、こんなものだったそうです。


うおお、久坂ってば、格好いいじゃないですか!
で、海音寺先生のひとこと。


 この時の賊が、前の加納惣三郎だった、ということにすれば、ちょっとした物語が書けそうですな。


誰か書いて!(笑)