手当たり次第の読書日記

新旧は全くお構いなく、読んだ本・好きな本について書いていきます。ジャンルはミステリに相当偏りつつ、児童文学やマンガ、司馬遼太郎なども混ざるでしょう。
新選組と北海道日本ハムファイターズとコンサドーレ札幌のファンブログでは断じてありません(笑)。


テーマ:
藤沢 周平
回天の門

幕末小説は世に多々あれど、これはちょっと珍しいかも。文庫本で500ページ超、堂々の主役を張ってるのは清河八郎です。
同じ藤沢周平作『雲奔る』のあとがきにもありましたが、作者にとって清河八郎、自分の郷里から出た志士、なんですね。なので最初っからどうしても見る目が他人とは違う。山師策士と呼ばれ悪評まみれの彼ですが、それは「誇張」「曲解」があるとし、悲劇の志士として描いています。
実家は豪農で大規模な酒造家で、つまりは大金持ちのお坊ちゃま。14歳の頃から郭通いをし、「ど不敵」な性格の少年は、おとなしく家業を継ぐ気にはどうしてもなれず、江戸に出て学問と剣術に励みます。やがて念願だった文武ニ道教授の塾を開きますが、時代の動乱を目の当たりにするうちに、「学者だからといって、黙って坐って書物を読んでいるわけにはいかん」と思い始め……。
という辺りまではスムーズに読めるんですが、国事奔走のための集団「虎尾の会」結成のくだりぐらいから、八郎のキャラクターにちょっと飛躍があるな、という感じがしてきました。
後継ぎという立場に縛られて鬱屈と情熱を持て余す少年から、時勢に胸をとどろかせる英明な青年へと成長していく訳ですが、このいずれの段階でも、八郎、基本的に「普通の人」なんです。いたずらに過激の言辞を弄したり刀を振り回したりはしていない。
それがいきなり、ごく当たり前のように横浜焼き打ちの計画を立て、将来の倒幕を決意し……い、いつの間にそういう奴になったんだ(苦笑)。
八郎を山師的と呼ぶなら、真木和泉だって西郷・大久保だってそうじゃないかというのが作者の言い分です。それは確かにその通り。彼等ほど身分が高くなく、「草莽」であったがゆえに扱いが違うのではないか、と藤沢氏は言うんですね。それも当たってるだろうとは思うんですが。
一介の志士が、対幕府、対朝廷、対藩の行動ならば策を弄するのはむしろ当然です。でなければ渡り合えるものではない。でも八郎が浪士組結成に当たって用いた策は、相手は幕府だけではありませんでした。彼は集まった浪士達200人をも騙していた。騙したというのが言い過ぎならば、自分同様の草莽である彼等を、同じ立場の人間としてではなく、只の「頭数」としてしか見ていなかった。
藤沢さん、そこのところは少しも気にならなかったのかなあ……? 最初から「弁護しよう」という意図があって書かれた小説の限界を見たような気がします。
ラストシーンは勿論、八郎が佐々木只三郎達に斬られるところなんですが、この解釈は斬新でした! こう来たか……悲壮美ですね。

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