青子の本棚

「すぐれた作家は、高いところに小さな窓をもつその世界をわたしたちが覗きみることができるように、物語を書いてくれる。そういう作品は読者が背伸びしつつ中を覗くことを可能にしてくれる椅子のようなものだ。」  藤本和子
  ☆椅子にのぼって世界を覗こう。


テーマ:
ハロワ!/久保寺 健彦
¥1,575
Amazon.co.jp


杉並区のハローワーク宮台に1年契約の嘱託職員として就職した沢田信。前職は民間の職業紹介会社に在籍していた28歳独身。公務員試験を受けて正職員になるのが夢。生真面目な彼の対応に指名で訪れるちょっと困ったリピーター求職者が3名。生活保護受給中で、元配管工の事務職希望:波多野郁夫68歳。気難しそうな顔で本を読みながら順番を待つが、応募はしない佐々木妙子:70歳。コロッケ持参でやって来る知的障害者:川本。3人は、毎日、待ち合わせたように午前中、待ちあいの最前列に席を占める。





エリート意識が高く、条件の緩和を拒む元銀行マン:斉藤正臣。

恋人気取りのアラサー女子:能勢ひなた。

空気が読めず、誰にでもタメ口の専業主夫:柳下岳。


次々と訪れるワケアリの求職者に誠実に対応する信。


斉藤のオチは笑えるし、柳下の顛末は、いい話やなぁと以外にほっこりできます。

それにしても、ひなたさんは、痛いなぁ。





本「おれが言ってるのって、理想論だね。なんにもしないよりおもしろくて、下手したら命削っても構わないって思えるような仕事」



本「二分の一の確立で成功するって考えると、気楽だよね」




個人的には、この柳下の言葉がヒットでした。

確かに理想論だけど、できればその理想により近い仕事を見つけたいのも、ある人々にとっては本音です。


自然体やね、この人。

人の見方って、どこに視点を置くかによって変わってくるから、一見変人でも、実は…、ってあると思います。

まぁ、なかには、実はも、変人という人もいるけど。ドクロ




そして、信ちゃん、いいひとやねぇ。お茶


いや、しかし、ここまでやるのはオカシイ。



入れ歯を作ることを勧めたり、自殺をほのめかす電話に職場を飛び出し探し回ったり。

自分の経歴の開示も、ちょっと引きます。


世の中がゆったり流れていた時代ならともかく、現代では、ちょっとやりすぎの感が否めません。


直属の上司:千堂から聞かされるリスク回避を前提に据えた相談員の心得三か条「確約するな。言質をとられるな。支援者の立場を踏み越えるな。」の三番目がまったくなってません。




ある意味、恐い。

と思ってたら、ラストにスゴイ展開叫びが待っていました。




それはともかく、そんな対応では、当然、相談件数、紹介件数は、他の人よりも低く、効率も悪い。

同じ時期に正職員として入った、樋口勇一郎とはまったく正反対。


メリットのみで動く樋口。

しかし、彼の言い分にも一理あります。





本「だれもが就職できる世の中なら、ハロワなんていらないでしょ。沢田君のやりがいは、他人の不幸の上になりたってるんだ」





コンスタントに成績を上げる同じく嘱託の先輩相談員:上条奈美。

尊敬するカリスマ相談員上司:千堂。



前半は、個性的な求職者たちのエピソードがメインで、信の成長ストーリーを、就活のハウツーっぽく仕上げた作品だと思って読んでいました。

ところが、中盤から、奈美のストーカー被害と、信との不倫恋が絡みだした時点で、私のテンションは一気にダウンダウン。




と思いきや、無事契約更新を迎え、前職場で同期だった岸川洋平の求職者としての登場に、おぉ、ハッピーエンドかい?の安易な私の読みが外れました。



一見、欠点の見当たらない岸川が思わぬラスト展開を引き起こしてくれます。

ラストは、どーなるんだろーと、気になって気になって、ホントに引き込まれました。



こんな爆弾爆弾が仕掛けられていたなんて、ちっとも気づかなかったので、もうびっくりでした。

奇しくも、柳下の理想論を地でいってしまいそうになる信。



現場だけではクリアできない問題が存在しているということ。



奈美のストーカー被害もだけど、ここで、樋口が霞ヶ関を目指すという目標に繋がるんだなと思いました。

そして、岸川を不採用にした一八六社の人事担当者は、伊達に人事担当やってないなと変なことに感心しました。




そして、千堂統括官の正体にも唖然。

リピーター3人組もだけど、人ってほんと判んないなぁ。



人って、強いようで弱い。


でも、弱くても強い。





同じテーマの最新記事

Amebaおすすめキーワード