自分用のリテーナーの
「VIVERA(ビベラ)」が届きました。
VIVERAはインビザラインを開発した米国のアライン社が近年開発したリテーナー用のアライナーです。
実は個人的に検証したいビベラの保定効果がいくつかあり、早速実験を開始してます。
想像していたよりは装着感はきつくもなく快適です。患者さんでビベラを装着するときつくて痛いと言われた方がいらっしゃいましたが、インビザラインとあまり変わらないと言うのが私の正直な感想です。他に原因があったのかもしれません。
特長としてはインビザラインよりアライナーの強度が30%増加し、硬く壊れにくい素材になっています。密度が高い分汚れにくくなります。今までのリテーナー用のマウスピースは歯型をとると、その歯型を壊さないとマウスピースを作製する事ができませんでしたので、作製の度にご来院が必要になります。しかし、ビベラは最終のインビザラインの歯型のデーターをそのまま発注できるため、歯型の印象をとらなくてもリテーナーを発注できます。遠方で壊れたりなくしたりしても電話一本でリテーナーを注文し、ご自宅に郵送できるので、いつまでも理想的な歯列を維持しやすくなります。さらにナイトガードのような歯ぎしり予防効果やホワイトニング材や虫歯抑制材のトレー代わりにもなるので保定効果以外の有益性も高いと考えられます。
他にも様々なタイプの保定装置がありますが、今までのマウスピース型リテーナーは強度が弱く咬み合わせが強い人で2~3か月で破損することもありかなりマネージメントに苦労しました。また歯型をとると、その歯型を壊さないとマウスピースを作製する事ができませんでしたので、作製の度に患者さんのご来院が必要になります。
また、一般的によく行われる前歯の裏側に半永久的に細いワイヤーで固定するフィックスタイプの保定法は最も固定する効果があると考えられますが、ワイヤーで固定しているためフロスが難しくなるのと裏側のワイヤーの維持が基本的に前歯と第一小臼歯のみですので大臼歯の頬舌的維持ができないという欠点があります。実際に他院で上下のフィックスのみで保定を行ったのに、後戻り(臼歯部の移動、アーチフォームの変化)された方が来られ、再治療を行ったことがあるので保定効果としては完全ではないことを実感しています。
一方昔からある取り外し式の表側に唇側線(針金)のついたプレートタイプのリテーナー(ベッグタイプ、ホーレータイプ)もありますが、唇側線がゆるむと歯が動いてしまうのと、唇側線で表から抑えているだけなので微妙なトルク(歯軸の向き)の固定が難しく、定期的なリテーナーのチェックが欠かせません。
そう考えると、総合的に見ても結局マウスピースタイプのリテーナーが保定効果と、審美性、操作性にも優れ、夜の歯ぎしりの防止にも役立ち、どのタイプのリテーナーよりも優れているということになります。今までは強度の問題で継続的に使用していくにはコストがかかるという側面もあり、それぞれのタイプのリテーナーを患者さんで使い分けていましたが、これからはそのような心配もなくなるかもしれません。実際にインビザラインリテーナーを20時間の装着で1年以上使用しても壊れなかった男性の患者さんもいらしゃいましたので期待できます。
さらに矯正終了後の歯並びのデジタルデーターから作製されるため患者さんにとっても理想的な歯列のマウスピースをいつまでもセットできる安心感があるようです。矯正医にとっても迅速なリテーナーの供給ができるので、継続的なマネージメントがしやすい装置です。現在世界的に見てもリテーナーとしてこれ以上優れた装置は存在しないのではないかと私は考えています。
ただし欠点として取り外し式なので装着しないと効果を発揮しないということです。これは他のタイプのリテーナーにも言えますが何日も装着しないと歯が移動して装着できなくなるリスクがあります。ビベラはフィックスとの併用もできるので、リスクはかなり軽減できると思います。
それでは保定期間、保定後のビベラの装着時間、使用頻度は最低どれくらいなのか?どれくらい頑張って装着すれば歯列は安定するのか?と言う疑問が沸いてくると思います。
歯の保定期間というのは一般的には矯正装置に関係なく矯正治療期間と同じくらいか、もしくは2年くらいと考えられています。2年という根拠は体中の骨組織が2年で新しく代謝(リモデリング)すると言われており、歯根の周りの骨や繊維が固まるのにその時間が必要と考えられているからです。保定期間のリテーナー装着のスケジュールは患者さんの初診時の歯並びの状態や治療法によってかわりますが、基本的には2年間の最初は20時間のリテーナー装着を行い、半年経ってから徐々に装着時間を減らしていきます。最終的に夜のみの装着に移行していきます。
しかし、実際の臨床では保定期間終了後、リテーナーを装着してないで後戻りをしたケースを見ることが少なくありません。つまり保定終了後もリテーナーを使用しないと多かれ少なかれ歯は動き続ける可能性があります。他のクリニックで矯正治療を行って保定期間終了してから後戻りを起こし、私のクリニックに矯正の再治療に来られる方が結構いらしゃいます。そのような現実を見てくるとやはり永久的な保定は必要だと考えるほうが健全だと考えます。
歯は基本的に頬と舌の筋肉に押されながらニュートラルな位置に落ち着こうとする性質があります(垂直的な歯の位置関係も咬合によりニュートラルな位置に落ち着く性質があります。)。さらに隣同士の歯の接触や対顎の歯と咬むことによりバランスのとれた位置に落ち着きます。常に歯は周りの筋肉に押されながらわずかではありますが自然に動き続けています。ロンドン橋の橋げたのように均整のとれた丸いアーチの状態が最も力学的にバランスが安定しやすいですが、日常の咬合力、歯ぎしりによる歯の咬合面、隣接面の咬耗、虫歯や補綴治療ににおける歯科材料の材質や重さなどのちょっとした口腔内環境の変化が年単位の長いスパンで徐々にバランスを壊すリスクになるのではないかと考えてます。
バランスのとれたものが年月とともにバランスを失っていくことはある意味宇宙の法則、自然の摂理、エイジングの一つであるともいえます。その流れに抵抗するためにはある程度の負荷が必要であり、その補助的な力としてリテーナーの定期的な装着が必要ではないかと思います。そう考えるとリテーナーはアンチエイジングに不可欠なツールと考えられます。
現在の歯科医療の考え方で歯を失う主な原因として虫歯や歯周病菌の感染、咬合性外傷、免疫力の低下などが一般的に言われていますが、それ以上に経年的に起こる歯列不正の悪化が歯の喪失の大きな原因になっているのではないかと私は考えています。今の歯科界は細かな咬合の確立にフォーカスし過ぎて、それがあたかも長期的な歯の維持につながると信じられていますが、矯正医の立場からみると徐々に変化する歯列全体の変化が見えていないようにも感じます。例えば抜歯するとバランスを失い両隣の歯が倒れてきます。特に力をかけなくても重力で歯は簡単に倒れてきます。歯は環境の変化に応じて次にバランスの取れる位置まで簡単に移動しているとも言えます。
人間の体は私たちが想像する以上の微調整能力、修復能力があり、歯並びも一緒です。徐々に変化してより居心地のいい場所を探します。もちろん年単位の長い時間の中での変化ですので毎日歯を見ていてもわからないですが、綺麗に並んだアーチの一か所が崩れてくると、そこを起点に唇や舌や歯に押されながら徐々にバランスを失い、歯列不正が悪化します。さらに治療でクラウンやブリッジなどの重い金属の補綴物を装着すると口腔内環境にとっては自然界にない重力が加わることで垂直的なバランスに影響を与え、歯列の湾曲(スピーの湾曲)や咬合平面の変化が促され、また、人工補綴物と天然の歯の咬耗のスピードも違うため、より自然な全体的な歯の咬耗ができなくなり、全体的な高さのバランスも崩れ、それによる外傷性咬合の増加によって歯が動揺して、咬合の崩壊がはじまるのは想像するのに難しくないと思います。
歯並びをキープすること、つまりリテーナーを生涯使い続けることは、歯を失わないために大切なことであると私は考えています。
現実的に8006(80歳で平均6本の歯が残っている)しか達成されていない日本の歯科医療の現状と同時に8020を達成している方はほとんど歯並びがいいという事実から考えると、歯を失う原因と対策に関して根本的な見直しが必要であると思います。
動き続ける歯列のバランスをキープしていくことが歯を守るための予防としてあまり積極的に考えられてこなかった背景には、歯が自然に移動することの認識不足、保定後の後戻りの治療に対してマネージメントの難しさ、再治療のコストがかかるという負のイメージ、そもそも現実的に継続的かつ簡単にリテーナーを生産する手段が存在しなかったことなど様々なことが原因としてあったのではないかと推測します。一般的に保定後は筋機能訓練を行いながら、歯列の維持を患者さんの自己責任に委ねる消極的なモニタリングになってしまいがちなのは、仕方のないことだったのかもしれません。
ビベラは保定後の壊れたり、失くしたりした場合の遠方の方への再作製がしやすくなり、小さな後戻りも強度のある理想的なアーチのアライナーを装着することで改善する効果も期待できます。さらに夜の歯ぎしりの防止、それによる歯の咬耗も防ぐことができます。また、ホワイトニング剤や薬による齲蝕予防の(Dental dorug delivery system)のマウスピースの代わりにもなります。様々な理由でマウスピースによる保定のメリットは計り知れないほど大きいと思います。
生涯美しい歯並びを目指すということは裏を返せば歯を失わないということです。
保定後の管理にポジティブな意識を持つ矯正医が増えれば8020もきっと夢ではありません。その起爆剤としてビベラが大きな役割を果たすのではないかと期待しています。
テクノロジーの進化とともに矯正医として究極の目標を持って仕事ができるのはとても幸せなことだと感じています。
あ-凄い長文!読んで頂きありがとうございました!!!
そんな理由で最も効率的なビベラの使用時間を自ら検証していきたいと思います。