昨日は日本参入以前での段階でのTPPの狙いでした。
では日本参入した場合、米国の狙いはどこに焦点があるのかをよく検証する必要があります。
日本の報道では日本にとってのメリットデメリットが中心の話題ですが、それでは話の断片にしかすぎません。
物事を検証する上においては利害関係者の狙いを見極めることがきわめて重要な要素なのです。
報道が意図的にその部分に触れないのか、あるいは分析能力が皆無であるためなのか、はたまた両方か
ちなみに私は両方だと思っています。
以下に数日前のTBSニュースと毎日新聞のネット記事を転載します。勝手に利用させていただきました。感謝申し上げます。
【TBSニュース】
TPP=環太平洋パートナーシップ協定をめぐってアメリカのカーク通商代表は、日本の交渉参加の是非を判断する事前協議で、アメリカ産牛肉と自動車の市場開放や郵政改革などを議題として取り上げる考えを明らかにしました。
「アメリカ産牛肉、自動車、郵政改革は数多く日本と協議してきた問題だ。事前協議でも議論を続けるだろう」(アメリカ・カーク通商代表)
APEC閣僚会合後の会見でカーク通商代表は、日本のTPP交渉への参加表明を歓迎した上で、日本との事前協議の議題としてアメリカ産牛肉の輸入制限撤廃と自動車の市場開放、日本郵政の優遇措置見直しの3つの分野を取り上げると表明しました。
さらにカーク通商代表は、この3分野以外についても「今回の機会を利用して日本側と協議する」と述べ、個別分野に関する突っ込んだ議論を行う考えを示しました。
「日本としても、このAPECや東アジアサミットなどを通じて、日米が連携してこの地域での役割を果たしていきたい」(野田首相)
一方、野田総理大臣は日本時間の13日午前、アメリカのオバマ大統領と会談し、交渉への参加に向け関係国との協議に入る方針を表明する見通しです。(13日00:23)
【ワシントン白戸圭一】
オバマ米大統領は12、13日に米ハワイで開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議への出席を皮切りに、アジア・太平洋地域を歴訪する。欧州経済が混迷する中、大統領はアジア・太平洋地域での輸出拡大を米経済回復の糸口にしたい考えだ。さらに19日にインドネシア・バリ島で開かれる東アジアサミットに米大統領として初めて出席する予定で、政権の「アジア・太平洋重視」を象徴する歴訪となる。
APEC首脳会議で議長を務める大統領は、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)交渉参加9カ国の首脳会合も主宰し、交渉の大枠合意を目指す。12日には野田佳彦首相、中国の胡錦濤国家主席、ロシアのメドベージェフ大統領との会談も予定している。16~17日にはオーストラリアを訪問し、軍事分野での協力強化を表明。最後はインドネシアで東アジアサミットに出席する長期外遊だ。
大統領は昨年、5年間で輸出を倍増し、200万人の雇用を創出する「国家輸出構想」を発表したが、米国の10月の失業率は9%と依然高く、雇用問題は来年の再選を目指すオバマ大統領の足かせになっている。
そこで政権が期待を寄せるのが、アジア・太平洋地域向けの輸出拡大を通じた雇用回復だ。ローズ米大統領副補佐官は9日の記者会見で「大統領のAPECでの最優先事項は雇用創出」と明言。クリントン国務長官は米外交誌フォーリン・ポリシー11月号の論文に「アジアの成長と活力を利用することが米国の経済的・戦略的利益の中心に位置しており、オバマ大統領の優先事項だ」と記し、アジア・太平洋重視を鮮明にした。
米国の昨年の東アジア向け輸出は約2537億ドルで、前年比32.6%増の大幅な伸びを記録した。欧州向け輸出が同8.6%増だったのとは対照的だ。2月の「米大統領経済報告」は、米国の中国向け輸出が14年まで年率18%の勢いで増えると予測しており、米経済の「アジア頼み」が一層強まる見通しだ。
ただ、安全保障分野では、米政権は中国の軍事力増強や南シナ海への海洋進出を引き続き警戒している。米シンクタンク・戦略国際問題研究所(CSIS)のアーネスト・バウアー氏は「オバマ大統領は東アジアサミットで、南シナ海問題について何らかのメッセージを発するだろう」と述べ、米側が中国をけん制する可能性を指摘している。
賛成だ、反対だ、と政治家の間でも意見が分かれているTPP。テレビのニュースを聞いても、新聞を読んでも、やたら難しくて…という人も多いはず。簡単に説明すると、TPPは「参加した国が、お互いの輸出品にかけている関税を0%にする」という取り決めだ。
以上です。
アメリカの狙いは輸出拡大による雇用拡大であること、軍事的な側面からの太平洋影響力の強化と増強にあると見て取れます。
アメリカの国益に即したもっともな言い分です。
米国は過去連綿、自国の国益を最重視するというスタンスを変えていません。
そのための軍事力であり、基軸通貨性であり、国際会計ルールなのです。まったく正しく純粋です。
しかし利害関係者である我が国や他のアジア諸国にとって国益かどうかについては全く別問題です。
それはそれぞれの国がよく精査し、検証しなければならないことなのです。
我が国はあろうことかその部分についての検証をこの10か月間ほぼ無策で過ぎ去りました。
頭が悪いこともあるのでしょうが、ばかばかしくて見ていられません。
首相の支持率は20%低下し40%になったようです。当然でしょう。
自らの国益にかなうか否か、国民に納得できる説明ができなかったばかりか、結局は説明しようとすらしなかったからです。
日本の市民はいかに情報統制、誘導しようとしてもそのレベルは高く、分析能力も高度な域にあります。この2年間の国民をばかにした情報隠ぺいや誘導、勝手な国際公約などに対して、ほぼあらゆる分野で国民や企業の怒りは高いといえます。
その洗礼は選挙によって示されるでしょう。すでに死に体の政権です。
TPP交渉離脱により発生するであろう国際非難のいけにえに供するには格好の餌食です。
消える時ぐらいは役に立ってもらいましょう。
【TPP日本参加に対する米国の狙いについての私見(経済面)】
昨日は主に軍事面と資源面での米国の狙いと展望を考察しました。
今日は日本参加の場合で経済面から検証してみます。
報道でもよく見るようにTPPは実質的に日米の高度自由貿易協定です。
参加国は9国ですが合計GDPの内91%が日米。
豪も入れて95%です。
経済的な側面から見れば、9カ国の合意成立があったからなんなんだと思います。
日本のGDPは全体の25%を占めているからです。
来年3月の大筋合意ができるまで条件交渉にも参加できないなら、
参加するメリットなど見当たりません。
仮にこの9カ国協議でTPPが発動したとしてなにかデメリットが日本にあるのでしょうか?
韓国も参入しないこの不平等条約にわずか全体の9%のGDP先の8カ国が日本の製品群に比較してなんらかの競合有利の関係が発生するのでしょうか?
答えはまったく影響がないといえます。
むしろ、TPP発効により、米国以外の参加国の不利益が表面化し、混乱が発生したタイミングでおもむろに新たな枠組みの構築を提案したり、FTA等を個別交渉していったほうが現実的かつ国益を失わないでしょう。
米国の日本参加による日本市場での狙いは3点。
1つ目は金融です。
日本の政府企業個人の所有金融資産は合計で2827兆円。
これを仮に全額取り込み年間1%の仲介手数料収入を得れば28兆円の収益が上がります。
企業・個人資産が狙いなのではない。年金機構・郵便貯金・共済の運用が取り込みたいのです。
また特に郵便貯金・共済は国際ルールにのっとったものではないいわば日本独自のローカルルールで様々な優遇措置が図られていますが、TPPに参加すればこれらの優遇を許容できなくなります。
郵便の金融分野や共済解体に伴う混乱期が発生すれば米国金融の格好の草刈り場になります。
同時に農協も収益分野を失うことになりますので、日本農業の競争力はさらに低迷することになり生産量を維持できなくなっていくでしょう。
結果、米国農産物輸出も容易になるとの戦略を描くと思われます。
収益力では圧倒的に金融分野の取り込みが高いでしょうが、国家の安全保障の3つの根幹である、軍事・食糧安全保障・金融の内2つ金融と食糧安全保障に対して米国の影響力を高めることができます。
2つ目は通信と製造業の厳しい安全規格の水準引き下げです。
日本の規格は海外からは異常に厳しく、日本に販売する商品を作るためには、専用の独自の生産ラインが必要です。
アップル以外の携帯電話が日本国内になぜ参入しないかはこの規格にあります。
いわゆる非関税障壁です。
TPPにより規格を米国基準まで下げることが狙いと考えることができます。
3つ目は医療です。
医者の輸出を狙っているのではありません。
日本の薬品基準は同じく極めて厳しい。安全性確認のためには米国の数倍の実験と臨床実験が必要で、使用可能物質にも厳しい制限があります。
日本の薬品業界は米国の2週遅れですが、安全性基準により保護されているのです。
米国は高齢化社会となる日本の医療薬品市場がほしいといえます。
米国の医薬品を日本用に特別な加工を施さずに輸出するためには、安全基準引き下げが必須です。
TPPには「科学的に妥当な安全性の基準を設定する」と謳っています。
日本の安全基準は疑わしきはすべて排除するという激烈なものです。
「科学的」とは聞こえがよいですが、当然これは多少のリスクに比較してメリットが多いのであればリスクを許容すべきというアメリカの科学的な基準が、規模、利用してきた人口では高いこともあり、多数決の原理で選ばれていくことでしょう。
TPP参加国のすべてに同一ルールを適用するのであれば、当然に途上国でも対応可能な安全水準に引き下げることを要請してくるでしょう。
日本薬品業界は、非関税障壁である異常に高い安全水準が撤去され、壊滅していくことでしょう。
この結果、米国は巨大な日本の医薬品市場を支配することが可能となります。
私の目から見ると、別に農業が主戦場にされているわけではありません。
むしろ目くらましなのではないでしょうか。確かに相当な打撃をうける分野ですが、米国からとり日本の農業分野がそこまで巨大な市場を確保できると考えているとは思えません。
真の狙いは金融・製品規格・医薬品にあると感じます。
ちなみにこれらの要望事項は2011年2月に日米経済調和対話にて既に要請されている事項です。
実際に読んでみればよくわかります。興味のある方は記事の最後に転載しておきますのでご一読ください。米国の狙いがよくわかります。
オバマ大統領も、米国議会も、米国産業団体も
日本交渉参加に対し、2011年2月の日米経済調和対話を重視していることを明言してます。
日本報道はあえて触れていないことが気になりますが。
日本の立場からだけで考えるのではなく米国の立場に立ち考えれば、真の狙いが見えてきます。
それらをよく知るほど、この貿易協定は到底飲めるものではなく、メリットがないものかと知ることができました。
それに、私は実は米国のTPPの新の狙いは日本にはないと踏んでいます。
昨日述べたとおり、太平洋の影響力の強化と、中国、ロシアの封じ込めの包囲網の整備だと感じています。
そもそも今回の日本のTPP交渉参加表明によりほぼ米国の目標は達成されました。
①欧州経済圏への牽制。
②世界中の国家がTPPに参加意欲もしくは検討を表明させ、TPPの優位性をアピールできた。
③巨大市場決済通貨はドルとなりドルの信認が戻る可能性を高めた。
これらはいずれも力を失いつつあるドルの信頼を回復させる大きな広告となりました。
選挙の近いオバマ大統領にとり、最も必要なのは「短期的な成果と今後米国が回復する兆しを示すこと」だからです。
まあ、野田首相が大統領選挙の協力のため、参加するつもりもなくリップサービスを行ったというのであれば大した政治能力ですが、それは、今までの実績から考えても残念ながら期待できないでしょう。
国民は自ら声を上げ続ければあるいは、結果そのようになるかもしれませんが、現時点では野党も役に立たず依然不透明な状況です。
参考資料:
【日米経済調和対話】
*下記の日本語文書は仮翻訳であり、正文は英文です。
English
2011年2月
(仮訳)
米国政府はこの新たな日米経済調和対話を通じ、新たな機会を創出し、新規事業や貿易を促進し、公共の福祉を増大させる措置を講じることによって、両国の経済成長を支援する機会を歓迎する。米国政府は、実行可能な範囲において、両国のシステム、規制アプローチ、その他の措置や政策の調和に向け、この共通の目標を推進する形で日本と緊密に協働することを期待する。
日本との協力関係の強化は、この対話において米国が特に重視する領域である。情報通信技術、知的財産権、農業関連措置やワクチンといった領域における両国の協力はすでに良好な成果をもたらしている。この対話の下、米国は共通の目標の達成に向け、当該領域ならびにおそらくはその他の領域においても、引き続き日本とのさらなる調和と連携を促進する。
米国側関心事項
情報通信技術(ICT)
通信
周波数:オークションの活用を認めるなど、日本の周波数割当プロセスにおける客観性、透明性、説明責任を向上させる措置を講じ、より一層の競争とイノベーションを促進する。
支配的事業者規制:NTTやその関連会社に関わるいかなる改革も、特に新規市場参入者に対して競争的機会を保証する手段を十分に提供するものとなるようにし、政策決定プロセスがNTTからの不当な影響を受けず、開放的かつ非差別的な方法で進められるよう確保することで、競争や消費者による選択を推進する。NTTグループの再編に関わるいかなる提言もパブリックコメント手続きの対象とする。
移動体接続料:移動体着信料金が、日本の法律に沿い、効率的な経営の下でのコスト志向の原則に基づいた水準に設定されているか否かを評価する調査を開始することで、消費者の利益につながる公正な価格設定慣行を確保する。 融合サービスおよびインターネット対応サービス:融合サービスおよびインターネット対応サービスに関わる規制が策定または更新される際、日本の規制アプローチが、インターネット配信映像など革新的製品やサービスの提供を可能とすること、また支配的事業者が市場の競争を歪めないことを確保する。
透明性:総務省の規制・政策決定機関としての役割に鑑み、審議会・研究会等を含む、総務省の政策決定プロセスにおける透明性と説明責任を向上させる措置を講じることで、新たな技術について公正な市場機会と消費者による選択を確保し推進する。
国際協力:ICTに関わる共通の懸念や関心事項について、重要分野における共通原則の策定等を通し、WTO等の場で引き続き協力の機会を探る。
情報技術
政府のICT調達:国際的な技術標準や傾向を反映し、技術中立性や相互運用性の原則に沿った日本政府全体に適用される政策の実施等を通して、政府のICT調達の競争、透明性、公平性を高める。
医療IT:国際標準に基づき、技術中立性や相互運用性を促進し、患者自身による自らの医療記録へのアクセスを向上させる医療ITを早急に導入することで、日本の患者にとっての医療の質と効率性を高める。
クラウド・コンピューティング:社会全体で成長やイノベーションを促進するクラウド・コンピューティング技術の潜在力を最大化するために、国境を越えるデータの自由な流れを促進する。データサービスについて提供場所が日本国内か国外かにかかわらず非差別の原則を採用する。データセンターやクラウド・コンピューティングに関わる規則の策定・施行に際し、透明性を確保し、国内外の産業界の意見を聞く。
プライバシー:政策の標準化や、ガイドラインの一貫性のある施行を通じ、個人情報保護法の実施について中央政府機関全体でさらなる統一化を図る。データの適切な共有を促すために、現行法の規定と運用を再検討し、データ保護に対するバランスの取れたアプローチを採用する。オンライン広告における個人情報の利用に関わるガイドラインの策定に際し、透明性を確保し、国内外の産業界の意見を聞く。
知的財産権
技術的保護手段:主に技術的保護手段の回避のために使用される機器やサービスの取引や、回避という不正行為に対して、より包括的な禁止規定を提供し、また必要に応じ、十分な民事・刑事上の救済を提供する等、アクセスコントロールおよびコピーコントロールに対する救済手段を提供することにより、技術的保護手段(およびこの技術的保護手段を採用するビジネスモデル)の確固たる保護を確実にし、権利者自身の著作物を保護する能力を高める。
著作権保護期間の延長:OECD諸国や主要貿易相手国での傾向を含む、新たな世界的傾向と整合性を保つよう、オーディオビジュアル作品に加えてすべての著作物に関わる著作権保護期間を延長し、著作権保有者の保護を強化する。
オンライン上の海賊行為:オンライン上の侵害に対するエンフォースメントを強化するために、法律、規制、その他の方策を更新する措置を講じる。またオンライン上の海賊行為に対処するため、インターネット・サービス・プロバイダーや権利者を含む、利害関係者間の協力的取り組みを奨励する。
エンフォースメント手段:権利者からの申し立てを必要としない、警察や税関職員および検察の主導による知的財産権の侵害事件の捜査・起訴を可能にする職権上の権限を警察や税関職員および検察に付与し、権利者への実効的な救済手段として著作権や商標権侵害に対して予め決められた法定損害賠償の制度を採用することで、知的財産権の侵害に対するエンフォースメントを強化する。
保護の例外:すべての著作物を対象に、日本の著作権法の私的使用に関する例外規定が違法な情報源からのダウンロードには適用されないことを明確にする。また、日本政府および審議会等が著作権保護に対する制限や例外に関わる提言を検討する際には、完全な透明性と、利害関係者が意見を提供する有意義な機会を確保する。
特許法と手続き:ワークシェアリングの効率性の促進により、特許手続きを簡素化する。中小企業や大学関連機関等において一層のイノベーションを促す環境整備に向けた施策を検討する。
透明性:デジタル環境などにおける著作権の適用やその他の知的財産権の問題に影響を及ぼす政策やイニシアチブを日本政府が策定・更新する際には、完全な透明性と利害関係者が意見を提供する有意義な機会を確保する。
日米協力:国内および世界中での知的財産権の適切かつ有効な保護とエンフォースメントを確実にするため、日米間でのさらなる協力を促進する。
郵政
保険と銀行サービスにおける対等な競争条件:市場における活発な競争を通して消費者の選択肢の拡大を推進するため、日本郵政グループの競争上の優位性を完全に撤廃し、規制面ですべてのサプライヤーに同一の待遇と執行を確保することにより、保険と銀行サービスにおいて日本のWTO上の義務と整合する対等な競争条件を確立する。
郵政改革:日本政府や関連する審議会などが、競争条件に影響を及ぼす日本郵政グループ関連の施策の変更を検討・実施する際には、完全な透明性を確保し、利害関係者が意見を提供する有意義な機会を提供する。日本が将来的な改革を検討する際には、対等な競争条件に関する長年の懸案事項に対処し、日本郵政グループに追加的な競争上の優位性を与えないようにする。
日本郵政グループの金融会社の業務範囲:かんぽ生命保険とゆうちょ銀行の業務範囲の拡大を認める前に、日本郵政グループと民間金融機関の間に対等な競争条件が整備されていることを確保する。
国際エクスプレス輸送における対等な競争条件:競合するサービスにおいて他の国際エクスプレス輸送サービス業者が課されるものと同様の通関手続きとコストを日本郵便に課すことや、独占的な郵便事業の収益が日本郵便のEMS(国際スピード郵便)の補助金となるのを防ぐ措置を取ること等により、国際エクスプレス輸送分野において効率的な競争と対等な競争条件を促進する。
保険
共済:健全で透明な規制環境を促進するため、共済と民間競合会社の間で、規制面での同一の待遇および執行を含む対等な競争条件を確保する。
保険の窓口販売:健全な消費者保護を確保しつつ消費者の選択肢の拡大と利便性の向上を促すため、銀行の窓販チャネルについて、事実に基づいた透明性のある見直しを適時に行い、必要な変更は、利害関係者から意見を得る有意義な機会を設けた上で、グローバル・べストプラクティスを考慮に入れつつ行う。
生命保険契約者保護機構(LIPPC):現行制度が2012年に失効する前に、より効率的で持続可能なセーフティネット制度を作ることを確保する。日本政府が制度の改訂を検討する際は、完全な透明性の維持を確保する。
外国保険会社の事業の日本法人化:日本において支店方式で営業を行っている外国保険会社が日本法人に事業を移行したいと希望した場合、保険契約者および債権者を保護する一方で、事業の継続性を維持するような途切れのない形で移行できるよう確保する。
独立代理店:保険商品の第三者販売チャネルの競争力を強化するための新たな措置を検討する。
透明性
パブリックコメント手続き(PCP):より長いコメント期間を設けることや、最終的な決定が下される前に利害関係者の意見が十分に検討されることを確保するための追加的な方策を取るなど、日本のPCPを強化する方策を通じ、状況の変化や外国の利害関係者を含む利害関係者の懸念に対して開かれており、これに対応していると評価される強固で有意義なパブリックコメント制度を構築する。
審議会など:審議会等の設置や運営および利害関係者と国民に対する審議会等の開放性に係わる要件を厳格化することにより、利害関係者と国民に影響を与える可能性がある新規の政策や規制を検討する際に政府が設置する審議会等の透明性と包括性(インクルーシブネス)を向上させる。
規則の解釈:規則に関して一般的に適用される解釈の公表を政府当局に義務付けることにより、透明性、予見可能性を向上させ、規則の順守を促す。
運輸・流通・エネルギー
自動車の技術基準ガイドライン:革新的かつ先進的な安全機能を搭載した自動車に関する自主的ガイドラインを定める際の透明性を高め、また自主的ガイドラインが輸入を不当に阻害しないよう確保することで、米国の自動車メーカーがこうした自動車を日本の消費者により迅速かつ負担のない形で提供できるようにする。
再生可能エネルギーに関する規制制度:風力発電事業の許認可も含め、関連する規制制度を簡素化・統一することで、より多くの再生可能エネルギー技術の採用を推進する。
申告のための通関事務所の選択:輸出入・港湾関連情報処理システム(NACCS)を利用する通関業者が利便性のよい通関事務所でエクスプレス貨物の申告ができるよう認め、円滑かつ効率のよい通関手続きを促す。
税関職員の共同配置:民間企業所有の保税地域への税関職員の派出を認め、書類審査のための通関事務所への移動時間を無くし、税関職員が現物検査を行うまでの待ち時間を減らすことにより、通関手続きの効率を向上させる。
免税輸入限度額:現行1万円の免税輸入限度額を最低でも二倍に引き上げることで、円滑な物流を可能にし、税関職員の仕事量を削減する。
農業関連課題
残留農薬および農薬の使用:日本の最大残留基準値設定に関わる農薬の審査、農薬の収穫後利用に関わる枠組み、基準値違反に対する執行政策など、未解決の農薬関連の問題に対処することにより、新規に開発されたより安全な農薬のさらなる利用を促進し、日米両国の政府関係者の協力を促す。議論では、国際的な基準と慣行が考慮されるべきである。
有機農作物:科学に基づいた基準を有機農作物に使用される生産資材の環境への安全性の評価に適用し、有機農産物の貿易の強化を目的に現行の残留農薬政策を修正し、さらに両国市場において有機農産物の表示に取り組むために協力する。
食品添加物:日米両政府の協力体制を強化するとともに、FAO/WHO合同食品添加物専門会議によって安全と認められており、かつ世界各国で使用されている46種類の食品添加物の審査を完了することにより貿易を促進する。現在、6種類の食品添加物の審査が終了していない。
ゼラチン:ゼラチンの市場へのアクセスを提供することによって科学に基づいた国際的なガイドラインと整合性を持たせる。
競争政策
執行の有効性:調停手続きの導入、過度な独占禁止法(独禁法)適用除外の廃止、企業結合の審査における効率性および透明性の改善、大学院レベルの経済学の教育を受けた職員の増強、適切な執行問題に関する外部専門家の採用、独禁法に関する裁判官向け教育プログラムの構築などを通じ、効果的な独禁法の執行プログラムがもたらす利益を増大させる。
手続きの公正性:公正取引委員会(公取委)の行政審判や司法審査制度の改革、公取委の執行上の必要性に沿った形での公取委調査における保護手続きの強化、公取委が命令を出す前に企業が疑惑に対して申し立てを行なう十分な機会の確保などを含む、公取委の行政および調査過程の手続きの公平性と透明性の改善を通じて、公取委の執行決定に対する信頼性を高める。
談合:特に調達担当職員の利益相反を排除するための規定の強化や、官製談合を排除する取り組みの促進、公取委の課徴金減免制度の適用が認められた企業に対する行政措置減免制度の拡大などの措置を通じて、政府調達における競争を促進し談合を排除する。
ビジネス法制環境
国境を越えたM&A:対日M&A活動を阻害している可能性のある法律、規制ならびに税制上の要件の見直しや、買収防衛策の導入に際しての一般的な株主利益の保護強化などの取り組みを通じて、日本がより活発な対日M&A活動から恩恵を受けられるようにする。
コーポレートガバナンス:真に独立した取締役の役割強化、株主投票のメカニズムの有効性の向上、企業開示の充実および少数株主保護の強化などの国際的なベストプラクティスの促進を通じて、効率的な商慣行および株主に対する経営の説明責任を改善する。
法務サービス:外国法事務弁護士(外弁)による専門職法人の設立を認めること、外弁の法律事務所が国内に複数の支所を設置することを認めること、インターナショナル・リーガル・パートナーシップにおいて弁護士が対等なメンバーになることを認めること、また外弁の資格要件の見直しを行なったり認可手続きおよび報告義務の簡素化を図ること等によって、日本における国際的法務サービスへのアクセスを拡大する。
医薬品・医療機器
医薬品・その他
新薬創出・適応外薬解消等促進加算(新薬創出加算):新薬創出加算を恒久化し、加算率の上限を廃止することにより、ドラッグ・ラグ解消を促進し、研究開発への誘因を強化する。
市場拡大再算定:市場拡大再算定ルールが企業の最も成功した製品の価値を損なわないように同ルールを廃止もしくは少なくとも改正し、日本における当該製品の開発を奨励する。
外国平均価格調整(FPA)ルール:日本における価格が外国平均価格より高いか低いかにかかわらず、製品が平等に扱われるようFPAルールを改定し、日本の薬価政策の公正な実施を保証する。
14日の処方日数制限:患者の利益ならびに医薬品へのアクセスを考慮し、新薬の14日処方日数制限ルールを改正し、安全性の保障に必要な最低限の制限にする。
ドラッグ・ラグ:日本における革新的新薬の早期導入を促進し、ドラッグ・ラグを縮小するよう次の措置を取る。適切な場合には東アジア諸国における臨床治験データの受け入れを検討する。医薬品の承認審査目標が達成され、事前相談の申し入れへの対処が迅速に行われるよう保障する。最近の業界との積極的な交流を基に、医薬品医療機器総合機構(PMDA)ならびにスポンサーが、質疑応答プロセスの支援に必要な実務要員をより効率的に計画・管理するために役立つ明確なプロセスを構築する。
行政審査期間:年4度の薬価収載を月一度へ増やし、日本の患者の新薬へのアクセスを迅速化する。
手数料:2012年から2017年までの手数料の規模および評価指標などを含む、次期手数料制度の詳細について業界との協議を開始し、日本の薬事承認プロセスにおける効率性の向上に対する業界の継続的な貢献を奨励する。
血液製剤:国内自給、表示、規制、保険償還の問題についての米国業界との協議を通じ、日本における患者の血液製剤へのアクセスを拡大する。関連する委員会等において、業界が情報、意見および証言を提供する機会を設ける。
ワクチン
ワクチンに対するアクセス:日本全国におけるワクチンの供給を促進する長期的解決策を見つけて、2010年に採用されたHIB、肺炎球菌、HPVワクチンについての措置を拡充する。
透明性:推奨ワクチン特定のための明確な基準およびスケジュールを設け、新ワクチンの日本の患者への導入を迅速化する。
ワクチンに関する意見交換:二国間の協力および意見交換を通じ、国のワクチン計画の策定に対する日本政府の取り組みを促す。
医療機器
外国平均価格調整(FAP)ルール:FAPを廃止、もしくはそれが不可能な場合はFAP算定時のルールと手法の不変性を確保し、日本において時宜にかなった医療機器の導入および安定供給を促進する。
体外診断薬(IVD)に関する保険償還:臨床的価値に基づきIVDの保険償還を評価し、日本の医療制度の効率性を向上させる高度で改良されたIVD製品の価値を評価する。
大型医療機器に対するC2 保険適用プロセス:革新的な大型医療機器に関し、1) どの製品がC2の指定に適格かの判断、また2) C2製品の適切な価格の決定に際しての明確な基準およびガイドラインの作成に向け、業界との対話を行い、このような医療機器の日本への導入を促進する。
デバイス・ラグおよびギャップの解消:医療機器の審査迅速化アクション・プログラムの時宜にかなった実施を保証し、革新的な医療技術の日本への導入を迅速化する。
企業に対する薬事規制負担の軽減:企業にとって薬事規制上の負担を増加させる原因となっている品質管理システムおよび外国製造業者認定に関する要件の修正に向け利害関係者と協議し、日本市場へ革新的技術を提供する企業が置かれた状況を改善する。
化粧品
医薬部外品:日本の消費者が医薬部外品製品により迅速に、不要なコストを課されることなくアクセスできるように、医薬部外品承認ガイドラインの導入およびその他の施策を実施する。
広告・表示:日本の消費者がより詳細な情報を得た上で判断ができるよう、化粧品の効能表示の範囲を拡充する。
化粧品・医薬部外品の輸入:化粧品・医薬部外品の輸入が改善かつ効率化されるよう輸入プロセスを簡素化・合理化する。
その他透明性・規制問題:化粧品・医薬部外品の広告に関する規則制度の透明性を高め、米国を含む業界関係者の全国医薬品等広告監視協議会(六者協)への参加を認める。
栄養補助食品
規制分類と表示:保健機能食品制度を向上させる方法、原料に特化した健康強調表示を許可するシステムの提案など、日本の健康食品制度について業界が情報や意見を提供できる機会を増やす。
健康食品安全規制:栄養補助食品に使用される新しい原料が医薬原料、食品原料、もしくは食品添加物として分類されるプロセスならびに基準を明確にすることにより、円滑な貿易を促進し、さらに他の先進諸国のベストプラクティスと比較して輸入手続きを向上させる方法を検討する。
食品添加物:他の先進諸国で一般的に認可されている、栄養補助食品に使用できる添加物、溶媒および化学形態の栄養素のリストを拡大する。
本記事の解説と考察はまた次回に触れます。


