- MUSICMAN(通常盤)/桑田佳祐
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"MUSICMAN"
この言葉が最も似合う日本のミュージシャンが桑田佳祐であろう。照れ隠しなのだろうか、あまり自分が何たるかを具体的に言い表そうとしない桑田さんにしては「そのものズバリ」のタイトルで、それはそのままこの作品に対する強い自信の表れだと感じる。簡単に言えば、この作品は過去3枚のオリジナル・ソロアルバムの良いとこ取り。ソロ活動の集大成と言っていいアルバムだろう。サザンという足枷から解放されたことが良い方向に作用した結果だと思う。
M1. 現代人諸君!!(イマジン オール ザ ピープル)
タイトルから想像したのは、John Lennon = "Give Peace A Chance" のような曲調のシンプルなロック・ナンバーだったが、バリトン・サックスのリフが効いた割りとヘビーな1曲に仕上がっている。John Lennon で言えば『Sometime in New York City』に収録されている楽曲のイメージだ。「労働(ワーク)」と「労苦(ろうく)」などの韻の踏み方は相変わらず見事です。しかし、"Imagine all the people living for today" というフレーズを使うだけで、オノ・ヨーコの許可がいるとは・・・。
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M2. ベガ
「ベガ」と言って競走馬を思い出すのは私だけか(笑)。まあ桑田さんはそんなこと知らないだろうが・・・。なんか私にとっては不思議なAOR調の楽曲である。ヴォーカル・スタイルもちょっとアンニュイな雰囲気で悲恋を歌い上げている。
M3. いいひと ~Do you wanna be loved ?~
聴いていて a-ha の『Take On Me』あたりを思い出した。MTV黎明期の 80's Pops に現在の世相を反映させた歌詞を付けて桑田佳祐に歌わせるとこうなる、という・・・。桑田さんの世相批判は「付かず離れず」という絶妙な距離感をキープしている点が素晴らしい。批判というより「揶揄」とか「皮肉」と言った方がシックリくる。
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M4. SO WHAT ?
「だから、何?」とは、かなり見下した英語タイトルなのだが、ラテン・テイストのリズムとエロティックな歌詞とがあいまって、不思議な世界観を醸し出している。リズム隊ではバス・タムの入れ方が絶妙で、河村智康が叩くと、やはり Cream で Ginger Baker が叩いている姿をつい思い出してしまう。個人的な感想では、沖縄やベトナムではなく、ある意味ミスマッチかもしれないが、戦後日本の「赤線」とか、そんな情景を思い浮かべてしまった。桑田さんの頭と身体の中に染み付いている歌謡曲=ラテンという等式に、60年代後半のニュー・ロックを掛け合わせることが出来るミュージシャンなど、世界広しと言えども桑田佳祐以外にいないなと感心する佳作だと思う。
M5. 古の風吹く杜
桑田佳祐に「鎌倉」を歌わせると何故か『夕陽に別れを告げて』のような曲調になるなぁ。何となく『I AM YOUR SINGER』にも似てる。リスニングパーティーのアンケートで、この曲の人気が意外と高かったことに安堵したとラジオで桑田さんが言っていたが、多くのファンがこういう楽曲にこそ安心感を覚えるのは当然だと思う。私自身は「安直な帰結」すぎて曲自体は余り好きになれないのだが、アルバム全体の流れとしては、「ちょっとした休息」としての効果があると感じた。そして「跋扈する」なんて言葉をポップスの歌詞に乗せられるミュージシャンもまた、桑田佳祐以外に有り得ないだろう。
M6. 恋の大泥棒
そうか、The Walker Brothers か。タイトルも西部劇映画のようだし、色んな楽器を重ねてかなりゴージャスなサウンドになってる。そしてたぶんこの1曲には相当金がかかってる(笑)。そこに『舟唄』の「ダンチョね」。これもまた、"ザッツ・桑田佳祐"。
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M7. 銀河の星屑
ドラマ『CONTROL』の主題歌。ドラマも面白いが、この曲もちょっとユニーク。金原千恵子によるヴァイオリンのリフが素晴らしいアクセントになっている。死を暗示する歌詞は病気が発覚する前に作られているというから、桑田さんには予知能力が備わったのかと。大サビを最後に持ってくる構成とリタルダントによる終結は、この曲の摩訶不思議なイメージを一層盛り上げている。秀逸の一言。
M8.グッバイ・ワルツ
こちらは病気発覚後に作詞された曲。聴いていて『黒の舟歌』をカバーした時のことを思い出した。曲調は違うが『悲しみはメリーゴーランド』も。低音部分のヴォーカルは、Tom Waits を意識しているのか。演奏の重厚感とよくマッチしている。
M9.君にサヨナラを
2009年発売のシングル。アルバム収録にあたって、音のバランスを変えている。
http://ameblo.jp/aoken/entry-10408121567.html
M10.OSAKA LADY BLUES ~大阪レディ・ブルース~
そういえば『音楽寅さん』のロケで大阪行ってたっけ。タイトルから憂歌団みたいなブルースを想像したが、サザン・ロックにかなり忠実な感じになってる。歌詞は大阪の上辺だけのイメージで作られており、「これ大阪の人が聴いて怒らないかな?」と思ったけど、いいのだ。"ただの歌詞じゃねえか、こんなもん!" というノリがこの曲には合っている。
M11. EARLY IN THE MORNING ~旅立ちの朝~
サブタイトルが付きましたな。いっそ「朝勃ちの旅」の方が良かったのでは(笑)。『めざましテレビ』のテーマソングになっているので説明は不要かと。軽部アナは「革命的」と表現していたが、私に言わせれば「挑戦的」「挑発的」である。フジテレビは懐が深いねぇ~。「ズームイン」が終わるわけだ(笑)。しかしこの曲が、Madonna のライブに影響を受けているとは意外です。基本的に表(『本当は怖い愛とロマンス』)よりこっちの方が好き。
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M12. 傷だらけの天使
といえば、ショーケン。70年代のヒット・ドラマのタイトルを冠したこの作品のサウンドもまた、70年代のソウル・ミュージック。夕方ごろの港町で遠くの方に聴こえるサックスの音。夜が明ければまた明日が来るだろう・・・「どうにかなるさ」。人によって違いはあれ、そんな日常の繰り返しを飽きることなく続けて皆生きている。私の勝手な想像で、この曲の主人公の男はベージュのトレンチ・コートを着ている(笑)。
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M13. 本当は怖い愛とロマンス
よくこの曲を The Beatles で説明する文章を見るのだが、ピアノのイントロが『Lady Madonna』を意識したもので、リフや全体のノリは『Ob-La-Di, Ob-La-Da』。後期のビートルズというか、Paul McCartney の臭いを感じた。こちらは音のバランス調整だけでなく、"She's gone"の部分にファルセットのコーラスが足されている。
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M14. それ行けベイビー!!
紅白で披露された時、『本当は怖い愛とロマンス』『EARLY IN THE MORNING』と併せて考えると「とてつもないアルバムが発売されるかもしれない」という良い予感がした。エレキ・ギターの弾き語りは、フォーク・ギターをエレキに持ち替えた Bob Dylan のイメージだったが、コーラスで意識したのは Neil Young でしたか。最初に歌入れされた曲であり、「命をありがとネ」が病気発覚前の作詞というのもビックリ。
M15. 狂った女
M16. 悲しみよこんにちは
実は『狂った女』と曲間0秒でつながっている『悲しみよこんにちは』がセットで、本作における私にとってのベスト・トラック。だからここがこのアルバムのハイライトである、と断言したい。
『狂った女』は明らかに Led Zeppelin を意識して作ったのだろう。斎藤誠はこの手のリフを作らせると「ありそうでない」上手いフレーズを持って来るなぁ。これまた Madonna のことを歌っているようで、桑田さんのセルフライナーノーツによれば、「Mad」+「onna」=「狂った女」ということらしい。付け焼き刃的録音と桑田さんが言っているが、このラフさがかえって心地好い。
どっかからか入手したサンプリング音源を挟み、『悲しみよこんにちは』に続くわけだが、この曲の当初のアレンジは「Band In A Box」を使って作られたと聞き、「あ、俺も持ってる!」といたく感激した。結果的にアレンジは全然違うものになったらしいが、このソフトはアレンジのインスピレーションを得るには非常に便利なソフトでオススメ。一番アレンジに苦労した曲だそうだが、そのわりには作り込み過ぎずシンプルでありながら気の利いたものになっている。サポート・ミュージシャンたちの技量には敬服する。
M17. 月光の聖者達(ミスター・ムーンライト)
ディレイがかかったピアノのイントロが印象的な三井住友フィナンシャルグループのCMソング。歌入れは退院後。「ミスター・ムーンライト」「ビルの屋上の舞台(ステージ)」などの歌詞があり、The Beatles へのリスペクトと今は亡きお姉さんとの思い出を重ね合わせて「諸行無常」を表したかったのだろう。「巨大(おおき)な陽」とは勿論ビートルズのことを指しているわけだが、Roof Top Session を知らない若い世代のリスナーにもこの情感が伝わるのは、ビートルズがそうであるように、桑田佳祐の音楽もまた世代を超えて語り継がれるだけの物を持っていることの雄弁なる証しに他ならない。
2/26放送の「やさしい夜遊び」誕生日スペシャルで、このアルバムを曲順通り全曲かけたが、それには意味があると思った。このアルバムは曲の並び順ですら作品の一部として完璧に配置されていると感じていたからだ。1曲目からラストまで、アルバム全体のその起伏すら本作品の醍醐味となっている。逆に言えばどの曲をスキップして聴いても、このアルバムの良さを理解出来ていないことになる。「日本語」のタイトルに「カタカナ」のルビがふられている楽曲で始まり、最後にまた同様のタイトルが付いた楽曲で終わる。このことだけを考えても、この曲順は完璧な「パッケージ」なのだ。アルバム作品として提供する以上、個別に楽曲がダウンロードで入手できるこの時代には、こういったこだわりは大事であり、これを意識出来る桑田佳祐は間違いなく "MUSICMAN of Musicmen"である。