ブルータワー (徳間文庫)/石田 衣良
¥823
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超高層マンション:新宿ホワイトタワーの最上階の一階下に、美人の妻:美紀とペットのアビシニアン:ココと暮らす瀬野周司は、脳腫瘍で余命宣告を受けていた。見舞いに来た部下:武井利奈から、美紀が、周司のかつての部下:荻原邦夫と不倫をしていると聞かされる。そして、利奈からの告白を受ける。利奈の帰った後、耐え難い痛みを覚え、周司の意識は、二百年後の未来へと飛んだ。そこは、二十二世紀の中ごろに起こった東西大戦で開発された生物兵器である死亡率八十八パーセントというインフルエンザウイルス:黄魔(こうま)が、猛威を振るう世界だった。人々は、高さ二キロメートルにも及ぶ塔:ブルータワーの中で暮らしており、タワー内の住居の階層が、そのまま社会的地位となっていた。そこで、周司は、第一層に住むセノ・シューと呼ばれる男として、やはり美人の妻:セノ・キミと暮らしていた。手首にはめた黒いブレスレットからは、猫の頭を持つライブラリアン:ココの三次元映像が現れた。




へぇー、こんなファンタジーも書くんだ。目
ちょっと意外でした。


未来設定だから、SFかと思いきや、「初夜権」なんて時代がかった代物が出てきて、???
中世ヨーロッパかいドクロと、思わず突っ込みました。
四層、五層の「奴隷」って……、時代は退歩してるのか。汗



腫瘍の痛みが、周司を未来へと運びます。


未来には、妻:キミやAI:ココを筆頭に、現代の世界と対応するような人物が配されています。

例えば、妻の不倫相手:荻原邦夫は、三十人委員会委員長:オギワラ・トウイチで、やっぱり妻:キミと不倫の仲だし、周司に好意を抱いている武井利奈は、第五層の貧しい少女:猛威離遺南(タケイリーナ)として、周司の前に現れます。

暴走族の当て字のような漢字で名前を付けるのは、下層階級の人々がインフルエンザに取っつかれないようにとの願いを込めた慣習だそうです。
うーん、そんな国、現代でも、どこかにあったよね。

だから、そんな心配をしなくてもよい富裕層は、カタカナ名前です。


富裕層は、安全な住居スペースと最先端のテクノロジーに囲まれて、贅沢に暮らしているけれど、下層階級では、生命の危険にさらされながら日々を送っています。
同じ時代に生まれながら、平均寿命が九十歳と四十代って。。。


しかし、塔の中にさえ入れない人々も存在し、「地の民解放同盟」と名乗る悪名高きテロリストキャンプや、「もぐらびと」と呼ばれる一切のテクノロジーを拒否し(アーミッシュみたいだね)、地下で暮らす「大地の家」の人々がおり、彼らに至っては、平均寿命三十代。

格差有りすぎ。叫び
そりゃあ、自爆テロも多発するわな。


その上、「青の塔」と「地の民解放同盟」が、お互いの核の保有をめぐり、疑心暗鬼を膨らませています。

そんな中、青の塔の三十人委員会は、自由塔(改革派)と個立塔(保守派)で対立し、キャスティングボードを握るのが、日和見主義のセノ・シュー。


でも、これって、よーく考えると、現代がデフォルメされてるだけなんですね。
人間って、どこまで行っても懲りないのか。。。ガックリ



支配階層にあたるブルータワーの第一層に住む三十人委員のひとりであるセノ・シューこと周司が、秘書:セキヤとボディガード:ソーク、そして、リーナと共に、未来を救うため奮戦するというお話です。

しかし、実際はというと、戦うというよりも逃げ回ってる感じ。汗
まぁ、しゃあないか。。。


そして、吟遊詩人により、「青の塔の嘘つき王子」がこの世界を救うという伝説が、謳い継がれているのですが、果たして周司が「嘘つき王子」なのか、そうなら、どうやって未来を救うのかというところが肝です。



世界観は面白いのですが、書割みたいに薄っぺらな人物描写に、イマイチ共鳴できませんでした。
特に、主人公である周司の上司のような上から目線が、なんかむかっ気に障ります。

ラストで、やっと自ら立ち上がったグーなと思ったら。。。



意識だけで未来へ移動する周司が、持っていけるものは、記憶のみ。
現代では、余命幾ばくも無い周司が、未来を救う「嘘つき王子」として選択した記憶法には、ドン引きドクロでした。

その記憶法、確かに聞いたことあるけど、全部覚えるには多すぎない?汗
いやぁ、無理でしょ、無・理。



そして、ラストのエピローグも、安易過ぎます。
えーっ、叫びありえへんわ。


ここにきて、残念度はマックスです。ダウン


ただ、人の意志だけが、肉体も時間も何ものをも超えうる力を持っていたってとこが、救いと言えば救いかなぁ。




本
「この塔の空気のなかにある怒りや憎しみがある日自然に集まって、これ以上はないくらい濃くなるとドカーン! 自然に爆発するんだよ。あれは爆薬になるほど煮詰められた下層の人間の心なんだ。人の心ほどよく燃えるものはない」