弁護士探し3

テーマ:
約束の日
私は車で2時間かけて
隣市の司法書士会の
会長の事務所に向かった。

いい弁護士さんを紹介してくれる
知人など私にはいない。
弁護士探しは
この先生に賭けるしか私には道はない。

うまくいくだろうか・・・
気ばかりが焦って私は車を飛ばした。

事務所に着くと
出迎えてくださった会長さんは
思っていたよりずいぶんお若く
そして気さくな感じの方であった。

「お電話致しました浅見礼子と申します。
宜しくお願い致します・・」
私は深々と頭を下げた。

「遠いところ大変でしたね。
よく来てくださいました。
まずはお話しをお聞かせくださいね。」
会長さんの優しい顔になんだかほっとした私は
今までのいきさつを全部お話しした。

「ずいぶんとひどい目に合いましたね・・・
さぞおつらかったとお察しします。
それにお子さんたちのことも心配ですよね。
弁護士の先生は私に任せてください。」

そう仰ると分厚い弁護士名簿を
本棚から取り出すと改めて
私の真向かいに座った。

話しをよく聞いてくれる先生であること。
出身地がうちの市ではない先生であること。
うちの市に赴任されたことが無い先生であること。
不倫、離婚問題を得意とされている先生であること。
等々

会長さんは
弁護士選びに当たっての条件を
いろいろと考慮してくださった。

頭をかきながら
何度も何度も名簿をめくり直して
一時間も経つ頃
「やはり、氷室先生が一番適任でしょう。」
会長さんはそう結論を出してくださった。

「この先生はお話しをじっくり聞いてくださるし
非常にやり手の先生ですから。
なにより女性の強い味方です。」
と一人の弁護士さんを推薦してくださった。

私より少し年上で
ご結婚もされており
お子さんも2人いる女性の弁護士さんだった。

「はい。それではその先生にお願いします。」
私がそう返答すると。

「電話してみるからちょっと待ってね。」
会長さんはそう言うと早速受話器を持った。

「・・・あ、氷室先生ご無沙汰致しております。
実はうちの大事なお客様なんですが
是非とも氷室先生にお願いしたいと思いまして。
今うちの事務所にいらしているんですが・・・。」

「浅見さん、今から氷室弁護士の所に
行けますか?車で10分くらいのところですが。」
と会長。

「はい。もちろんです。お伺い致します。」
私はすかさずそう返答した。

「氷室先生、
今からそちらに伺うとのことでしたので
くれぐれもどうか宜しくお願い致します。」
会長さんはそう言うと直立不動で
電話の向こうの先生に
深々とその頭を下げてくれた。
初対面の私のために。

「浅見さん、それでは場所をお教えするので
このまま先生の所に行ってください。
先生、お待ちしていると言うことでしたので。」

もう時間は夕方6時を回っていた。
まさか今日中に弁護士にまで会えるとは。

「会長さん、なにからなにまで本当に
お世話になりましてありがとうございました。
ご恩は忘れません。」

私は心からのお礼を言うと
支払いをしようと財布をバックから出した。

会長さんの事務所のホームページには
相談料一時間一万円と書いてあったのだ。

そんな私を見た会長さんは優しい顔で言った。
「浅見さん・・あなたはこれからの戦いで
たくさんお金が必要になると思う。
だからうちの分は他で使ってください。」

「・・・え?よろしいんですか?」
相談時間はゆうに2時間を超えていた。

「大丈夫です!負けないで頑張ってください。」
そう言って司法書士会の会長さんは
私を見送ってくれた。

なんて優しくて
誠実で思いやりのある人・・・・
こんな人もいるんだ・・・・
世の中こんないい人もいるんだった・・・
私は忘れていた大事なものを
思い出させてもらった気がして泣いた。

そして暗い街中を
私は氷室弁護士事務所に向かって
初めての道を車を走らせた。


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